謎の商人?あらわる-3
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
「だからシンデレラさま、今こそ私にご恩返しさせてください!どうかこのドレスをお召しになって、王宮の舞踏会に必ずやお出かけを!!」
そして馬から降ろした箱をグイグイとシンデレラに押し付ける。
「え?ドレス?舞踏会??」
いきなりのことに戸惑うシンデレラに、小声で「分かっております!分かっておりますとも!」と囁きながら、男は無理やりにドレスの箱を押しつけてくる。なんだか気持ちが悪いし、意味が分からない。しかしその勢いに負け、シンデレラは思わず箱を受け取ってしまった。
「必ず、必ずおいでくださいね!舞踏会は次の満月の晩です。王宮で素晴らしい出会いが待っていますよ!」
男はノソノソと馬にまたがり、最後にそう念を押すと、ぼてぼてと走り去った。シンデレラはドレスの箱を抱え、あんぐりと口を開けたままそれを見送った。
なにこれ・・・どういうこと?
シンデレラは困惑していたが、無理やり押しつけられたとはいえ捨ててしまうわけにもいかず、しかたなく屋敷に持ち帰ることにした。部屋でケイトとともに箱を開けてみると、そこには品の良い紫のドレスとそれに合わせた靴、青い宝石のついた豪華なネックレスが入っていた。
「まあ、いったいどなたでしょう?」
シンデレラとケイトは顔を見合わせる。
その後、父親と付き合いのあった若い商人についてセバスに聞いてみたが、心当たりが見つからない。身元が分かったら返そうと衣裳部屋に保管していたら、ぼろきれにされてしまったのである。衣装室の隅に置いていた靴と、執務室の金庫に入れていたネックレスが無事だったのは幸いと言えるだろうか。
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「ふぅ~、これでひと安心だ」
森を駆け抜けてきたディランは、馬をぽてんぽてんと歩かせながらつぶやいた。本当はもう少し颯爽と乗りこなしたいのだが、ローレンス王子のようにはいかない。貴族として乗馬のたしなみはあるとはいえ、頭脳派であるディランの運動神経は、可愛がってくれた乳母の甘々な目で見ても「そこそこ」なのだ。
「フフフ、私の演技力もなかなかではないか」
乗馬の腕前はともかく、ディランは今、非常に満足している。先ほどのことを思い出すと、自然に笑みがこぼれた。
シンデレラ嬢はすっかり自分の話を信じたようだし、王子が見立てたドレスやアクセサリーも喜んで受け取ってくれた。これで彼女は舞踏会に参加できるだろう。
着飾った彼女は、きっと本物の聖女のように美しいに違いない。
守ってあげたくなるような華奢な体つきに、輝く金髪とすみれ色の瞳。あの美しさなら、殿下の隣に並んでも引けをとらない。美男美女のカップルとして、国民の人気も得られるだろう。聞いていたような奇行も見受けられなかったし、申し分のない令嬢ではないか。
「しかし、あのような令嬢が継母や義姉に虐げられているなんて、腹立たしいことだ」
ディランは顔をしかめる。自分が「お困りでは?」と訊いたとき、彼女はうつむいて悲しそうに微笑んだ。否定をしなかったし、継母である現男爵にひどい扱いを受けていることは間違いないだろう。
こちらも早く帰って対処せねば!
彼は馬の腹をかかとで蹴る。馬はドタドタと速度を速め、ディランを乗せて王宮へ走っていった。
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