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少女の悲鳴、しょっぱなから事件

 なだらかな谷沿いの道を通り、高原鹿こうげんじかに見送られ、ぼくはゼグナン市へと続く街道を目指した。


 山道のわきにある茂みから山魔毒蛇やままどくへびが顔をだした。


 大人の腕ぐらいの長さの蛇だが、れっきとした魔物で全身を麻痺させる毒をもつ。


 が、ぼくに近づくと慌てて茂みに戻っていった。


 ぼくは胸元の合わせ目から剣の女神フレイヤ様の護符をだした。


 フレイヤ剣神教会の神官が呪力をこめた護符には、小物の魔獣やモンスターを寄せ付けない聖なる力を宿しているんだ。


 森林の間から『赤い根街道』が見えた。


「あれが赤い根街道……まるで、赤茶色の大蛇だいじゃが身をくねらせているみたいだな……」


 赤茶けたレンガが敷かれているので遠目からもよくわかる。


 山道や田舎道とちがって、馬車ばしゃ鹿車ろくしゃなどが頻繁ひんぱんに通れるよう整備されている。


 雨や雪でも泥濘ぬかるみにならないから便利そうだ。


「きゃああああああ!!」


 とうとつに、きぬくような女性の悲鳴が聞こえた。


 驚いたけど、放ってはおけない。


 ぼくは声のした右側の茂みにはいり、ヤブガラミをかきわけ、暗い森の中へと進んだ。


 やがて樹間から陽光が見えた。


 そこを突き進むと大広間のような空間がある。


 岩場があり、樹木の根っこにおおわれているが、水が湧きたっている。



 山の水源のひとつだろう。


 小川の近くに、革と毛皮の服をまとった子供ぐらいの背丈の姿が三つ見えた。


 手になたや短剣などの武器を持っている。


 その背中から見える頭や手足の色は濃緑色だ。


 人間を襲って金目のものや所持品、衣服を奪う、森の簒奪者さんだつしゃだ。


「あれは……邪妖精族ゴブリン!!」


 ゴブリンが人間の子供を取り囲んでいた。


 ぼくと同じくらいか、年下の女の子だ。


 白くて大きなひさし付き帽子をかぶり、白い道服を着て地面に座り込んでいる。


 ごつごつした枝先の杖を持って、がくがくと震えていた。


「待て!!」


 ぼくは腰の長剣をひきぬき、正眼に構えた。


 邪妖精族たちがいっせいにふりむいた。


 赤く輝く目が憎悪にくるったようにぼくを見た。


 そのうちの二匹が雄叫びをあげてぼくに飛びかかってきた。


「ゴブルルル……」


「ゲルビヒヒ!!」


 棍棒をもったゴブリンが飛びあがって、ぼくの脳天めがけて武器を殴りつけてきた。


 ぼくは半身になって避けると、ゴブリンは棍棒を大地に打ち付けてしまい、手がしびれたようだ。


 そこを横薙よこなぎに両断した。


「グヒギャァ!!」


 左側の足元に殺気。


 低い草にまぎれてもう一匹のゴブリンが鉈でぼくの足首を斬りつけてきた。


 小柄な体躯からだをつかった戦法だ。


 だが、鉈刃なたばはむなしく空を切る。


「とうっ!!」


 驚いて辺りを見回す邪妖精。


 その顔面に影がうつる。


 ぼくは宙を飛んで鉈刃をさけたのだ。


 その勢いで長剣を切り下げ、ゴブリンの右肩口から左腰骨まで切り裂いた。


「ギャボォォッ!!」


 邪妖精族二体の姿がたおれ、黒煙こくえんをあげて粉々になった。


 そのあとに赤く光る魔石ませきが残った。


 野性の動物やモンスターとちがって、魔王が作りだしたという邪妖精は素材となった鉱石になってしまうらしい。


「ゲビルルル……」


 残った最後のゴブリンが女の子の首に短剣をつけつけた。


「うっ……人質なんて卑怯ひきょうだぞ!!」


「ビヒャルルル!!」


 そのとき、白服の女の子のおなかのあたりがモゴモゴとうごめいた。


 ぼくもゴブリンも驚いて目が点になる。


 すると、服の合わせから白くて細長いものが飛び出してきた。


「ギュゥギュ!」


 体長40cmくらいの細長い生き物……イタチかな?


「ウィリー!!」


 つぶらな瞳で可愛い顔をしているが、ゴブリンの顔面にとびついて鷲鼻わしばなを思いきりかみついた。


「ゲヒィィ!!」


 ゴブリンが涙目で地面に転がるが、白イタチはしつこくかみ続ける。


 その間にぼくは走り寄り、邪妖精の心臓部あたりを剣先で突き刺した。


「ギャボォォォ!!」


 小怪物は悲鳴をあげて黒煙をあげ、粉々になって魔石にもどった。


 すると、白イタチは女の子にむかって走りより、白帽子の女の子に抱きついた。


「ありがとう、ウィリー……それにあなたも……」


 女の子がぼくにおそるおそる顔を向けた。


 エメラルドのような碧眼へきがんにハチミツのような金髪をひじのあたりまで伸ばした可愛らしい子だ。


 まだ怖くて震えているようだ。


 安心させるように、にっこりと笑顔をみせた。


「ぼくはハルト……ハルト・スタージョン……旅をはじめたばかりの武闘士だよ」


 すると女の子もつられたように笑顔を見せた。


「ありがとうございます……私はミュリエルといいます……ミュリエル・ボーモント……魔法使いの見習いなの」


「フィヤフィヤ!」


「その白いイタチくんは?」


「あっ、似ているけど、イタチじゃありません……魔貂まてんのウィリアムといって、私の使い魔なの」


 うれしそうに魔貂のウィリアムが「フィヤ!」と鳴いた。


 ここまで読んでくれてありがとうございます!


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