表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/63

てやんでい、炎の舌のエリーゼ

「わあぁぁ!! 小妖精ピクシーなの!!!」


 ミュリエルが両手で口をおさえ、興奮して小妖精を見つめた。


「これがピクシー……本当にいたんだ」


 ぼくも昔話や絵本でしか見た事がなかった。


 実在するとは両親に聞いていたが、実際に見たことのある人は極端に少ない種族だ。


「私……子供のころ、妖精さんに逢いたくて、窓枠のでっぱりにミルクを入れた小瓶をおいていたのよ……でも、妖精は現れないし、ミルクを腐らせてママに怒られるし……でも、本物の妖精さんを見られて感動したわぁ……」


 ミュリエルがうるうると瞳を潤ませて感動している。


 彼女ほどではないが、かくいうぼくも感動している。


「おい、お前ら! ごちゃごちゃ言ってないで、この猛獣から助けろぉ!!」


 ピクシーがわめき散らし、ミュリエルは慌ててウィリアムに解放するように頼んだ。


「まったく……ひでえ目にあった。お前ら、猛獣はちゃんとくさりにつないでおけよな!」


「ごめんなさい……でも、ウィリアムは猛獣じゃなくて、魔貂という使い魔よ」


「てやんでいっ! わっちのサイズからすりゃ、お前達だって、猛獣のたぐいだ!」


 ピクシーが口を大にして叫び、ミュリエルがぼくの背中に隠れる。


「うぅぅ……この妖精さん、怖いよぉぉ……」


「大丈夫だよ、ミュリエル……ぼくがついてる」


「うん……頼りにしてるの……そうだ……もしかして、私達が森で迷ったのは妖精さんの仕業だったんじゃない?」


 ピクシーが口のをあげ、


「おっ……察しがいいな、小娘」


「昔話で婆やに聞いたことがあるの……『ピクシーのまどわし』だわ」


 婆やって……ミュリエルはいいとこの娘さんなのかな?


「なんだい、それは?」


「さっき小鹿が草原で走ってつくった輪があったでしょ?」


「うん……なんだか不自然な輪だったなあ……」


「あれはピクシーが馬や鹿を操って、ぐるぐると輪を描いて走らせて作る妖精の輪で、『ガリトラップ』というのよ」


「ガリトラップ?」


「妖精の輪に入った人間は、輪の中にとらわれてしまうの」


「なるほど……それで、ぼくとミュリエルは妖精の輪の中から出られなかったのか……」


「妖精の輪の中で、私達は森の中を彷徨さまよう幻覚を見せられる……けど、実際は、私達は同じ場所を足踏みしていただけなの」


「なるほど……」


「ふう……今頃思い出すなんて、私ってまだまだ魔法使いとしてダメねえ……」


「いや、そんな事はないよ……きみの使い魔が術者を捕まえたんだし」


 魔法使い見習いは嬉しげに、


「えへ……そう? ウィリーのお手柄ね。ウィリーは輪の中に入る前に、森の中に狩りに出かけていて、幻覚魔法にかからず、ピクシーを捕まえたんだわ」


「なぁ~るほど……」


「ピクシーさん、もうイタズラしちゃダメよ……」


「てやんでいっ!! この森は妖精族の縄張りだ!! 人間が勝手に入ってくんなぁ!!!」


「きゃあぁぁ……やっぱり、この妖精さん怖いよぉ……」


 ミュリエルがぼくの背中に隠れた。


「ギュゥギュ!」


 ウィリアムがご主人様の危機に威嚇いかくの吠え声をあげた。


「ぎゃあぁ!! 白い悪魔だ!!! そのイタチをこっちに向けんなぁ!!!」


「まあまあ……妖精さん、この子はイタチじゃなくて、テンだよ」


「イタチだろうとテンだろうと、どっちだっていい!! 猛獣は鎖につなげ!!!」


「ミュリエル、ウィリアムを大人しくさせて……この妖精さんと話をしよう」


「うん……ウィリー、こっちへ……」


「フィヤ!」


 魔貂は御主人の肩の上に飛びのった。


「ぼくはハルト……ハルト・スタージョンといって旅を始めた武闘士なんだ」


「私は魔法使い見習いのミュリエル……ミュリエル・ボーモントよ。この子は魔貂のウィリアムっていうの」


「フィヤ!」


 ウィリアムが右手をシュタッと上にあげた。


 ピクシーはまだふくれっ面だが、四枚翅をはためかして、ぼくらの顔あたりに飛んできた。


「ふん……わっちはエリーゼだ……エリーゼ・エリスン……またの名を『ほのおの舌のエリーゼ』ってんだ」


「炎の舌……毒舌ってことだね……」


「う~~ん……たしかに言い得て妙なの……」


 ぼくらが感心していると、炎の舌のエリーゼはジト目で、


「単刀直入に聞くぞ……お前達はピクシー狩りに来たのか?」


「えっ!? 違うよ……それよりピクシー狩りって……そんな悪い人間がいたんだ……」


「ああ……だから、わっち達ピクシー族は人間族との交流を断ったんだ」


 そんな歴史があったんだ……


「もっとも、同朋たちを、誘拐した悪党どもは、わっちたちが見つけだして、魔法で思いきり懲らしめてやって、同朋を助けたけどな」


「そうだったの……人間族が迷惑をかけて、ごめんなさい……」


「……別にお前があやまらなくていいよ」


「私たちはタチナオリっていう薬草を取りに来ただけなの……決して、小妖精族ピクシーに危害をあたえないわ」


「タチナオリねえ……妖精の泉近くに生えていたな……」


「本当!!」


 ミュリエルが興奮して両手をぐっとにぎる。


「だけど、妖精の泉は結界けっかい魔法で人間を寄せつけないようにしてある」


「結界魔法……さっきのガリトラップみたいなものだね」


「エリーゼさん……なんとかタチナオリを取らせてくれないかしら」


 ピクシーは腕組みをして、目をつむり、黙っていた。


 が、片目をあけ、


「その件は長老に相談してやってもいいぞ」


「本当!?」


「ただし……覚悟しとけよ」


「え? ……なにかしら」


「……厄介なことを頼まれるかもしれねえぞ」


 ぼくとミュリエルは互いに目を合わせた。


 ここまで読んでくれてありがとうございます!


 おもしろいなぁ……と思ったら、


 下にある☆☆☆☆☆を押してください。


 おもしろかったら星5つ、そうでもなかったら星1つ押してみてね。


 これを読んで思った感想など、気軽に書いてください。


 できればブックマークしていただけるとうれしいなあ。


 応援よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ