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前世で夫達に噂をばら撒かれ苦しんだわたしは知っている。嘘が簡単に事実になり、人を苦しめると。

わたしはクライブにリボンを贈られた日から、善意で噂をばら撒き始めた。苦しむのではなく、王家が喜ぶであろう噂を。ここが前世の夫達と大きく違うところだ。


噂の内容は、王家が王子の妃を探しているというもの。港町は多くの外国人が出入りする。言語が違う人達が、同じ噂を口にしたら、その信憑性はさぞ高くなっただろう。その噂にわたしは次第に国名を入れることも忘れなかった。交易面で考えると、双方が結び付きたいと思うであろう国名を。


王家は侯爵家に言ったのだ、わたしは場合によっては側妃だと。それは、王家が外国との強い結び付きを考えていると示す言葉だったし、わたしなどそんな程度と見做していたからだ。


国名はどこも一夫多妻を許していない国。噂が実ればわたしは側妃から外れる。好都合だ。クライブが伯爵家の書類にある間違いを態と訂正しなかったように、わたしも結果がどう出るか分からないことを何か月も行い続けた。何もしなければ、どんな小さな成果もないのだから。


「侯爵家にいるわたしの侍女見習いの子が、最近殿下と仲が良かったクレア様を見掛けなくなったって手紙をくれたの。それに、侯爵家からはこのまま留学先で勉強を続けるようにって。どう思う?」

「大なり小なり何かはあっただろうね」

「探る術はないかしら?」

「待つしかない。王族同士の結婚が決まれば、この国の新聞にも載るだろうから」

「そうね。期待は持てると思う。わたしが殿下の卒業の場にいない方が良いという判断なのだから」

「けれどクレア嬢を見掛けなくなったというのはどういうことなんだろう」

「それが引っ掛かるのよね」

「まあ、僕らは粛々と出来ることを進めるしかない」


噂をばら撒く以外に、クライブ同様わたしも期間短縮で卒業を目指すことにしたのだった。いつ、自国へ帰ってくるよう言われるか分からなかったから。

そして市場を見て回っては、この世界に何が無いのか調べ続けた。簡単に出来て、生活が画期的に良くなるものを作れれば一攫千金も夢ではないと思いながら。


最近ではこの国には無かった布、前世でいうガーゼを利用して包帯を作った。作るといっても、丁寧に裂くというのが正解かもしれないけれど。


たまたま市場で見かけたガーゼ。柄もなくただ白い布ということで、外国からの物の割には人目に付くことなく片隅に置いてあった物だ。幸運にもわたし以外は誰も目を付けなかったので、なんと全て買い取ってしまった。だから今のところガーゼの包帯を卸せるのはわたしだけ。今後は試しにこれで体に優しい下着を作るのもありかもしれない。

兎に角、出来ることを進める、その先にクライブとの未来があるように。そんなことを思うわたしの隣でクライブもまた何かを考えているようだった。

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