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港近くのエリアなので、前世で言うところのクラムチャウダーのようなスープを出すお店が結構ある。お店によって特徴が違うので、お店選びも楽しみの一つ。


「今日はここにしてみよう」

クライブが選んだ店は、晴れている日は店の外でも食事が取れるところだった。

お昼のメニューは決まっていて、スープとバタートースト、それにその日の果物が付いてくる。カウンターでお金を払えば、トレイに載せられたそれらが手渡される。侯爵家での食事と比べたらとても質素な庶民の食事。でも、わたしはこの食事が好き。クライブと一緒に食べる食事は、あの頃と比べ物にならないくらい楽しくて美味しい。


「このお店もとっても美味しかった」

「未だに信じられないよ。リアがこういうお店での食事を躊躇わないなんて」

「いつも言っているでしょ。わたしはただのアイメリアだって。でも、クライブ、今から、とある貴族令嬢のアイメリアが話す内容を聞いてもらいたいの」

「ここで話せること?」


周囲を見渡す限り、学院の同級生を含め知っている顔はいない。それに、みんな友人や大切な人との時間を楽しんでいる。彼等からしたら、わたしとクライブは風景画に描かれている中にいる人。声は雑踏で聞き取れないものになるだろう。


それでも一応。

「うん、話せる。でも、天気が良いから、歩きながら話したい」

「分かった、じゃあ行こうか」

そう言って、クライブは手を差し出した。


伯爵家で常に周囲の人達の顔色を長い前髪の下から窺っていたクライブ。きっとわたしがどんなことを話すのか、勘付いているに違いない。その上で予想へ対する答え合わせの為、手を差し出したのだろう。だって、こんなことは初めてのことだもの。


この掌の上に、わたしの指をちょこんと乗せれば貴族がエスコートをする時の雰囲気になる。でも、この手を取ったら?それは、わたしの意思に変わる。


だからわたしは後者を選んだ。そしてクライブに問う、大切なことを。

「リボンの色に意味はある?」

「流石だね、リア」

「だって、あなたはヒントをくれていたもの。外国から来る船員の言葉を聞き取れるか確認しようって。深緑は彼等の国では人生を共にしたい人に贈るものに使う色だわ。良いの、その色を使ったリボンをわたしに贈って」

「狡いことをしたのは分かっている。君にヒントと逃げ道を与えていたんだから。ただのプレゼントとしてでも、僕の気持ちを理解した上で受け取ってもいいようにって」

「あなたはわたしの表情をとても気にしていたでしょ。最初は似合うかどうか気にしてくれているのだと思った。でも、途中からもしかしたらって考えると、あの表情や色々なことが繋がって」

「似合っていると思ったのは本当のこと。僕にはリボンの深緑色がリアにとても似合うって思えた。そして、その様はずっと隣で見ていたいって」

「わたしもクライブの隣でリボンをずっと着けていたい。この色なら、年を取っても大丈夫でしょう。だから、大切な話をしたかった…」

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