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森の中、迷ったら大変

 ミュリエルが草むらに転がっていた方円形の容器をひろいあげた。


 ゴブリンの襲撃で落とした方位磁石のようだ。


 地図を地面にひろげて、その真ん中に方位磁石を置いて、呪文を唱えた。


 すると、針の先がほのかに光り出し、グルグルと回り出した。


「これはなにかの魔法なのかい?」


「ええ……方位磁石は北の方角を示すけど、地図で行きたい場所を示すようにする方位魔法なの」


「へえ……便利だなあ……森の中で迷わなくてすむね」


「はいなの」


 ミュリエルが少し得意そうな顔をする。


 地図を見れば『妖精の泉』と描かれた場所に赤いマークがあり、ほのかに発光している。


 その上あたりに『人食いの森』と書かれている。


 ぼくはミュリエルが右手にもつ方位磁石の示す方向へと進んだ。


 茂みや枝が行く手をさえぎると、ぼくが長剣で切り裂いて道をつくった。


 一応、迷ったときの目印に木の枝に長い草葉をまきつけておく。


 倒木をまたぎ、樹上のフクロリスやテバタザルが逃げていくのを見送り、妖精の泉へと進んだ。


 途中で開けた地帯があり、草に覆われているが、タチナオリは見つからない。


「あら……これは何かしら?」


 草原に直径20メートルぐらいの草を踏みつけた跡が見えた。


「土に小鹿こじかひづめがある……小鹿がぐるぐると走り回って遊んでいたのかな?」


「それにしては、やけにまん丸な輪っかなの……どこかで聞いたような……」


 ぼくらは不思議に思ったけど、草の輪をまたいで森を進んだ。


 一時間ほども歩いている内に、前に見たような木を見た。


「変ねえ……そろそろ『妖精の泉』につくはずなのに……」


 ミュリエルが汗をかいて、息を切らしている。


「大丈夫かい? おんぶしてあげようか?」


「えっ!? おんぶ……そんなの恥ずかしいわ……」


「いいからいいから、遠慮しないで……」


 ぼくがしゃがんで用意するけど、ミュリエルがもじもじしているので、なんとなく横を見ると、既視感デジャヴーを感じた。


「あれ……この枝にぼくのまきつけた草葉があるぞ」


「えっ!?」


「迷ってしまったのかな?」


「そんな……方位魔法の力で迷わないはずだけど……」


 ミュリエルが不安げにぼくを見つめる。


「……こういう時は少し休もう……疲れて道を踏み外したからかもしれないし」


「……そうね」


 空を見上げると太陽が中天にかかっていた。


「もうお昼ごろだ……昼食にしようよ」


 ちょうどお腹の虫がぐぅ~~と鳴いた。


 ミュリエルはくすりと笑った。


「うん……」


 ぼくは旅行ザックからグリッソ兄さんから貰ったセビロウサギの干し肉と、シュマリおばさんから貰ったピリカラスモモ、高山ヤギの胃袋で作った革水筒かわすいとうを出して食べる。


 ミュリエルは乾パンと干し女神リンゴだ。


「ミュリエル、水筒は?」


「あっ……さっきのゴブリン騒ぎで落しちゃったみたい……」


「じゃあ、これを呑んで」


 ぼくが革水筒を差し出すと、彼女は「えっ!?」と頬を赤らめて驚いた。


「うん……私、はじめてなの……その……いや、そういう意味じゃなくてねっ!!」


 目をグルグルと回した魔法使い見習いは、意を決したように革水筒の注ぎ口から水を飲み始めた。


「?」


 街の人はヤギの革水筒って、初めて見るのかな?


「そういえば、きみの使い魔……ウィリアムの姿が見えないねえ……」


「ああ……ウィリーはちゃんとえさを用意しているんだけど、こういう場所だと、地ネズミや野鳥を狩って食べるの……野生の血が騒ぐのかしら」


「ぼくの実家でも穀物蔵にネズミが入らないように猫を飼っているけど、たまにネズミや小鳥の死骸しがいを枕元にもってきて、困ったことがあったなあ……」


「ウィリーもそうなの……ご主人さまが狩りをしないのを心配して、持ってきてくれるらしいんだけど……やめて欲しいの」


 ミュリエルがげんなりした表情になる。


 食事中に話すことではなかったなあ…… 


「あっ!?」


「どうしたの?」


「お師匠さまに森で迷ったときに有効なおまじないを思い出したわ!」


「へえ……それってどんな呪文?」


「呪文じゃないの……上着を裏返しにして着るのよ」


「へ? 裏返し?」


 ともかく二人でやってみる事にした。


 上着を脱いで、裏返しにし、縫い目のある裏地を表にして着直した。


 う~~ん……なんだかバカみたいで恥ずかしい……


「これって、どういうお呪いなんだい?」


「旅人が道に迷うのは妖精のしわざだっていうわ。妖精はイタズラ好きで、旅人が道に迷って疲れこむ様子を物陰から見て楽しむんですって」


「妖精のしわざかぁ……」


「そういえば、ハルトくん……『妖精の泉』って、本当に妖精がいるのかしら?」


「ああ……グラ村の老人たちの話では、昔はこの辺にも妖精がいたというけど、今はいないって言っていたなあ……大昔、妖精族と人間族は交流があったけど、何かトラブルがあって、妖精族は消えてしまったって聞いたよ」


「そうなのね……残念だわ……」


 ミュリエルがしょぼんと肩を落とした。


 そのとき、周囲の景色がゆらゆらと陽炎かげろうのようにゆがんだ。


 そして、景色が変わり、前にいた草原になった。


 ぼくらの周囲に小鹿が走り回った草の輪が見える。


「これは一体……」


「幻術で惑わされていたのだわ!!」


「もしかして、上着を裏返しにしたから、本当にお呪いが効いたのかな?」


「そうだ、ウィリーがいないわ!!」


「探さないと……」


 噂をすれば影。


 茂みをかき分けて白い小動物がこちらにやって来るのが見えた。


 何かをくわえているようだ。


「あっ……ウィリーったら、またネズミかなんかをとってきて……」


 ウィリアムは「ほめて、ほめて」といった表情をしている。


 そして口になにか半透明の羽根のようなものをくわえている。


「こらぁぁ……放せ、ケダモノぉぉ!!」


「えっ!?」


 獲物がしゃべりだし、ぼくとミュリエルが驚きの声を出した。


 よく見るとネズミじゃなくて20センチほどの小さな人間だった。


 草色の服をきて、背中に昆虫のような半透明の四枚翅よんまいばねがついていた。


 髪の毛は赤毛で、青空色の大きな瞳の少女のようだ。


 ここまで読んでくれてありがとうございます!


 題名を変えました。


 まだまだ変える予定です。


 ところで、話の先が気になるなぁ……と思ったら、


 下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


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