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ハルト、冒険者に合格す

 いや、あきらめるのはまだ早い。これは試験だ――それに、ギュスターブさんは三戦神の前で、正々堂々と戦うと誓った。 


 ならば、どこかに見えない盾を破り、攻略する方法があるはずだ。


 砂時計が気になるが確認する数秒ももったいない。


 どこだ……絶対防御の見えない盾の攻略方法は。ぼくはふたたび前に回って、ギュスターブさんの正面に回った。彼はにやにや笑いながらぼくを見ている。


「どうした、ハルト。もうあきらめたか?」


 今思いつく攻略法は一つしかない。


「やああっ!!」


 ぼくは斜め下段から攻める姿勢で駆け出した。

 だが、これはブラフだ。打ち込むと見せかけ、ギュスターブさんの十歩手前あたりで床を思いきり蹴り、空中高く跳躍した。


 ぼくは中空に孤を描き、真上から木剣の一撃をギュスターブさんの兜の左角に打ち込んだ。

 今度は木剣が弾かれない――このままいけるか!?


 カッ!!


 乾いた音が闘技場に響く。


 確かに兜の角に当った手応えがした。


「やった!!!」


 やっぱり、真上には見えない防御魔法を張り巡らせてなかったんだ!!


「何じゃと!?」


 やはり思った通り、見えない盾はギュスターブさんがいる周囲を円筒状に覆っているが、上にはふたのないビンのように盾がなくて無防備だったんだ。


 審査官は信じられない面持ちでぼくを見ていたが、砂時計を見た。

 ぼくもつられて見る。ちょうど最後のピンク色の砂粒が下に落ちた所だ。


「ガハハハハハ……やりおるのう、ハルト。よくわしの防御魔法の弱点を見破りおったわい!!」


「それじゃあ……」


「武技試験合格じゃい。ハルト・スタージョンを我が『黄昏の画廊』の冒険者として迎えようではないか!」


「やったぁ!!」


 ぼくは飛びあがって小躍りした。


「しかし、大したもんじゃのう。よく最後の最後まで、あきらめずに攻めおったわい――わしはお前が気に入ったぞ!!」


 ギュスターブさんがぼくの頭を撫でまわした。


「ちょっ……よしてくださいよぉ」


「お前さんはスタージョン流武闘士といったか?」


「はい、ぼくはグリ高原のグラ村から来た武闘士です」


「ほう……白い牙山脈の麓にある、グリ高原か……たしかあの地域には高原の戦士ハイランダーの一族がいたな……ハルトと言ったな。お前さんはハイランダーの戦士と関係があるのか?」


「ハイランダーの戦士を御存じなのですか!!」


「おう、知らいでか。海のヴァイキング戦士団と高原のハイランダー戦士団は、かつて北域の二大戦士団として近隣諸国から恐れられたもんじゃい」


「でも、今から百年以上前に滅んだと伝えられてます」


「もしかして、お前さんはハイランダー戦士団の末裔かい?」


 ギュスターブさんがぼくをジロリと見た。


「いえ、ちがいますよ。ぼくの両親はグリ高原に二十年前に旅の途中に通りかかって、グラ村が山賊に襲われたとき、父が山賊を撃退したことをきっかけにグラ村に住むようになったんです」


「ほう、旅の武闘士じゃったんかい。すると、ハルトの先祖はハイランダーとは関係ないというのか?」


「ええ、でもハイランダーの戦士の話は地元の村で聞いています……」


 カランッ!!


 そのとき、ギュスターブさんが被る兜の、左の角が半ばで折れてカタリと床に落ちた。


「ん?」


 ギュスターブさんがいぶかしげに床を見て、角が落ちたことに気が付いた。


「なにぃぃぃ!? わしの自慢の兜の角があぁぁぁぁ!?」


「あっ……ごめんなさい。どうやら衝撃が強かったみたいで……」


「いや、まさか、あのくらいの衝撃で壊れるはずはないんじゃが……この角はそこらの牛の角よりも、かなり固い代物だったんじゃがな……」


 ギュスターブさんがいぶかしげに兜と角を交互に見ている。


「そんな大事な兜だったのに壊してしまって……ごめんなさい、弁償しますよ」


「いやいや、気にせんでいい。このままでいいんじゃい。これはわしの慢心をいさめる為にも、この片角の兜でいこうではないか」


「えっ!? でも……」


「いいんじゃい、この方がカッコよいではないか……ん?」


 ギュスターブさんの首が右に傾いていった。


「やっぱり、兜は両方のバランスが大事なんですよ」


「そうか……しかし、弱ったのう、この兜を作った武器職人に、今は会いたくないんじゃが……あの時、盛大にやらかしたもんでなあ……」


 なにか事情がありそうだ。


「じゃあ、ぼくが修理の御使いをして持っていきますよ」


「そうかい、すまんのう……鍛冶屋小路にあるアシモフ爺さんの店へ頼む」


「アシモフさんですね」


「気難しい爺さんでのう……わしはあの爺さんだけは苦手なんじゃい!!」


 ギュスターブさんが大きな身体を縮めた。


「そうなんですか……それにしても牛の角にしては、随分と大きな角ですねえ」


「そいつは只の牛の角じゃないぜ」


 背後から声がした。見ると、酔っ払って眠っていた審査官のコンラードさんだ。ナスビのように丸いアゴに無精髭を生やした戦士だ。


「コンラードさんですね」


「ああ、みっともねえ所を見せちまったなぁ……ギュスターブの差し入れの酒をつい、飲み過ぎちまった。だけど、恐ろしいほどの凄まじいマナを感じて思わず起きてしまったよぉ」


「やっと目覚めたかい、コンラードめ」


「しかし、ギュスターブよぉ……お前さん随分と意地悪だねえ」


「意地悪?」


 ギュスターブさんを見ると目をそらして口笛を吹いた。



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