アデラ、手ごろなオジサマを見つける-3
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
あっ!あの人だわ!
思ったとおり、イイデンナ伯爵が中年の夫人の手をとってこちらへとやって来た。女性と別れると、近くにいた同年配の男性と酒を飲みながら談笑をはじめた。
アデラは話す伯爵に視線を送り続ける。先日見かけたときのように今夜の彼も着飾っていた。高級素材で仕立てた服を身につけていたし、指には男性にしては多すぎる数の指輪がはまっている。
ふと、視線に気づいたようにイイデンナ伯爵がこちらを向いた。アデラは待ってましたとばかりに、誘うような微笑みを送る。伯爵がアデラの元に近づいてきた。
「ご令嬢、お名前を伺ってもよろしいかな?」
「アスター男爵家のアデラと申します」
今夜のドレスは肩を多めに出した、事前にリサーチした彼の好みのデザインである。
「私と踊っていただけますか?」
「ええ、喜んで」
ふたりは中央に進み出て踊りだした。
彼の動きは洗練されていて、ダンスの途中でかわす会話も気が利いてそつがない。ただ残念なのは、装飾が過剰でキンキラキンというか、ちょっと成金っぽく見えてしまう点だろうか。だがアデラにとって一番大切なのは相手の財力なので、そこはむしろ喜ぶべきだと自分を納得させる。
「もう一曲踊りたいですわ!」
「もちろんですとも」
曲の途中で大きく回ったとき、伯爵の後方にどこかの令嬢と踊るアルバートの姿が見えた。何ごとか話しているようで、楽しそうに笑っている。アデラは表情をこわばらせた。
「私のような年寄りと踊って退屈ではないですか?」
表情の変化に気づいたのか、伯爵が話しかけてきた。アデラは急いで笑顔をつくる。
「私は同年代の若い方よりも、頼りがいのあるオトナの殿方が好きですの」
「それは嬉しい!私はあなたのような銀髪の美しい女性に目がありませんでな」
イイデンナ伯爵もまんざらでないようで、ダンスが終わるとアデラの手にキスを落とした。
「なにかお困りのことがあったら、いつでも相談に乗りますぞ」
「まあ、心強いですわ」
アデラは笑顔で応じた。今日のところは思惑通りに運んだと言えそうだが、心はなぜか晴れない。休憩スペースでワイングラスを手に伯爵と話していても、アデラはどこかうわの空だった。
このままイイデンナ伯爵の後妻にうまく納まったとして、男爵家を継ぐシンデレラの婿には誰がなるのだろう?アルバートなら人柄は良いし申し分ないと思う。バーサのことも、邪魔にしたりせずに面倒を見てくれるはずだ。
だけど、だけど・・・。
アデラはそっと胸に手をあてる。アルバートとシンデレラが仲良く並んだ姿を想像すると、なぜか胸が苦しくてならなかった。
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