始球式
この物語はフィクションであり実際の場所や人物・団体とは関係ありません
1976年 阪神甲子園球場
「さぁ打席に入るのは主将羽島克樹。今日は3打数1安打。ライト戦への2点タイムリーを放っています。」
ドッドッドッ
「嵯峨大付属、2点ビハインドで最終回を迎えていますがツーアウト満塁の大チャンスです!唐島学院のエース、持田はたして抑え切ることができるのか!」
ドッドッドッドッドッ
「勝てば36年振りの決勝進出となる嵯峨大付属!2連覇を狙う唐島学院が最後まで立ちはだかります!」
ストレート、カーブ、チェンジアップ、スライダー...
アウトロー、インハイ、インロー、インドア、アウトドア...
投げた球をを打ち返すという行為が今はこの世のどんな行為よりも難しく思える
この最高の舞台の最高の場面で、ヒーローになれたなら
「カウントは2-2、ピッチャー振りかぶってっ!投げた!」
狙いすます、腰を回し、捻転を生み、肩から腕に連動させていく。バットを自然と返しやや低めの真ん中に来た球を華麗にセンター前へ...........
「三振ーー!!!試合終了ーーー!!!」
描くはずだった白球はは後ろから聞こえた乾いた音に成り代わり、虚しい結果の現実を突きつける
あぁ、終わったんだなあ
泥にまみれたユニフォームと走り続けた2年半の日々はあっという間に終わりを告げた
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ガラガラ...
「よーし座れーい。朝礼やるぞー.....じゃあ事前に伝えたが今日から転校生がうちのクラスに来ることになった。挨拶してもらうぞ〜」
「....初めまして。アメリカのロサンゼルスから来ました。日本とアメリカのハーフで日本語は話せます。名前は、
『羽島カルマ』です。よろしく」
「というわけで分からないことも多いだろう。みんなで教えてあげてクラスの一員として迎えてあげてくれ」
外を眺めれば校庭が、おおよそアメリカの高校とは全く異なるダートの校庭が広がっている。しかし、その1部は焦げたような茶色で扇形に広がっている。
「.........」
『コーシエン』
父から聞かされたその場所がどんなものなのかまだ知るよしもない。
はたしてこの学校で、父の母校であること場所で俺は『コーシエン』とは何かを知ることはできるのだろうか、