わたひがぎょひゃになるひゃ!-3
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
それからは大急ぎでことが進められた。
シンデレラが支度をしているあいだ、バーサはセバスとサイズの合う御者の服を探す。バーサは小柄なので心配だったが、なんとか着られそうなものが見つかった。しかし、試着してみるとズボンの丈が少し長くて、歩くと裾が地面をこすりそうだ。
「ちょっと裾が余っていますね」
「だけど裾上げする時間はないよね」
本当は裾上げしてもらったほうが良さそうだが、今のケイトにはそんな暇はない。自身の裁縫の腕が壊滅的なことは身をもって知っていたので、バーサは裾を折ってごまかすことにする。最後に帽子を深くかぶると、長い前髪が隠れてそれなりに御者らしく見えるようになった。
まあ、ちょっとの間だし、大丈夫でしょ。
支度がととのったバーサは、ベティを抱えてセバスに向き直った。王都の道はだいたい知っているが、念のため王宮までの道を確認しておきたいと思ったのだ。だがセバスは、何か苦いものでも食べたような顔をしている。
「バーサお嬢さま、あの、そのう・・・お人形も連れて行くのでしょうか?」
「え?もちろんよ」
バーサは腕のなかの相棒をギュッと抱きしめる。ただでさえ怖いのに、ベティまで置いていくなんて無理無理の無理でしかない。
「さ、さようでございますか」
古い人形を抱えている御者など、見つかったら不審者あつかいされそうである。しかし緊張に強張るバーサの顔を見たセバスは、あきらめて王都の地図を取り出した。王宮に着くころには日も暮れているし、きっとよく見えないだろうと楽観的に考えることにして。
「この大通りを北に進んだ先に、王宮の入り口があります」
「うんうん」とうなずきながら、バーサは真剣な目で地図を追った。そこはバーサも何度か通ったことのある通りだったので、道に迷う心配はなさそうだ。そうこうしているうちにシンデレラの支度ができたようなので、ふたりはシンデレラの部屋に向う。
「わあ、きれい!」
部屋に入ったバーサは、シンデレラの姿に思わず感嘆の声をあげた。
ゆるく巻いて結い上げた金髪はいつにも増して輝き、薄くほどこされた化粧はシンデレラの初々しい美しさを引き出している。花飾りをつけたドレスは、華奢な体格のシンデレラに女性らしい華やかさを添えていた。足元は、キラキラとかがやくガラスの靴。シンデレラの小さな足に、それはぴったりとフィットしていた。
「本当に聖女さまみたい!」
美しく上品な姿は、神々しくさえ見えた。バーサがぼ~っと見とれていると、背後からグスンという音が聞こえる。振り返れば、セバスが目頭を押さえてうつむいている。
「男爵さまと奥さまがお元気であられたら・・・」
シンデレラの実の両親のことを言っているのだろう。両親が生きていれば、美しく成長した娘を見てさぞかし喜んだろうとバーサも思う。いや、両親が健在ならもっと豪華に着飾っていただろうし、継母に困らされることもなかったはずだ。そう思うと、バーサの胸は痛んだ。
「あなた、今はそんな感傷に浸っている場合じゃありませんよ」
ケイトが再び夫を叱咤するが、その声は水っぽい涙声だ。きっと彼女も同じ気持ちでいるのだろう。
「では、お嬢さま方、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
セバスとケイトに見送られ、馬車はシンデレラを乗せて走り出した。
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