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第8話 メンヘラ殺人鬼

「マ、ママ……なんでここに!!」

「この馬鹿息子!!」


 桑野先輩の母親は、気の強いお母さんらしく先輩を激しくビンタしていた。

 物凄い勢いでソファにぶっ倒れる桑野先輩。

 全裸で三回転していたぞ。


 さて、俺はこっちだ。



「……朱音、これで俺たちは終わりだな」

「お、お兄ちゃん……どうして」

「もう言い逃れできないよな」

「…………こ、これは……その、えっと……」


 さすがの朱音も口をパクパクさせるだけ。

 言い訳なんて出来るわけがない。

 したところで俺に響くことは二度とない。



「朱音、お前には失望した。家から出ていってもらう」

「ちょ……そんな! お兄ちゃん、わたしを捨てるの!? 住む場所は!?」

「知るか!! 自分で考えろ」



 俺は今日、朱音との関係を切った。

 これでもう会うことはない……二度と。



「ごめんなさいね、大島さん」



 桑野先輩の母親が謝罪してきた。

 後日、お金を全額弁済してくれることになった。これで金は回収できそうだ。


 更に。



「す、すみませんでした……」


 桑野先輩が土下座して謝ってきた。全裸で。



「それだけですか、先輩」

「い、妹さんに手を出してしまった……。でも、向こうから誘ってきたんだ。……だから、つい……調子に乗って」

「だからって金まで巻き上げるとか鬼畜の所業ですよ。警察に被害届を出しても良かったんですけどね」

「そ、それは……許してくれ! 彼女にバレたら大変だから!」



 コイツ、彼女がいながら朱音に手を出していたのかよ! クズ野郎だ!


 ブン殴ってやりたいところだが、母親の前だ。感情を抑えておこう。それに、十分に制裁は与えられた。


 桑野先輩にも、朱音にもな。



 桑野先輩と母親は帰っていった。

 残るは朱音だけ。



「さあ、あとはお前だ……朱音。荷物をまとめて出て行け」

「そんな、そんなの酷いよ……」

「ここは俺の家だ。親父は海外旅行中だから不在だけどな」

「本当に、わたしを捨てるの……?」

「もううんざりなんだ。それに、お前はもう妹じゃない」

「……っ」


「これが最後だ。お前はおじさんのところへ戻れ」

「っ!!」


 もともと朱音は、親戚のおじさんと住んでいた。だが、暴力を受け続けて耐えられなくなっていた。だから、家の親父が動いて朱音を助けて……家へ迎え入れていたんだがな。 しかし、こんな結果で裏切られてしまうとは。


 朱音の自業自得で地獄へ逆戻りというわけだ。


 荷物をまとめる時間くらいは与え、俺は待機。


 一時間もすれば朱音が大荷物を抱えて玄関にやってきた。



「準備はできたな」

「……うん」

「さようなら、朱音」



 静かに去っていく朱音。

 これで本当に終わりだ。



 背を向けて俺は家の中へ……。




『――――グシャッ!!!』




 わき腹に激痛が走った。



 な…………なんだ、この痛み。



 視線を下ろすと、俺の腹からポタポタと血が(したた)っていた。



 え、なんだ……俺、刺されたのか……?




「…………がはっ」



 脱力して俺はその場に倒れた。

 な、なにが起きた……。


「えへ……えへへ。あんな地獄に戻ってたまるもんですか! お兄ちゃん……わたしを捨てるなら、お兄ちゃん殺すしかないよね!!」


「…………ま、まて。朱音、落ち着け……」


「おじさんのところへ戻っても、どうせわたしは暴力を受けて……犯されて、それだけの人生! ならいっそ、お兄ちゃんぶっ殺してわたしも死ぬしかないよね!?」



 馬乗りになる朱音。

 包丁を俺の心臓に目掛けて振り下ろしてくる。



 ……あぁ、終わった。


 俺はここで朱音に殺されるんだ。



 もう抵抗する力も残っていない。

 叫ぶ力もなかった。



 これほど血を流すと、人間とは何もできなくなるのだな。……知らなかった。




『ザクッ……!』




 刺さて死んだ。



 そう思ったけれど、まぶたが動いた。

 視界を戻してみると、そこには朱音の姿がなかった。



 え……なんだ?



「このメンヘラ殺人鬼! あんた最低よ!!」



 そこにはいつのまにか瑠海さんがいた。

 朱音を金属バッドでぶっ飛ばしていたんだ。

 いつの間に俺の家に……!



「…………ぎゃあああああ!! 痛い、痛い、痛いよぅ! よ、よくも……このクソババア!」


「朱音ちゃん、あなたのことを調べさせてもらったわ。確かに、おじさんから酷い目に遭わされていたかもしれない。でもね、だからって隼くんを不幸にするのは違うでしょ!」


「知ったふうな口を利くな、ババア!」



 朱音のヤツ、目が充血してバケモノみたいに()えてる。こんなのが義理とはいえ、妹だったなんて……チクショウ。


「そうよ、ババアよ。でもね、隼くんはこんなオバさんでも愛してくれた! それがすごく嬉しかった!」


「じゃあ、死ね!!」



 凶器を持ち直した朱音は、今度は瑠海さん目掛けて突進していく。危ない!!


 俺が瑠海さんを守る!!

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