バーサ姉さんは呪いたいー4
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なんでこんなところに?
どう見ても客を案内するような場所じゃない。バーサが不審に思っていると、伯爵令嬢が鼻をつまみながらたい肥の山を指さして言った。
「ちょっと臭いですけれど、あの真ん中に珍しい花が咲いてますの」
「え?たい肥にですか?」
そんな植物は聞いたことがない。しかし好奇心旺盛なバーサは、たい肥に近づいて前かがみで何かあるか探してみた。
ドン!!
そのとき、強い力で背中を押され、バーサはたい肥のなかに頭から突っ込んだのである。
令嬢たちからドッと笑い声が起きる。
「ああ臭い!臭いと思ったらたい肥に平民が混ざり込んでいたのね」
「伯爵さまのお屋敷にあがりこむなんて、身のほど知らずなこと」
「平民あがりの成金貴族にはそこがお似合いよ!」
バーサはたい肥まみれで令嬢たちをにらみつけたが、なにも言い返せなかった。いや、たとえバーサに言い返すだけの度胸があっても、由緒ある伯爵家の令嬢にたてつくことはできない。そんなことをしたら、義父に迷惑がかかってしまうだろう。
バーサは悔しくて涙があふれそうになったが、必死にこらえる。彼女たちの前でみじめに泣くことだけはしたくなかった。
「ふん、可愛げがないこと」
伯爵令嬢はそう言い放つと、もう興味がないとばかりに取り巻きを連れて庭を引き返した。バーサはとっさに最近覚えたばかりの呪いの呪文を口のなかで唱えて、彼女らの背中に投げつける。このときのバーサは、呪いに興味はあっても本当になにかが起こるとは思っていなかった。悔しさを紛らわすのに、それくらいのことしかできなかっただけだ。
「偉大なる水の精霊に願う、彼女らに水の災いを。ウンディラネーヤポーピパ!」
そして、どうにかたい肥のなかから抜けだすと、体じゅうについた発酵中の藁を払い落す。
この臭いは消えそうにないわね・・・。
帰りの馬車の惨状を思ってため息をついていると、遠くから甲高い悲鳴と水音が聞こえてきた。なにやら大騒ぎになっているようだが、この格好で顔を出すわけには行かない。バーサは屋敷の裏口へ回り、驚いたり怪しんだりする使用人に頼んで、アデラを呼んできてもらったのだ。
バーサは屋敷に帰ったあと、シンデレラにこんな話を聞いた。
伯爵令嬢一行はバラ園を引き返していたが、取り巻きのひとりが飛んできた蜂に驚いて逃げ回り、パニックのようになった。しまいにはほかの取り巻きと伯爵令嬢をも巻き込んで、全員池に落ちてしまったらしい。
「もう大騒ぎだったんです。あの蜂、なんだかしつこくって、執拗にあの方たちを追い回してましたの」
「どうしてでしょうね?」と不思議がるシンデレラの言葉に、バーサは自分の呪いが効果を発揮したのだと確信したのである。この事件をきっかけに、バーサは貴族との付き合いを嫌って屋敷に引きこもるようになり、呪いの研究に没頭していった。
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