アデラ、手ごろなオジサマを見つける-2
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エラッソー侯爵家の屋敷は壮大だった。単に広いだけでなく、調度品や室内装飾にも気品と歴史の重みが感じられる。
「さすが侯爵家だわ!たしかエラッソー侯爵令嬢は、王子殿下の妃候補と言われてるのよね?」
アデラは背の高いアルバートを見上げるようにしてたずねた。高位貴族の夜会ははじめてなので、いつもは落ち着いている彼女も気持ちが高ぶっているようだ。
「タカビー公爵令嬢と妃の座を争ってると言われてるな。でもローレンス殿下は決めかねていて、妃選びの舞踏会を開くってウワサで聞いたぜ」
「へぇー」
王宮のことにあまり興味がないアデラは、適当な返事を返す。
「他人事みたいな顔してるけど、国じゅうの年頃の貴族令嬢を招待するって話だから、君も対象になるんじゃないか?」
「ええ?王宮の舞踏会なんて、あまり興味ないんだけど・・・」
そんなものに行ったって、自分が選ばれるわけがないのは分かっている。でもお城から招待状なんか来たら、サンドラが大騒ぎしそうでちょっと憂鬱だ。
「殿下は君好みの『金持ちジジイ』じゃないからな」
アルバートがそんな軽口をたたく。アデラは軽く彼をにらむと、心配そうにあたりを見回した。
「だけど思ったよりも人が多いわね。あの人を見つけられるかしら」
彼に会えなければ、アルバートに頼み込んでここへ連れてきてもらった意味がない。彼女が探しているのは、先日王都のカフェで見かけた金持ちの貴族の男性だ。
友人とお茶を飲んでいたアデラは、近くの席にいかにも金持ちそうな初老の男性がいるのを見つける。
「ねえ、あのオジサマが誰か知ってる?」
「ああ、ハブリー・イイデンナ伯爵よ」
情報通の友人はすぐに答えてくれた。彼女は貴族相手に手広く商売をしている商人の娘で、貴族の懐事情にも詳しかったのだ。アデラは自分に最適な嫁入り先を探すために、彼女からいろいろな情報を聞き出そうとしていたところだったのである。
「あの方おいくつ?奥さまはいらっしゃるのかしら?」
「50代前半くらいじゃないかな?たしか奥さまは亡くなられて、今は独身のはず」
条件にぴったりだとアデラは目を輝かせる。その顔つきを見て察した友人が、こう教えてくれた。
「イイデンナ伯爵領には宝石が採れる鉱山があるから、財力はお墨付きよ」
決めたわ!!
早く嫁ぎ先を決めなければとあせっていたアデラは心のなかで叫ぶ。
そしてあらゆるツテを使ってイイデンナ伯爵の情報を集め、今夜の夜会に現れることを知ったのである。ほかに頼めそうな高位貴族はいなかったので、アデラはアルバートが友人で本当に良かったと思った。
「さあ、とりあえずここに座って、お目当ての男を探すといいよ。俺はエラッソー侯爵に挨拶してくる」
アデラを休憩スペースの椅子に座らせ、ウエイターから受け取ったワイングラスを持たせるとアルバートは背を向けて去ってしまう。なんだか今日は少し冷たい。
ダメダメ!今日は遊びに来たんじゃないんだから!
アデラは自分を叱りつけ、そっと周囲に気を配った。もしかしたら誰かと踊っている可能性もある。このあたりで待っていれば、休憩に来た伯爵に会えるかもしれない。ワインをちびちび飲みながら目を配っていると、お目当ての人の姿をやっとみつけた。
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