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不運なおっさん

個人的なメモノートに書いてた奴。勿体ないので投稿。

 世界の全てが歪だ。


 しかし、薄っすらとは誰もが思っていたものの口には出せない。世界の中心に位置して、清らかな篩と呼ばれる宗教勢力の神殿のど真ん中なら猶更だろう。


 三十代後半ながら苦労をしたのか四十代にも見える、フレッド・プラーシノも口にはしない。


 大国の騎国(きこく)で小さな領土を治める貴族の養子という立場のフレッドを、外での労働などしたことがないと言わんばかりに色白で、太り過ぎていたり細すぎる若者達がニヤニヤと意地悪く笑っていてもだ。


 一方のフレッドだが、嘲笑っている青年達とは真逆と言っていい。


 同年代よりも頭二つは大きい体だが、それに相応しくあちこちが異様な盛り上がりを見せており、特にふくらはぎや腕周りは女性の腰ほどもあるだろう。


 青い瞳も底意地の悪いものではなく猛禽のようで、くすんで白髪が混ざる短い金髪が光り輝き、肌は日に焼けて、明らかに周囲から浮いている。


「来年には死んでるんじゃないか?」


「今年中かもしれん」


 青年の多くがプラーシノ家より格上な貴族の子息であるため、フレッドがいる環境を噂話程度に知っていた。


 極々稀に聞く話だ。


 晩年になっても跡取りに恵まれず、次善策として親族から養子を迎えた後に実子が生まれた場合はどうなるか。


 大抵は養子を疎んじ、鈍った脳内で被害妄想を爆発させ、実子が養子に殺される前に排除しようと企むのだ。


 勿論青年達は、プラーシノ家で何が起こっているかを直接見ていた訳でなかったが、この噂話は事実でフレッドはかなり危険な立場に陥っていた。


 そして……この青年達、実はフレッドよりも一回りは年上である。


「ま、人族の考えは我々には理解できない」


「言えてる」


「人族って本当に馬鹿だよな」


 青年達はエルフと呼ばれる長命種で、記録上では千年近く生きた者までいる。他の特徴は横に伸びた細い耳と、なにより美麗な者が多いことだろう。


 更に彼らエルフ族は高貴なる者として世界に君臨し、愚かなる人族を指導する立場にあった。


 そのため彼らが所属する騎国は、王や大臣、高位貴族がエルフ種であり、人間種はどう頑張っても下級貴族が限界である。


「コーデリア・ポルフィロス」


 真っ白な石材で建築された巨大な神殿内の全員がその名に注目し、フレッドを意地悪く眺めていた者達に至っては体ごと向き直った。


 そこには高貴なる赤を宿したエルフの女。名をコーデリア・ポルフィロスがいた。


 この場にいるエルフの若者達と同年代で女性にしては若干背が高いが、他にも特徴だらけだ。


 肩甲骨まで流れる真っ赤な髪は癖などなく、光の反射もなく輝いているかのような錯覚を起こし、単なる髪が至高の芸術となっている。


 更に鋭い眼差しの一部である赤い瞳も負けておらず、最高級のルビーとて及ばぬだろう。


 そして健康的で生命力に溢れた白い肌は炎のような赤とよく似合っているが、最終的に全ての者の視線が行きつくのはその顔立ちだ。


 神々が生真面目という言葉を参考にして人間を作ったはいいが、加減を間違えてしまったのだろう。強い意志を宿した瞳、鼻、唇、眉の造形と位置は完璧としか言えず、見るもの全てを魅了していた。


 更に付属するものも凄まじい。


 大国に分類される騎国の第一王女という地位を持つ彼女は、そこらの木っ端貴族より遥かに影響力があり、フレッドなど埃と変わらない存在だ。


 そして燻っている男達からすれば、彼女と結婚することは美貌の妻と権威を手に入れることを意味しており、是が非でも手に入れたい優勝景品だった。


「証を」


 コーデリアを呼んだ聖職者は彼女と真反対に醜い。四十代に見えるエルフ男は不摂生の極みであり、聖なる衣服は突き出た腹を隠せず、多少動いただけで息が切れる有様だ。


 志ある聖職者などとっくの昔に死に絶え、残った馬鹿が甘い蜜だけを吸ってブクブク肥え太り、気高い意思などどこにもない。


「はい」


「確かに」


 そんな聖職者がコーデリアの手の甲を確認すると、そこには盾と剣が重なり合った紋章があった。


 これこそがフレッドを含めた人間。コーデリアやエルフとしては若い者達が集められた理由だ。


「それでは儀式を始める!」


 聖職者の酒にやられた喉からがらがらの声が迸る。


「コーデリア・ポルフィロス、大いなる炉へ」


「はい」


 促されたコーデリアの前には巨大な金属の両扉がある。そして彼女の手の甲にある紋章が光り輝くと、扉が開き始めたが、中の様子は強烈な光に阻まれて伺うことができない。


 その光の中へコーデリアが足を踏み入れた途端、金属の扉が閉じて彼女を隔離した。


 変化はすぐ訪れた。


「な、なんと⁉」


「まさか⁉」


 彩のない銀色の扉が突如として七色に輝き始め、それらが渦を巻くように混ざり合っていく。


 この光景を見た聖職者達は記憶を引っ張り出して、次に訪れるであろう事態に興奮し始める。


「おお!」


 扉から黄金の輝きが漏れ始め、ゆっくりと開いた。


 そこにいた。


 儀式用の薄い布のような服が張り付いたコーデリアの胸部では、申し訳程度の赤い金属の装甲が輝いているが、他は大きく異なる。


 人間の胴体よりも倍は大きいのではないかと思える赤い装甲が、コーデリアの四肢に纏わりついて手足を構成し、右手には金色に輝く剣を。左手には銀色に輝く盾を装着している。


 その上、背からは大きな突起の様なものが突き出ており、左右には弓のようなものが引っ付いていた。


「なんたることだ!」


「伝説がここに!」


 聖職者達は興奮して口々に叫び声を上げる。


 これこそが儀式の成果である。


 偉大なる神に選ばれし者は手に紋章が浮かび、太古から聖なる遺物として信仰される大いなる炉に足を踏み入れると、強力な兵装である機械の鎧、極鎧(きょくがい)を装着できるのだ。


 しかし極鎧の性能はまちまちで、当たりと言われる物もあれば外れに分類される物もある。


 そしてコーデリアの極鎧は大当たりだ。


「間違いない! 聖典に記載されている姿と同じだ!」


「あれこそまさに!」


「姫騎士型極鎧!」


 伝承に謳われし姫騎士型極鎧に他ならなかった。


「これが……」


 コーデリアが自身の姿を確認して、装甲が殆どない胴体に注目する。


 最上級の極鎧にある共通点として、胴体や頭部の装甲がない。もしくはあっても極僅かという点が挙げられる。


 通常の極鎧は真逆で、基本的には全身装甲タイプなことを考えると、最上級の場合は装甲がほぼ必要ないなにかしらの要因があるということである。


 ただそのせいで、薄い布を纏っているだけのコーデリアは、同年代に比べてかなりスタイルがいい自分の体が強調されているような気がして、強い羞恥を感じていた。


「ふう……」


 コーデリアの唇から困惑した吐息が漏れると、赤い姫騎士型極鎧は手の甲の紋章に吸い込まれるかのように消え去る。


 これで彼女の聖なる儀式は完了だ。


「流石ですコーデリア様!」


「万歳! 万歳!」


 神に選ばれし者を見届けたエルフの若者達が一斉に称える。


 尤もそれは歴史的な快挙を祝うっているのではなく、少しでもコーデリアの目に留まる可能性がある行為をしているにすぎない。


「こちらへどうぞ」


 そして地位だけではなく至上の極鎧を手に入れたコーデリアの扱いは別格であり、即座に聖職者が別室へと案内した。


「次の者」


 興奮が続いている聖域だが、儀式は完了させる必要がある。


(俺も伝説級の極鎧を手に入れることができたら……!)


 姫騎士型が現代に再誕生したことで、多くの人間が自らも伝説の再来になれるのではと期待を抱き、大いなる炉の扉に飛び込んでいく。


 彼らの脳裏には、姫騎士と化したコーデリアの隣にいる自分の姿だけだ。


 しかし……。


 扉から溢れるのは何の変哲もない少量の光だけだ。


「騎士型か……」


「まただ」


 多くの者が装飾や特別性を感じない全身騎士甲冑、騎士型極鎧を身に纏って出てくるが、これは例年通りの光景で、姫騎士型が現れるのが例外中の例外にすぎないのだ。


 そして例年通りということは、騎士型は戦力としての中核であり、よく言えば纏まった性能。悪く言えば代わりが数多くいる存在である。


「騎士型」


「騎士型」


「斥候型」


「弓型」


 更にその後も極鎧の装着が行われ、通常の物が排出され続ける。


「次は人族」


 明らかにやる気の感じない聖職者の声が響く。


 全てがエルフの劣等的存在でしかない人間も、手の甲の紋章が現れればこの儀式に参加することができる。


 しかし、数百年前は偉大なるエルフに遠慮して、人間は儀式に参加せず極鎧を入手しないのが常識だった。


 それが変わり始めたのはつい最近で、エルフの一部が平和な世での軍役を面倒臭がり、下々の人間にやらせようと考え始めたのだ。


 その結果、紋章が光っている人間を連れてきて、儀式に参加させているのだが、同じ場でエルフと人族の儀式をするのかと非難が巻き起こり、次回からは別々に行うことになっていた。


 なお、人族の都合は全く考えず紋章が光っていたら誰でも連れてきたため、フレッドのような中年が混ざってしまっていた。


「騎士型」


「騎士型」


 だが少なくとも極鎧の質はエルフと大して変わらないようで、大いなる炉から出てくる人間もまた多くが騎士を模した極鎧だった。


「フレッド・プラーシノ」


「はい」


 ついにフレッドは名を呼ばれて一歩前に出る。


 コーデリアの様な一部の例外を除いて儀式は最後まで見届ける必要があるので、残っていた血色の悪い青年達は未だにニヤニヤと笑っている。


 彼らは確信しているのだ。木っ端貴族の養子で、鍛える必要などないのに体が逞しい異物は、肉体労働に相応しい低級な極鎧を装着するに違いない、と。


(眩しすぎる。もう少しなんとならないのか?)


 そんなフレッドはエルフの青年達や、流れ作業の気分になっている聖職者を気にすることなく、大いなる炉に足を踏み入れる。


 途轍もない光が……溢れなかった。


 いや、それどころか光もしない。


「ぷ」


「ぷふ」


「おいおい」


 炉から出てきたフレッドを、堪えきれない嘲笑が迎えた、


 異様な姿だ。


 全身を包む曲線の多い緑色の全身装甲。しかしどこか生物的な外見で、決定的なのは頭部だ。


 顔には目の様な鋭い赤い輝きが二つ。まるで牙が突き出た口かと思える奇妙なパーツ。立体的に盛り上がっているのは鼻なのだろうか。


 そう、つまり金属が頭部のパーツを形作っているのだが、全体的に太く大きい緑の体と組み合わせたら、とある生物とそっくりだ。


「まさかオーク型か⁉」


「モンスター型かよ!」


「凄いぞ! 伝承の通りの見た目だ!」


「まさか実在してたなんて!」


 エルフ達の嘲笑が大きくなる。


 この世界には人型で筋骨隆々で逞しい怪物、オークと呼ばれる存在がいるのだが、フレッドの極鎧はそのオークと類似していた。


 エルフの信じている伝承によると、オーク型極鎧。いや、モンスターと類似する外見を持つ極鎧は全て外れだと伝えられている。


 通常の極鎧はある程度の補助機能が存在しており、危険に対する緊急回避。攻撃を最適化する機能等が備わっているものだ。


 特に姫騎士型を含めた伝説級の極鎧はその機能が顕著で、着装者は気が付けば勝利しているとまで伝えられている。


 しかしこれまた伝承によると、オーク型を含めた俗にいうモンスター型の極鎧には、それらの機能が一切搭載されておらず、着装者は全ての行動を自分の判断で行わなければならないとされている。


「残念なことだ。戦いで武功を上げることすらできないなんて」


「おいおい。武功になるような戦いなんて五百年以上も起こってないぞ」


「おっと。それもそうだな」


 エルフの青年達にとっては、いつ死んでもおかしくない立場の者が最下級の極鎧を身に纏うのは滑稽でしかない。


 その姿こそが滑稽だったが。


 特別は特権を作り、特権は腐敗を生み、腐敗は束縛を招き、束縛は硬直と化し、硬直は対処能力そのものを失わせる。


 凝り固まり、腐り果て、全てが朽ちる寸前の世界で、フレッドはコキリと首を鳴らすだけだった。


 まるで余計な感触が存在しないかを確かめるように。


 ただ、それでも騒動と無縁でいられない。これから数週間後、彼の養父が騒ぎ出したのだ。


 ◆


「オーク型極鎧だと⁉」


 プラーシノ男爵家の屋敷で男の声が響く。


 それはフレッドの養父であるアンソニー・プラーシノ男爵の声だ。


 六十を優に過ぎて金の髪は薄くなり、肥満気味で色白なこの男はフレッドと似ても似つかないが、手紙でフレッドが最下級の極鎧であるオーク型だと怒っているのだろうか?


 否。大げさに怒った顔を見せながら、声には隠しきれない喜びの声があった。


「しかもただ一人⁉」


(困った……言うと思ったぞ……)


 極鎧のことについて言及したアンソニーに、控えていた配下の者達が心の中で渋面を作る。


 フレッドの立場だが、単純にプラーシノ家全てから疎まれ追い詰められているのではなく、少々妙なことになっている。


 彼の実父はアンソニーの弟で数年前に死去しているのだが、フレッドと実子がないアンソニーの関係はちょうどよかった。


 アンソニーは弟の忘れ形見を引き立て、フレッドは血族としてプラーシノ家を繋いでいく流れが生まれ、配下の者達は頭が痛かった後継者問題が片付いたと胸を撫で下ろした。


 このまま維持できれば素晴らしかったのだが、つい最近アンソニーの実子が生まれたことでこの関係が瓦解した。


 アンソニーはそう大した関わりがなかった弟の子より、自分の子に跡を継いでほしいと思い込むようになったのだ。


「アンソニー様、極鎧のことではなく……」


 家臣の一人がやんわりとアンソニーを宥めようとした。


 フレッドの排除は男爵家の家臣にすれば愚の骨頂である。


 実子が生まれたのは喜ばしいが、乳幼児が突然死するのは珍しい話ではなく、今現在の状況でフレッドを排除するのは、命綱なしに崖のギリギリを歩く状況を招いてしまう。


 その上、更に話をややこしくしている疑惑がある。


(そもそも実子か?)


 一部だがアンソニーの子供が実子なのかと疑っている者達がいた。


 アンソニーは貴族の当主なのだから正式な妻はいたし、妾だって何人か存在していた。だが今まで子ができたことはなく、アンソニーはその類の能力がないのではと思われていたのだ。


 それなのに、そこそこ小金を持っている商家の娘が妾として招かれると、途端に子供が生まれたものだから、非常に疑わしかった。


 つまり今現在、自分の子供に跡を継がせたい当主と、保険を切り捨てるような危ない火遊びをするなと憤る家臣で混沌としているのがプラーシノ家だ。


「聖典にはっきり使えないゴミと記載されているモンスター型なのだぞ!」


 力説するアンソニーだが、通常の因果関係とは逆だ。


 理由が発生したから排除しようとしているのではなく、元々排除したかったところに理由が転がりこんできたと言っていい。


 尤もアンソニーの言う通り、古来から伝わる聖典にはモンスター型極鎧は、原文そのままに使えないゴミと記載されているのは間違いない。


「ですがフレッド様には聖なる行軍や訓練施設へ参加が……」


 家臣はまだアンソニーを押し留めようとする。


 極鎧の儀式に参加した者は、聖なる行軍という太古の偉大なる者達の足跡を辿ると銘打ったお披露目行事に参加し、その後に専門の訓練が行われることになっている。


 これが決定しているような状況でフレッドを排除しようとすれば、忽ち噂が駆け巡ってプラーシノ家の名に傷がつくだろう。


 元々その類の噂が既に存在していてもだ。


「オーク型なんぞが我が家の名で聖なる行軍に参加して、訓練施設でうろちょろするなどあり得ん!」


「し、しかしながら強制参加ですので……」


 アンソニーがなにを言いたいか察した家臣の背中に汗が流れる。


 もっと彼が若ければ慎重になったかもしれないが、六十を優に超えるとあとどれくらい生きられるのか不安になり、時間をかけてゆっくりやろうという気持ちがなくしてしまう。


 だからこそ非常に安直で手っ取り早く、そして後先を考えない決断を下す。


「フレッドに我が家の家名を名乗るなと伝えろ!」


 後継者が家名を名乗ることができない。それは実質追放と同義であり、戻ってくるなという通告でもあった。


 ◆


(まあ……こうなるだろうなとは思った)


 プラーシノ家の家臣から送られてきた手紙を読んだフレッドは、大きな手で手紙を折りたたみながら嘆息する。


(オーク型とは関係なく、近いうちにこうなっていただろう)


 手紙にはフレッドが家名を名乗ってはならないことを伝える文が認められていたが、彼もまた家臣達と同じくアンソニーがなにを考えているかをきちんと理解している。


 そして結局は追い出されるのが遅いか早いかの違いであり、その点では覚悟していたので特に問題はなかった。


(なんとかなる……はずだ)


 フレッドに焦りはほぼない。


 聖なる行軍にせよ訓練施設での生活にせよ、極鎧着用者は国家等が援助してくれるため、食うのに困ることは考えにくい。


 そして大方の貴族に比べてフレッドは食への拘りがないため、とりあえずは生きていけるだろうとある意味楽観していた。


「わあああああああ!」


(なんだ?)


 突然聞こえてきた歓声のようなものに疑問を覚えたフレッドは、清らかな篩が用意してくれている部屋の扉を開き、外の様子を確認した。


 答えは上空にあった。


(飛空船か)


 フレッドが見上げる視線の先には、大型の木造船そのままの形をしていながら金属で作られ、しかも空で浮かんでいる物体の姿があった。


(確か極鎧と同じで原理は分かっていないんだよな)


 奇妙なことだがこの歪な世界は、極鎧を筆頭に理解できていない現象や仕組みをそのまま受け入れている。ただ、その理解できないものを手放した途端に世界は停滞どころか即座に衰退するので、人々は古代の神による恩恵だとか奇跡だと妄信して生活していた。


(それであれは各国の極鎧装着者を載せている感じか?)


 フレッドの推測は正しい。


 複数の飛行船は世界各地に点在する聖地の大いなる炉に飛び込み、極鎧を装着することができた者を乗せていた。目的地はここ、清らかな篩が直接支配している総本山である。


(そう言えば確か、別の国で複数の伝説級が現れたとかなんとか)


 フレッドは小耳に挟んだだけだが、聖典や伝承で語られる極鎧だからこそ伝説級と呼ばれる存在が別の国でも出現していた。


 そのため早くも今代は神話の世代や黄金の世代と呼ばれ始めているものの、地を這う雑兵であるオーク型には全く関係ない話である。


 そしてこの後に彼らは、古代の英雄が悪魔を封じた伝説にあやかる聖なる行軍。という名目で極鎧のお披露目行軍を行うことになっている。


(祭りみたいなものだな)


 何百年も続いている儀式の一環をフレッドは軽い言葉で片付けたがまさにその通り。


 最初は神聖な儀式だった聖なる行軍は、最早当時の理念や目的すら失伝してしまい、当代の極鎧装着者が民衆から称賛を浴びるための単なる祭りと化した。


(まあ、最後尾だし気楽なもんだ)


 だがフレットがなんらかの儀式に参加することもない。


 そういった類は伝説級の者達の仕事であり、フレッドは最後尾で適当に付いて行けばいいだけだ。


 伝説級と関わることなどあり得ない。聖なる行軍は数合わせ。訓練施設では下っ端。その後はなんとか生きていこう。


 この時点でのフレッドの将来設計はある意味はっきりしていた。


 この時点では。

南部晴政「何と酷い家だ……」


豊臣さん「せやな」


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― 新着の感想 ―
姫騎士型……ふむ… オークと姫騎士とエルフ……ふむふむ…
あとがき おまいうの筆頭格じゃねえか! しかも後者はそのせいでお家滅んでるし!
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