おまえは屋根裏部屋行きよ!-1
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
男爵家の当主が使うはずの執務室で、シンデレラはセバスとケイト相手にアデラの持ち込んだものを売る相談をしている。すると、廊下でサンドラが騒いでいる声が聞こえてきた。
「シンデレラ!シンデレラはどこにいるの!?」
3人は顔を青くし、ドレスやアクセサリーを急いで執務室の奥の書庫へと隠す。そもそも一度に全部は売れないので、いったんここに隠しておくことにしたのだ。サンドラは執務室にはめったに来ないので、ここが一番安全だろうと皆で決めた矢先のことである。
「はあ~、あの方にはドレスや宝石の臭いをかぎつける力でもあるのかしら?」
あまりのタイミングの良さに、ケイトがため息交じりでつぶやく。
「これ、失礼なことを言うんじゃない」
真面目なセバスはそんな妻をたしなめると、目でシンデレラに伺いをたてた。
「そうね、お話があるなら居間でお聞きしましょう」
大丈夫だとは思うが、念のためサンドラは執務室に入れたくない。しかし、セバスが一礼して出ていこうとするところに、サンドラが乱入してきた。
「まあ、ここにいたのね」
押しとどめようとするセバスを押し退け、シンデレラに上機嫌な顔を向ける。その笑顔に、きっと何か企んでいるのに違いないと感じて、ケイトとセバスの顔がこわばった。
「男爵さま、ごきげんよう。ちょうど仕事が終わったところですので、私にご用がおありなら居間で承りますわ」
とにかくサンドラをこの部屋から出したかったので、シンデレラはいつもの落ち着いた調子でサンドラに話しかけた。
「ふん、仕事ねぇ。こんなところに3人で集まって、またドレスを売る算段でもしていたのかしら?」
その言葉に、シンデレラたちは一瞬ぎくりとする。まさか気づかれたのか。だがアデラやバーサが母親に話すはずがないし、まさか本当に臭いを嗅ぎつけてきたはずもないだろう・・・たぶん。
その間をどうとらえたのか、サンドラは扇を口元に当て、「おーっほっほっほ!」と高笑いをはじめた。
「あ~ら、ごめんなさい。おまえはもう、一枚のドレスすら持っていないんだったわね。どおりで今日もみすぼらしい姿だとおもったわ!」
そう言って愉快そうにシンデレラを見やる。シンデレラは今日も簡素なワンピース姿で、「みすぼらしい」と言われるほど酷い服装ではないのだが。
どうやら自分をからかいたかっただけのようだと分かって、シンデレラはホッとする。自分をバカにすることで継母の機嫌が良くなるなら、そのほうが家のなかが平穏でありがたいくらいだ。
「でね、ひとつ良いことを考えついたから、おまえに教えてやろうと思って」
サンドラに「良いこと」と言われて、誰もが不吉な思いしか抱かなかったが、これでも一応は当主であるので無視するわけにもいかない。
「かしこまりました。では居間で座ってお話ししま・・・」
「必要なくってよ!」
警戒しながら答えるシンデレラを遮って、サンドラが叫ぶ。そして扇をシンデレラの鼻先にビシッとつきつけ、こう言い放った。
「今ここで、当主としておまえに命じるわ。明日からは小間使いとして働きなさい!」
「え?あの・・・」
シンデレラが困惑して口ごもる。その様子を見て、サンドラは溜飲が下がる思いだった。
ふふん、打ちひしがれて言葉も出ないのね!
ようやくこの娘の泣きっ面が見れる。サンドラはますます上機嫌になった。かたわらの侍女頭が生意気にもこちらをにらんでいるが、まったく気にならない。
「掃除、洗濯、台所の雑用なんかをおまえがやれば、小間使いを減らせるじゃない。人件費が安く済むから、おまえの好きな節約になるわよ」
「あの、男爵さま・・・」
「なによ、おまえが節約、節約ってうるさいから、私なりに考えてやったのよ。良い考えでしょ?」
サンドラはニヤニヤ笑いながら腕を組んだ。小鼻がヒクヒクとふくらんでいる。シンデレラはそんなサンドラを上目遣いで見ていたが、やがて申し訳なさそうに答えた。
「いえ、あの、小間使いと言いますか、住む込みの使用人はもう、ほぼ全員解雇していまして」
「そう、だから小間使いは解雇・・・えっ!?全員?どーゆーこと!?!?」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




