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女達

二話連続投稿の二話目になります!

日間ハイファン26位ありがとうございます!

「うん?」


「どうされました?」


 ふと疑問を覚えたようにフレッドが首を傾げると、一番近くにいたコーデリアが反応した。


「いえ、腕の方は全く問題ないのですが、極鎧の方はどうなっているかと思いまして」


「なるほど……」


 無意識に両腕を動かしたフレッドの言葉に、コーデリアもそう言えばどうなっているのだろうかと思った。


 彼の極鎧は片腕が切断され、もう片方は炭化する寸前の熱を受けていたのだから、生身の腕が再生しても、装甲板は無事だとは考えにくい。


「聖典によると損傷した極鎧は基本的に元通りになるようですけれど……」


 古来から伝わる聖典に精通しているレティは、極鎧の伝承を思い出すが少し自信がない。


 と言うのもここ二百年程度、非常に頑強な極鎧が腕ごと切断されるような事態や争いが発生しておらず、その類の知識がきちんと継承されていなかった。


「少し確認した方がよろしいでしょう」


「確かに!」


 艶然としたアドラシオンが提案すると、ソルも大きく頷いて同意した。


 ここには使徒がいるし、何より大いなる神が降臨した場でもある。もしフレッドの極鎧になんらかの機能不全が発生していた場合、神話の登場人物なら解決できる可能性がある。そのため、元の次元に戻る前に、フレッドの極鎧を確認しておく必要があった。


「それでは……装着」


 フレッドが極鎧を装着するための意識に切り替え、手の紋章を輝かせる。


 一瞬で現れた。


 緑の輝く体、逞しい脚に盛り上がったような胸部、オークを模したような頭部。そして全く欠損のない腕の装甲。


「おお、変わりがない」


 ぐるぐると腕を動かして確認するフレッドの目には、全く異常がないように映ったが……姫君には少々別の見え方がしているようだ。


 なにせコーデリアとアドラシオンは一瞬たりとも目を離さず、逆にレティとソルの二人は、あまり直視してはいけないものを前にしたかのように目を伏せている。


 怪物のオークは御免だが、オーク型極鎧は彼女達にとって強さの象徴であり……崇拝の対象に近い。


 なす術もなく囚われた自分達を嘲る悪魔。そして駆けてきたオーク型と悪魔の決闘。一瞬の決着。それら全てが姫君の脳裏に焼き付いており、生涯忘れられない光景となっている。


 そのオーク型が再び現れたのだから、姫君達は冷静でいられなかった。


「我々も確認しましょうっ⁉」


「ありがとうございます。お願いします」


 コーデリアは思わず口にしてしまった言葉に自分で驚いたが、フレッドは特に気にすることなく素直に感謝した。


 そして許可が出たことをいいことにアドラシオンが先んじて進み、コーデリア、レティ、ソルも慌てて続いたが、確認そのものは非常に真剣だ。


「……特におかしなところはありませんね」


「……継ぎ目のような物もない」


 腕を横に広げたフレッドの周りに群がった姫君の内、コーデリアとアドラシオンが首を傾げる。


 フレッドの片腕は炭化し、もう片方は切断されたのだから、極鎧の装甲にも何かしらの痕跡があってもおかしくない筈だ。


 しかし、二人が見たところではなんの異常もなく、いいことなのだがそれはそれで、どんな仕組みが働いているのだろうと疑問を感じさせた。


「熱砂国の清らかな篩じゃ、極鎧が壊れたら大いなる神が新しいものを送ってくれるっていう見解と、極鎧には修復の加護が与えられているっていう見解の二つがあるけど、騎国はどんな感じ?」


「そうですね……そういった類の話はあった筈ですが、はっきりとした意見の統一はなかったかと」


 異なる清らかな篩に従い、仲が良くない筈のソルとレティが意見をすり合わせている。


 確かに今しなければならないのは、教義による対立ではなくフレッドについてなのだが、特にレティの教育を考えたらあり得ないことだ。


 つまり、それだけ彼女達の中で優先順位が変動している証拠と言えよう。


「特に問題はなさそうですね」


「はい。見たところ、異常はありません」


「ありがとうございます。それでは少し動かしてみますので、離れてください」


 少なくとも外見上の異変はないようだと察したフレッドにコーデリアが肯定すると、彼は極鎧を動かすことにした。


 姫君が離れるとオーク型が腕を振り軽く走る。


 悪魔と対決した時に比べるとおままごとのような動作だが、姫君達の瞳を通すと脳が勝手に悪魔との戦いを投影し、荒々しい益荒男の姿となる。


「はあ……」


 熱の籠った吐息は誰のものだったか。


 コーデリアか、レティの姉妹か、それともアドラシオンとソルのものか。もしくは全員のものだったか。


 少しの間、彼女達全員がオークの姿に釘付けになっていた。


(冗談だったんだけど本当になりそう)


 いち早く我を取り戻したアドラシオンが、ソルと交わした冗談を思い出した。


(私は玉座に座った彼に跨って、ソルは大鍋の中で一緒。赤いお姫様……コーデリアは馬に相乗り、レティは棺桶の中で隠れてイチャイチャ)


 アドラシオンの脳裏では、黄金の玉座に座ったフレッドと戯れる自分。


 大鍋の中で真っ赤になってもじもじしながらフレッドに近づくソル。


 純潔を表すはずのユニコーンの上でフレッドの背に縋りつくコーデリア。


 棺桶の小窓を覗いたら、レティの青い髪の後頭部しか見えない光景。


 それらが鮮明に映し出されていた。

ここ最近、以前のように書けないと思い悩みながら苦闘してたので、日間ハイファン26位本当に嬉しいです……!


もし面白いと思ってくださったらブックマーク、下の☆☆☆☆☆で評価していただけると作者が泣いて喜びます!

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やはり筋肉、筋肉ですべて解決
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