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白熱、水炎勝負!

 グロックの奥義・黒炎龍灼熱焦こくえんりゅうしゃくねつしょうが渦を描いてぼくに向かって迫ってきた。


 黒い炎の魔力波に包まれたら、全身を焼かれて消滅してしまうだろう。


 周囲はシグマの炎環が囲んで逃げ場のない、まさに背水の陣だ。


 ぼくは気を静め、深呼吸して体内のマナぢからをめぐらせ雷鳴神剣の刀身におくった。


「そうはいくか……みずノ武技・流水乱襲鞭ストリーム・ウィップ!!」


 長剣に集まったマナに引かれるように、大気中の水分が剣尖に集まりはじめ、刀身から水滴がしたたり落ちる。


「岩をも穿うが水滴すいてきよ……水竜すいりゅうの化身となって放たれん……みずノ武技・流水乱襲鞭ストリーム・ウィップ!!」


 刀身から高圧の水流が生じ、一条のむちと化して迫る黒き炎の龍に放水された。


 流水鞭りゅうすいべんは黒炎の魔力波に螺旋状に巻き、大量の水蒸気をあげて水と炎の魔力がぶつかりあった。


 拮抗きっこうしていた水炎は、やがて相殺そうさいされ、水竜と炎龍の魔力波は消滅した。


 周囲に飛散した水滴により、シグマの作った魔力の炎環も消え去った。


 夕闇を照らしていた炎環が消え、周囲は篝火だけの照明となって、急に暗くなったように感じる。


「なにぃぃ……俺の奥義が破れただとぉ!!」


「私の炎環までが消滅するとは……」


 驚愕するグロックとシグマ。


 ぼくは雷鳴神剣をひっさげグロックに迫った。


 この勢いで奴を倒せば『黒い蠍』は頭を失った蛇も同然に瓦解するはずだ。


 大上段からソール・ブレイドをグロックに叩きこむ。


 ガキィィン!!!


 金属音が響き、雷鳴神剣がグロスメッサーによって防がれた。


「やるじゃねえか、ハルトォ!!」 


「くっ……さすが犯罪クランの支部長なだけあるね!!」


 鍔競り合いとなり、脂汗を流して必死で受けた。


 視界にちらりと魔道士シグマが映り、部下に何か指示して、二名ほど谷へ向かって走らせるのが見えた。


 牢屋の人質を連れてこさせるつもりかもしれない。


「よそ見している暇はねえぞ……剣技じゃ負けねえぜ!!」


 ぼくが両手で抑え込むが、グロックは右手を離し、左手だけで受け止める。


 膂力りょりょくの違いを見せつける気か? 


 いや、盗賊頭の右手の先が黒く輝きだし、手の平から黒炎弾がぼくの腹めがけて撃ちだされた。


 たまらず横に飛んで直撃をさける。


 外れた黒炎弾がギャラリーの盗賊に当たったようで悲鳴があがる。 


「考えなしに撃ったら仲間に当たっちゃうよ?」


「うるせい、避けねえ方が悪い!!」


「ひどいボスだね……でも、ここで遊んでいる暇はないんだ」


「なんだとぉ!?」


 ぼくは剣の切先をグロックに向け、魔力を少し流し、眼をつむった。


雷閃光ライニッシュ!!」


「ぐわぁぁぁっ!!」


 刀身が急激に輝き、一瞬だけ周囲が真昼のように明るくなった。


 まともに閃光を浴びたグロックが眼を抑える。 少量の魔力を使って雷鳴神剣の刀身を光らせる眩戯めくらましの小技だ。


 これで少しは時間を稼げる。


 ぼくは動揺する盗賊たちを蹴散らし、谷の奥へ向けて走った。


 牢獄のミュリエルやコグスウェルさんを助けにいったエリーゼとウィリアムに助勢に行かなくては。


「ええい、何をしている……お前達もあの小僧を仕留めろ!!」


「へ、へい!!」


 シグマの号令で盗賊たちが山刀、鉈、斧、棍棒などを持った盗賊たちがぼくにむかって押し寄せてくる。


「おりゃあああ!!」


「死ねやぁぁ!!」


 ぼくは押し寄せてくる凶賊たちに雷鳴神剣ソール・ブレイドを前にかざした。


雷閃光ライニッシュ!」


 刀身が雷光のように輝きをはなった。


「うわっ、まぶしい!!」


 雷鳴神剣が夕闇に輝き、闇になれてきた盗賊たちの視界をふさぐ。 


 だが、視界を失いたじろぐ仲間を押しのけ第二陣が襲い来る。


 ぼくは雷鳴神剣ソール・ブレイドに魔力を流し、長剣を右横側に水平にかたむけた。 


「山河を渡りゆく風よ……大気を揺るがす魔風竜となりて力を貸し与えん……」


 左足を軸にして全身で一回転した。


 剣から生じた魔力の斬撃が回転し、大気を流動させ、つむじ風となる。


かぜノ武技・烈風竜巻旋サイクロン・トルネード!!」


 刀身から生じた剣風は渦を巻いて、竜巻となって進んだ。


 進撃方向にやってきた『黒い蠍』の盗賊たちを巻きこみ、空中に巻き上げ回転させた。


 竜巻が消えてばらばらと賊徒たちが地上に落ちる。


 ぼくが谷に向かって走ると、巨大な影が行く手をふさいだ。


黒い蠍との戦いは十章くらいの予定でしたが、長くなってしまったので、冒険者ギルド編を改め、水牛平原編に変えました。

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