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男爵家は私のものー1

毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。

「さあ!これを差し上げるから、着るなり売るなり煮込むなり、好きにするといいわ!」


アデラは男爵家の執務室にドレスとアクセサリーを持ち込み、勢いよくそう言った。デスクで帳簿を広げていたシンデレラが目を丸くする。


「ドレスを煮込んでどうするんですの?」


「うっ、それは言葉の綾よ。不用品だから、あなたの好きなようにしなさいって言ってるの!」


アデラは腰に手をあてて胸を張る。本当はもっと優しく接したいのだが、シンデレラを前にすると大いに照れてしまい、なぜか高飛車な振る舞いをしてしまうアデラだった。


「でもお義姉さま、このネックレスはお気に入りだったのではなくって?」


シンデレラは立ち上がっていくつかの「不用品」を吟味し、ネックレスのひとつをかかげて見せた。それはアデラの瞳と同じブルーの宝石をはめたもので、気に入っていたのは確かだ。どうしようか最後まで迷っていたのを見透かされたようで、アデラは動揺する。


「えっ!?そ、それは・・・そうそう!もうデザインが流行遅れなのよ」


どもりながらもなんとか取り繕う。シンデレラは「はあ」などと言って、あまり納得していないようすだ。


「でも今年はアクセサリーも新調してないし、手持ちのものまで処分してしまって、社交に差し支えないのですか?」


アデラが社交という名の婚活に励んでいることはシンデレラも知っている。古い手持ちのなかで工夫してお洒落をする義姉の姿を、申し訳ないと思いながら見ていたのだ。


「私の美しさに勝てるドレスも宝石もないからいいの!そんなものなくったって、すぐに結婚相手を見つけてやるから見てなさい」


そう言ってドヤ顔を決めたアデラであるが、続くシンデレラの言葉に大きな衝撃をうける。


「確かに早くお婿さんを見つけていただきたいとは思います。その方に男爵家を継いでいただければ我が家も安泰ですわ」


どうやらシンデレラは、アデラとその婿に男爵家を継がせるつもりでいるらしい。彼女のその考えを初めて知って、アデラはすぐに言葉がでない。あんぐり口を開けたままフリーズしている。


この国では女性の爵位継承が認められているとは言え、一般的には一時的な措置だと受け止められていた。次に継ぐ男子が成人するまで、もしくは娘が成長して婿を迎えるまでのつなぎのような存在とされていたのである。スットコランドはまだまだ男性優位の社会なので、やはり当主は男性であることが望ましいとされているのだ。


「はぁああああああああああ!?なに言ってるの?後継ぎは、あ・な・たでしょ!!」


衝撃からようやく立ち直ったアデラは、叫ぶように言うとシンデレラの鼻先に指をつきつけた。


アデラこそ、早くシンデレラに良い婿を迎え、その人と男爵家を継いでほしいと考えていたのだ。長女とはいえ自分は養女だし、アスター男爵家の血を受け継ぐのはシンデレラだけなのだから、それが当然だと思っている。


「私はねぇ、もっと上を狙っているの。爵位も財力も年齢もうーんと上のハイスぺ貴族と結婚するんだから、この家はあなたが継ぎなさい!」


小柄なシンデレラを威嚇するようにグイグイと迫る。いや、威嚇したいわけではないのだが、これだけは絶対にゆずれない。


「あの、お義姉さま・・・爵位と財力はともかく、年齢はうんと上でなくてもいいのでは?」


アデラの勢いに気圧されながらも、シンデレラがツッコむ。


「う!私はジジイが好きなのよ!!」


お金さえあれば爺さんでも何でもいい、そう思っていたのがうっかり口に出てしまった。実は彼女は金持ちの後妻の座を狙っているのだ。もちろん本当にジジイが好きなわけではなく、独り身の金持ちを篭絡して、アスター男爵家へ援助させるためだ。


「とにかく!不用品は全部、ちゃんと処分しといてね」


アデラはそう念を押すと、逃げるように部屋を出た。これは一刻も早く条件にあう結婚相手を見つけなければと思いながら。そしてシンデレラにも早く良い婿を見つけないとならない。シンデレラとその婿に家を継がせ、自分はリッチな後妻になって経済的に支えるのだ。


竜巻のような勢いでアデラが去って行ったあと、シンデレラはアクセサリーの箱のひとつを取りあげると、鍵のかかる引き出しの奥へとしまいこんだ。


これだけは売らないでおこう。


それはアデラのお気に入りのブルーの石がはまったネックレスの箱。あまり良い値がつかなかったとかなんとか言い訳をして、折を見てアデラに返すつもりであった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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