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買い取った全てのガーゼを包帯にするのは、それはそれで大変。そこで、下着、それも赤ちゃんのおむつを作ることにした。ガーゼの柔らかくて通気性が良いという特徴はうってつけだもの。


ガーゼ保管用に借りているスペース代も馬鹿にならない、どんどん作ってしまわなければ。それに、わたし以外は持っていないガーゼの商売は今が旬。新たなガーゼを船が運んできたらどうなるか分からない以上、早々に作るだけ作って売り抜けなくては。


幸い働き手も十分確保出来ている。包帯もおむつも複雑な作業はないから、皆さん自宅で空いている時間を利用して作ってくれる。


経費を差し引いた純利益にクライブも驚いてくれた。

「リアは商売人に向いているのかもね」

「ふふ、ありがとう。わたし達の未来の為に出来ることをしているだけ」

この先、どうなるか分からないのだからお金くらいはしっかり貯めておかないと。


「未来と言えば、実はここ最近伯爵家から二通の手紙が届いた」

「手紙?」

わたしが記憶している限り、クライブが伯爵家から手紙を受け取ったことなどない。わざわざ送ってきたということは、何か悪い知らせだろうか。


「そんな怪訝そうな顔をしないで」

「でも…」

「まあ、内容は奇怪なんだけどね。留学先では優秀な成績を修めるようにだってさ。成績は定期的にアカデミーへ送られているけど、取り寄せて確認していないことが文面から窺えた。そして、一通目の手紙の最後には、優秀ならば養子先を見繕ってやろうとも書いてあったよ」

「養子先?」

「金で買った僕に付加価値を付けて、売り飛ばす気なのかと最初は思ったけど、どうやら違った。三日前に届いた二通目の手紙には僕を養子として受け入れたい家の名前が書いてあったんだ。どこだと思う?」


クライブは面白そうにわたしの好きな綺麗な瞳を細めた。仮に伯爵家がクライブの成績を確認したのなら、商家もしくは研究に力を入れている貴族家といったところだろう。


「文官を輩出している貴族家とか?それで、政治の中枢にあなたを送り込んで伯爵家に有益な情報を持ってくるように指示するのかしら」

「僕も最初はそう思った。留学経験者は、外交部門の文官登用に引っ掛かる可能性があるからね。それもあって試験に通るよう、残りの期間もしっかり勉強しろってことだと」

「でも、違ったのね、その言い方では」

「おかしいんだ。養子先は伯爵の妹が嫁いだクルーデル伯爵家だった。僕を人とも思っていない息子がいる家の。否、クルーデル伯爵家の人間は僕をダウリング伯爵家の家畜か何かだと思っている」

「待って、息子がいる家、しかもクライブのことをそんなふうに思っているのに養子にするの?」

「ね、おかしいだろ」

「何かの罠?」

「分からない。でも、ヒントはある。侯爵家からのリアは帰国しなくていいという手紙。リアの侍女になる予定の人からのクレア嬢を見掛けなくなったという情報。そしてクルーデル伯爵家の息子は殿下の取り巻きなんだ。中心には殿下がいる、そうは思わない?」

「わたし、侯爵家へお伺いを立ててみるわ。ご卒業される殿下へ、外国から何か珍しいものを贈りたいけれど何がいいかと。返事如何によっては、わたしの立場に変化が起きているか分かるはず」


でも、手紙の内容程度では得たい情報には程遠いだろう。侯爵家から離れたくて、選べる留学先の中で一番遠い国にやって来たけれど、こうも自国の情報が分からないとは。


「ねえ、クライブ。包帯とおむつで得た利益で人を雇いましょう、情報を収集する為に」

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