謎の商人?あらわる-2
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それは舞踏会の一週間ほど前のことだ。いつものように森へ気分転換に出かけたシンデレラは、ひとりの男性に声をかけられる。
「ご令嬢!もしやあなたは、アスター男爵家のシンデレラさまではないでしょうか?」
シンデレラは驚いて立ち止まった。この森で人に会うことなどめったにないからだ。ついこの間も道に迷ったという騎士さまたちに会ったし、この頃はこんなことが多くて何だかおかしい。
このあいだの騎士さまは良い方だったけど・・・。
彼女は先日の騎士の姿を思い浮かべる。優しく声をかけてくれたあの青年は、物語の王子さまのように凛々しくて素敵だった。つい気を許して話してしまったが、やはり知らない人とむやみに話すのは危険だろう。
シンデレラは警戒心を強めて男を観察した。年齢は先日の騎士たちと同じくらい。連れている馬の背には荷物が乗せられているし、やや小柄な体格と服装から見て、裕福な商人の息子といったところか。メガネをかけたその顔は真面目そうな印象だ。
「いえ、あの、怪しいものではありません。実は私は、先代のアスター男爵さまに大変お世話になったのです」
シンデレラがいつまでも黙っていたので、男は怪しまれていると思ったらしく、あわててそんなことを言った。
「まあ、お父さまのお知り合いですの?」
それにしては若すぎるなと思いつつ、シンデレラは答える。男によると、彼は駆け出しの商人だったころ、前男爵に資金面でいろいろ世話になったというのだ。今ではその商売も軌道に乗り、若いのに商人として成功しているらしい。そう言われて見れば、男にはなんとなく苦労していそうな、少しくたびれた雰囲気が漂っていた。
「いつかご恩返しをと思っていたのですが、あんなに早く亡くなられてしまい残念です」
謎の男は泣くのを堪えるように口に手をあててうつむき、いかにも無念そうにそう言った。なんだか芝居がかっていて胡散臭いが、父の死を悼んでくれているらしいので、シンデレラはいちおう礼を言う。
「父を悼んでくださって、ありがとうございます」
頭を下げるシンデレラに、男は顔をあげて向き直った。そして背筋を伸ばし、ズレてもいないメガネをくいっ!っと直す仕草をする。
「しかし、最近商売仲間から、シンデレラお嬢さまがいろいろとお困りだという話を聞きまして」
「あら、お恥ずかしいですわ・・・」
毎日のやり繰りに頭を悩ませているシンデレラは、うつむいて苦笑いを浮かべた。
どうやら値切り過ぎて、商人のあいだでウワサになっているらしい。今だって、サンドラが舞踏会用に高価なドレスを新調してしまったので、この後の支払いをどうしたらいいのか悩んでいるのだ。男はそんなシンデレラに気の毒そうな目を向けると、馬の背から大きな箱を降ろしてこんなことを言い出す。
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