バーサ姉さんは呪いたいー2
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バーサは膝のうえの人形を抱えて椅子から立ち上がった。この人形はベティといい、彼女が小さなころに実父から贈られたものだ。バーサと同じ髪と目の色をしていて、顔立ちもどこか似ている。片時も手放さないでいるので、長い年月が過ぎた今は薄汚れてボロボロになってしまった。正直言って不気味だが、バーサの大事な友達なのでアデラは何も言わないでいる。
「全部ってわけにはいかないでしょう?あなただっていつかお嫁に行くのよ?」
バーサはアデラより2つ年下の20歳。今のままでは無理だろうと分かってはいるが、結婚相手を探さないといけない年頃なのには間違いないのだ。
「貴族に嫁に行くなんて絶対イヤ!私は呪いで自立するんだからかまわないで」
母と自分たちは元は平民だが、今は貴族だ。母親はもちろん、自分の娘たちが貴族に嫁ぐことを願っている。それ以外の選択肢など、絶対に許すはずがない。バーサもそれは分かっていると思うのだが。
だいたい、「呪いで自立する」って何よ?
アデラは衣裳部屋に向かう妹の後ろ姿を見てため息をついた。彼女の背が低くずんぐりした体型も、癖の強い髪も、全て実の父親から受け継いだものだ。ただエメラルド色の瞳だけが母ゆずりと言えたが、その目には母親にはない知性の光が宿っているのに。
ぎぎぃいいいい・・・。
衣裳部屋のドアがきしんだ音を立てて開く。予想どおり、ドレスもアクセサリーも薄くホコリをかぶっていたが、どれも新品同様だ。ここ数年は新調していないのでドレスは流行遅れだったが、アクセサリーはそれなりの値で売れるだろう。
ひと通り確認したアデラがバーサを振り返ると、彼女は1枚のドレスを手に取って眺めていた。まだこの屋敷に来たばかりのころに義父が贈ってくれたものだ。
「バーサ、とっておきたいものがあったら無理に売らなくていいのよ?」
たとえ着る機会がなくても、バーサが気に入っているものまで取り上げたくはない。しかしバーサは首を横に振る。
「ううん、ドレスが惜しいんじゃないの。せっかくお義父さまが買ってくれたのに、一度も着なかったなと思って・・・」
出かけないにしても、一度くらい袖を通した姿を見てもらえばよかった。血のつながっていない変わり者の自分に、義父はとても良くしてくれたのだ。
「お義父さまは、分け隔てなく私たちを可愛がってくださったわね」
バーサの思いを察したアデラは、そう声をかけながら肩にそっと手を置く。
仕事で留守がちな人だったので、一緒に過ごした時間は少ない。でも出張から帰れば必ず贈り物をしてくれたし、内容もシンデレラと差をつけられることはなかったと感じている。
「アデラ、君は長女なんだから、留守のあいだは頼んだよ」
そして、家をあけるたびに義父がそう声掛けしてくれることを、アデラは嬉しく思っていた。義父はサンドラとアデラの性質をよく見抜いていて、妹たちの面倒を自分に託してくれたのだと思っている。
「そうよ、アスター男爵家は私が守らないと」
アデラは決意を新たにした。
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