できる側近は野獣対策も抜かりない-2
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正直に言って、ローレンスはこのふたりの令嬢が苦手だった。どちらも気位が高く、気の強いところが母親である王妃にそっくりなのだ。
しかも最近は、舞踏会があるたびに両名が王子の両脇に立ちはだかり、周囲にガンを飛ばして何者も近づけないようにしている。タカビー公爵令嬢が王子の右側を、エラッソー侯爵令嬢が左側をがっちりディフェンスするという、恐怖の布陣が定着しているのだ。
「しかし、有力貴族の顔もたてませんと」
「ダメだ!またいつもと同じパターンになっちゃうだろ!」
舞踏会ではいつも、最初にタカビー公爵令嬢とダンスをさせられ、次にバトンタッチするようにエラッソー侯爵令嬢とダンスさせられる。ダンスが終わればそのままエラッソー侯爵令嬢に連行され、タカビー公爵令嬢との両脇ホールド体制になるのだ。
「ダンスを一回だけ踊っていただければ、あとは私がおふたりを抑えますので」
「いや、無理に決まってる!」
それができるなら普段から苦労はしないのだ。
「殿下、ご安心ください。対策はすでに立てております」
ディランがいつものようにメガネをくいっとあげると、その奥のブラウンの瞳がキラーンと輝いた。
「何?本当か?」
「はい。ゲストとして、ヨレットルヤナイカイ・チャロローン・ビロペヌンヌン・ウンピロン殿下をお呼びしています」
「う、うん?」
ローレンスは首をかしげる。ヨレットルヤナイカイ・チャロローン・ビロペヌンヌン・ウンピロンは、友好国であるウンピロン王国の第一王子で、現在はこのスットコランド王国に遊学中である。名前が長いのはウンピロン王家の伝統で、親しくなっても愛称などで略して呼ぶのは不敬とされていた。
「ヨレットルヤナイカイ・チャロローン・ビロペヌンヌン・ウンピロン殿下は容姿端麗でお人柄もよく、来年成人を迎えられれば、正式に王太子となられるでしょう」
「だろうな」
まだ15歳と若いが、彼が非常に整った顔立ちをしていることや、聡明で誠実な人柄であることはローレンスも知っていた。まったく非の打ち所のない人物と言える。難癖をつけようとしても、名前がやたらと長いことくらいしか思い浮かばないのだ。
「タカビー公爵令嬢とエラッソー侯爵令嬢もお気に召すと思いませんか?」
「お、おい!まさか、殿下にあのふたりの相手を押しつけるのか?」
「押しつけるなんてとんでもない」
ディランは不敵な笑いを浮かべた。
「王族が身につけるべき社交スキルを学ぶ場として、気のつよ・・・いえ、上昇志向の強い高貴な令嬢のお相手を経験していただくのです」
「う、うむ、未来の王太子として経験しておくべきかもしれないな」
ローレンスは気まずそうに視線を逸らす。我が身可愛さに同意してしまった彼の脳裏には、2頭の野獣にロックオンされる、いたいけな仔猫の姿が浮かんでいた。
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