王子、運命の相手を見つけるー1
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広場の中心にある切り株に、ひとりの娘が腰かけて歌っている。その美しい歌声を祝福するように、日の光がスポットライトのように娘を照らし、黄金の髪が輝いていた。そして、周囲には森の動物たちが集まり、その歌声を静かに聞いているのだ。
「こんな森に娘がひとりでいるなんて怪しいぞ」
我に返った護衛騎士が、ひとり言のようにつぶやく。
しかし、目の前に広がる光景は平和そのものだ。服装を見るとどこかの家の使用人のようだが、娘は透き通るような白い肌と整った顔立ちをしていて、貴族の令嬢のようにも思えた。ちょっとした所作にも気品が感じられる。
この娘はいったい何者だ!?
影も含めた騎士たち全員が困惑していた。
そのとき、娘が歌いながら片手を空に向けて差し出した。するとその手の先にウグイスが一羽とまり、娘の歌に合わせてさえずりはじめる。
「やはり、今朝のウグイスは神の御使いだったのだな」
ローレンスが頬を染めてつぶやくのを聞いて、護衛一同の背筋に悪寒が走った。まさか運命の相手、真実の愛を見つけたとか言い出さないだろうな、と。
「殿下、このような場所にいる怪しい娘とかかわってはなりません!」
偽名で呼ぶのも忘れた騎士が慌てて止めようとするが、ローレンスの目はただ一心に娘を見つめている。その青い瞳は、うっとりと熱で潤んでいた。「ヤバイ、これはヤバイぞ」と全員が思ったそのとき、ふいに娘の歌声がやむ。
「ほーほけっぴきょ!?」
一緒に歌うように鳴いていたウグイスが、妙な鳴き声をたてた。
見れば、娘は手の先にとまったウグイスを捕まえて、手のなかにしっかり握りこんでいた。突然のできごとに、当のウグイスも、周囲を囲む動物たちも、皆が驚いて固まっているようだ。シンと静まりかえる森のなかで、娘はただ手のなかの鳥をジーッと凝視していた。
「なんだ?あのウグイス、ケガでもしているのか?」
ならば助けてやらねば。止める騎士たちを振り払って、ローレンスは娘に近づいていく。木陰から突然現れた騎士に、集まっていた動物たちがいっせいに逃げ出した。
「ご令嬢、そのウグイスがどうかしたのか?」
ローレンスは爽やかな笑顔をつくって娘に話しかけた。振り向いた娘の瞳は、この国では珍しいスミレ色だ。こうして間近で見ると、非の打ちどころのない美貌であることが分かる。娘は突然現れた騎士たちに驚いたようだが、3人とも悪人ではないと見て取ったらしい。
「いえ、そうじゃなくて、あの・・・」
娘はウグイスを握りしめたまま、なぜか言いにくそうにモジモジしている。
「困っているなら力になるから、言ってごらん」
王子は腰をかがめて娘の目線に近づき、優しく語りかける。その言葉に勇気づけられたのか、娘は思い切ったようにこう言った。
「あの、騎士さま・・・ウグイスって食べられるんでしょうか?」
「「「へ??」」」
予想外の返答に、全員が間の抜けた声をあげた。
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