男爵家は私のものー2
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3人の娘たちが家のため、家族のためを思って行動していた同じころ。アスター男爵家の当主たるサンドラは、カウチに寝そべってぼんやりとしていた。「どうやったらあの小娘に泣きべそをかかせられるか」を考えていたのである。
シンデレラときたら、目の前で嫌味を言ってもぜんぜん応えないようだし、ドレスやアクセサリーにも執着がなさそうだ。この家で唯一の生粋の貴族なのに、言動がまったく貴族令嬢っぽくない。貴族とは着飾って遊んで暮らすものだと思っているサンドラには、この継子がさっぱり理解できない。
もともと彼女はシンデレラにはあまり興味がなく、可愛いとも憎たらしいとも思っていなかった。それが、シンデレラひとりに家屋敷が残されたと知ったとき、憎悪へと変わる。努力して手に入れた貴族の優雅な生活。その象徴ともいえる家屋敷が、自分をスルーして小娘ひとりの手に握られてしまったのだ。貴族であることに執着するサンドラにとって、受け入れがたい現実だった。
どうしていつも、私の思い通りにならないの?
若いとき、父親は「貴族と結婚したい」と願った自分を無視して、勝手に平民の商人との結婚を決めてしまった。サンドラは散々抵抗したけれど、普段は甘い父親がこのときばかりは譲らなかったのである。父親はなによりサンドラの幸せを願っており、裕福で堅実な商人に嫁がせたかったのだ。実際、身分違いの結婚をするよりその方が幸せになれたはずだ。
しかし、貴族にあこがれて贅沢をやめられない彼女が、堅実な夫とうまくいくはずがない。この結婚生活は始めから終わりまでケンカの絶えないものとなった。
「この程度の贅沢が何よ!私は貴族に嫁ぎたかったのに!!」
浪費癖を夫に責められれば、サンドラは必ずと言っていいほどこの言葉を返した。十数年にわたるこの結婚で夫婦は2人の娘をもうけたが、最後は夫からの申し出で離婚となる。妻の散財とケンカの絶えない生活に、彼はとうとう根をあげたのだ。
「ふん、どうせ女でもできたんでしょ」
悪態をつきはしたものの、サンドラはさっさと離婚に同意して、娘たちをつれて実家に帰った。このときはまだ30代だったので、今ならまだ貴族との再婚のチャンスがあると考えたのだ。実家に居候しながら、彼女はあらゆるツテを使って婚活に励んだ。彼女の望みはたったひとつ、「貴族になること」。そうすればすべてがうまくいくと信じていた。
そしてとうとう、アスター男爵と再婚することに成功したのだ。貴族の地位と財力。男爵はサンドラが求めるものをすべて持っていたので、先妻が残した娘がいることは少しも気にならなかった。実子だろうと継子だろうと、子供の世話などは使用人に任せておけばいいのだ。
「これで私も貴族よ!!」
サンドラは天に向かって快哉を叫んだ。そして貴族であるべき自分を否定した元夫や両親とは、もう一生かかわらないと心に決めたのである。
そうよ、あんなに頑張ったんだから、今さらあんな小娘に好きにさせるわけにはいかないのよ。
サンドラは長椅子から起き上がってドレスのシワをなおした。
この男爵家は、私のもののはずだもの。アデラは男爵家の正式な養女だから、長女であるアデラが男爵家を継いでも良いはずだ。まずは、自分の言うことを聞く、扱いやすい男を婿に引き入れて男爵位を継がせよう。その婿と組んで、この男爵家を奪う・・・いや、取り返すのだ。
そうね、あの娘は使用人として家に置いてやるわよ。いらない使用人を解雇して代わりに働かせれば、給料が浮くじゃない。
自分はなんて頭が良いのだろうと思い、サンドラはニヤリと笑った。アデラの婿探しにはまだ時間が必要だが、シンデレラを使用人に落とすのは今すぐにできる。
この家の主人は誰なのか、小娘に思い知らせてやるわ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




