謎の商人?あらわる-1
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
時間を少しさかのぼった、舞踏会当日の朝のこと。
いつも通り早朝に起きだしたシンデレラは、メイドのお仕着せに着替えようと衣裳部屋のドアを開けた。今夜は舞踏会に出かけるとは言え、シンデレラに遊んでいる暇はない。どのみちサンドラが出かけなければ支度もできないし、それまではいつも通りの仕事をするつもりでいた。
「今日も忙しいわね」
今日の予定を頭に浮かべながら、シンデレラは衣裳部屋に足を踏み入れた。そしてそこに、昨夜まではドレスであったはずの、ズタズタのぼろきれを見つけて驚愕する。
「ええっ!これはいったい!?!?」
しばし呆然としたあと、これはサンドラの仕業だろうなと思いつく。家族には、ほかにこんなことをする人間はいない。外部からの侵入者であるはずもない。
だけどなんで、こんなことをしたのかしら?
シンデレラは両頬に手をあてて考える。恐らく、夜中に忍び込んできたのだろうが、その意図が分からないのだ。持って行って売り払うならともかく、切り裂いてどうしようというのか。
「せっかく私のために用意してくださったのに、こんなことになって申し訳ないわ」
シンデレラは悲しい気持ちで腰を落とし、床にたくさん落ちている紫色の切れ端を拾い集めた。こうなってしまってはゴミでしかないが、ほうきで掃いて捨てる気にはなれなかったのだ。
「シンデレラお嬢さま、どうかなさいましたか?」
シンデレラが顔を見せないので、心配したケイトがようすを見に部屋に入ってきた。そしてドレスの残骸に目をとめ、驚いて立ち尽くす。顔がみるみる険しくなっていくところを見ると、彼女も誰が犯人かの察しがついたのだろう。
「なんて酷い!」
ケイトは怒りのこもった声でそう言うと、シンデレラの隣にしゃがみこんだ。そして、一緒に切れ端を拾い始める。
「これって、あの不審者にもらったドレスですよね?」
「そうだけど、お父さまの知り合いだって言ってたし、親切心で贈ってくださったのだから不審者だなんて言わないで」
ケイトは「すみません」と謝るが、それほど悪いとは思っていない。彼女からすれば、名乗りもせずに大切なお嬢さまに近づく者は、全員が不審者と言って差し支えないのだ。
「でも、男爵さまは、なんでこんなことしたのかしら?」
首をかしげるシンデレラに、ケイトが怒りをあらわにして答える。
「嫌がらせに決まってるじゃないですか!きっとお嬢さまがこれを着て舞踏会に行くと思ったんですよ」
なるほど、とシンデレラは手を打つ。義母は自分たちの企みに気づいていたのか。だからドレスをめちゃくちゃにすることで、それを阻止しようとしたのだろう。いつもながら的外れでご苦労様なことだが、これでまた機嫌が悪くなられても困る。
シンデレラはケイトと相談して今日は男爵の前に顔を出さないことにし、アデラとバーサにはこの件は黙っておくことにした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




