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我が儘な私は、運命にさえ抗い我が儘を貫くお姫様~私は少し遠慮気味な王子様が一番大好きです~

作者: 来留美

「どうして、また女の子と二人で話をしているの?」


 私は急ぎ足で彼の元へ向かう。

 私の彼なのに。

 許せないわ。


「ちょっと、二人で話をするのは止めてもらえるかしら?」


 私はプンプンと怒りながら女の子に言った。


「あっ、申し訳ございません。カレンお嬢様」

「カレン。彼女は悪くないよ。僕を部屋へ、案内してくれていただけなんだからね」


 彼はメイドである彼女を庇う。

 そんなことをされると、私がもっと怒ることを、彼は知らないのかしら?


「それなら私が案内をするわ。だから、あなたは下がっていいわよ」


 私はメイドに下がるように顎で指示をした。


「しかし、カレンお嬢様にそんなことを任せてしまっては、私が執事様に叱られます」

「大丈夫よ。私が言っておくからね」

「僕も執事には言っておくよ」


「それはどうか、お止め下さい。もっと叱られますので」


 私と彼の言葉に、メイドは怯えた顔で返答した。


「そうだね。執事は仕事には厳しい人だからね。でも君は、他の仕事に行ってもいいよ。後は、カレンがするからね。執事には黙っていればいいよ」

「あっ、はい、承知いたしました。それではカレンお嬢様、ハル王子様を薔薇の部屋へお願い致します」

「分かったわ」


 そして私と彼は歩き出す。

 私はこの国の国王の娘で、このお城のお姫様。

 私はお気に入りの薄いピンク色のドレスを着て、二の腕辺りまである長い金髪は、サラサラで自慢なの。


 そして彼は、この国の隣国の王子である、ハルお兄様。

 ハルお兄様は軍服を綺麗に着こなして、美しい短髪の黒髪と高い身長に、笑えばえくぼが印象的なの。

 そんなハルお兄様と私は、幼い頃からの知り合いなの。


 国王の子供という共通点で仲良くなったわ。

 私達は同じ境遇だったから、お互いの気持ちが言わなくても分かるほどなのよ。


 そんなハルお兄様と結婚をしたいほど、私は大好きなのに、ハルお兄様は私を妹のように扱うの。

 ハルお兄様は私の二つ年上だけど、兄妹なんかじゃないわ。


 ハルお兄様は優しいから、メイドにだって優しくするの。

 メイドはそんな格好いいハルお兄様に、優しくされると勘違いをするんだから。

 私のハルお兄様なのに。


「ハルお兄様、今日はどうしたの?」

「それが、執事に呼ばれたんだよ」

「執事? 私は何も聞いていないわよ?」

「カレンには関係がないんだよ」

「でも、執事は私の執事なのよ?」

「執事だって、たまにはカレンから離れたいんじゃないのかな?」

「そんなことはないわ。だって私は、執事に怒られたくないから、イイコにしているのよ?」

「そうだね。カレンはイイコだね」


 ハルお兄様は私の頭をヨシヨシと撫でる。

 子供扱いされているようでムッとするけれど、撫でられるのは嬉しいから、()めないの。


「執事との話が終わったら、カレンの部屋へ行くよ」

「本当? それじゃあ、リンと一緒に待っているわね」

「うん」


 私はハルお兄様を薔薇の部屋へ案内すると、自室へ戻った。

 私の部屋には、リンという名のリスがいるの。

 私の可愛い家族よ。

 ペットなんかじゃないからね。


「ねぇ、リン。ハルお兄様は、いつになったら私を女の子として見てくれるのかしらね?」


 リンは首をかしげながら私を見ている。

 そんな仕草も可愛いリンを、私は掌に乗っけた。

 リンは私の掌の上でじっとしている。

 リンの頭を撫でると、リンは目を閉じて気持ち良さそうにしていた。



「カレン」


 私はハルお兄様に呼ばれて目を開けた。

 いつの間にか、ソファで眠っていたみたい。

 ハルお兄様の顔を見ると、どこか寂しそうな顔をしていた。


「ハルお兄様?」

「カレン、ごめんね。僕はこれ以上、君を守れないんだよ」

「どうしたの? 何を言っているの?」

「カレン、君は隣の国の王子と、婚約しなければいけなくなったんだよ」

「私が婚約? だって私はまだ、十六歳だよ?」

「だから、婚約なんだよ。カレンにはまだ結婚は早いが、隣の国の王子が、カレンを手元に置いておきたいと言って、意見を曲げなかったんだよ」

「嫌よ!」

「カレンには決める権利はないんだよ」

「そんな言い方ってないわ。私の婚約なのよ?」


 ハルお兄様は、初めて私に怒った顔を見せている。

 我が儘を言う私に、今から説教をしそうな顔で。


「昔から、言っているよね? 僕やカレンは国の為に、何かを犠牲にしなくてはならない時が来るんだってね」

「それが今なの? 私は好きでもない人と婚約をしなきゃいけないの?」

「カレン、僕の気持ちも分かってよ。僕だってカレンには幸せになってほしいよ。でも僕には、、、」


 ハルお兄様は怒った顔から唇を噛みしめ、悔しそうな顔になった。

 どうしてそんな顔をするの?

 そんな顔をするなら守ってよ。


「私を守ってくれないハルお兄様なんて嫌いよ。私の部屋から出ていってよ」

「カレン、、、」


 ハルお兄様は、何か言いたそうにしながらも、部屋を出ていった。

 カレンは渡さないとか言ってくれないの?

 でも、私が他の人と婚約しても、ハルお兄様には関係ないものね。


 我が儘なお嬢様がいなくなるから嬉しいの?

 私がいなければ、色んな女の子と仲良くできるものね。

 私がいなければ、ハルお兄様は自由なのよね?





「カレン、話がしたいんだ」


 次の日の朝、ハルお兄様は、私の部屋のドアをノックして言った。

 私は何も返事はしなかった。


 ハルお兄様と話をしても、婚約の話はなくならないもの。

 私には決める権利なんてないのなら、ハルお兄様と話す必要もないわ。


「カレン。お願いだから、僕ともう一度だけ話をしてくれないかな?」


 ハルお兄様はそう言って、私がドアを開けるまでここで待っていると言った。

 そして私がドアに近付くと、ハルお兄様がドアの前にいる気配がした。


 少しすると、ドアの前で話し声がした。

 そしてすぐにノックが聞こえ、執事が入ってもいいのか訊いてきた。


 私は執事なら良いと言ってドアを開ける。

 執事の後ろで、疲れた表情のハルお兄様がいた。

 心配にはなったけれど、ハルお兄様とは話をしたくはない。


「カレンお嬢様、どうかハル王子をお許し下さい」

「許す?」

「ハル王子がカレンお嬢様をお守りしないはずはありません。ハル王子はできることはしたのですよ?」

「執事? ハルお兄様は何もできなかったのでしょう?」

「いいえ。ハル王子は、カレンお嬢様の結婚の日を未定にして、婚約という形をとったのですよ?」

「未定? でも私は婚約をするのよ?」

「カレンお嬢様は婚約ですが、ハル王子は結婚をするのです」

「えっ、何よそれ?」

「ハル王子は、隣の国の王子の妹である、お嬢様と結婚をするのです」


 ハルお兄様は私よりも先に結婚をするの?

 どうしてそこまで私の為に?


「今回だけではありませんよ。カレンお嬢様が幼い頃から、ハル王子はお守りしていたのですよ?」

「私はそんなこと知らないわ」

「それはそうですよ。ハル王子は、カレンお嬢様には何一つとして、口にすることはなかったのですから」

「どうしてハルお兄様は教えてくれなかったの?」

「それは、ハル王子は自分の立場を分かっていたからです」

「立場?」

「カレンお嬢様はいつか、この大きな国を守る女王となられるお方です。そのお方の隣は、ハル王子の場所ではないことを分かっているのです」

「何よそれ? どうしてハルお兄様が決めるの? どうして皆は勝手に決めるの?」

「それが自分の大切な国の為だからですよ」


 何が国の為よ。

 国の為じゃないわ。

 隣の国の国王の為でしょう?

 この国の国王の為でしょう?


 国の為じゃないわ。

 これは、自分の欲の為よ。

 国を大きくしたい。

 国の民を従わせたい。


 国の全てを自分のモノにしたい。

 ただそれだけよ。


「執事、ハルお兄様を部屋に入れて。二人で話をしたいわ」

「はい。ハル王子をお呼び致しますね」


 そしてハルお兄様が部屋へ入ってきた。


「全てを聞いたわ。ハルお兄様は私を守ってくれていたのよね?」

「そうだよ」

「でも今回は守れなかったのよね?」

「うん。僕の精一杯は、カレンを結婚させるのではなく婚約にして、結婚の日を未定にすることしかできなかったんだ。カレン、ごめんな」

「ハルお兄様はそれでいいの?」

「よくないよ。僕はカレンを守れなかったことを、一生後悔するんだと思うよ」

「私のことじゃないの。ハルお兄様は本当に結婚してもいいの?」

「僕のことはいいんだよ」


 ハルお兄様は、自分のことは考えていないのね。

 私のこととなると、あんなに辛そうなのに、自分のことは何も感じていないみたいね。


「ハルお兄様が結婚なんて、私は嫌よ」

「でも、そうすればカレンの結婚の日までに、対策を練ることができるんだ」

「私は好きな人と結婚がしたいのよ?」

「うん。だからそれを阻止しようと、僕が結婚をして、、、」

「私の結婚したい相手が結婚をしてしまったら、婚約破棄になっても、私は嬉しくなんかないわ。意味は分かるでしょう?」

「カレン、、、僕達は、、、カレンが幸せならそれでいいんだよ」


 ハルお兄様は私の話を聞いていたの?

 私、言ったわよね?

 ハルお兄様と結婚をしたいと。


 戸惑っているの?

 迷惑だったの?

 私とは結婚をしたくはないの?


「今夜、この部屋にもう一度だけ来てもいいかな?」

「今夜?」

「今夜が最後だから、、、」


 ハルお兄様は何を考えているの?

 最後ってどういう意味なの?

 小さな頃から一緒にいるのに、ハルお兄様の気持ちが分からないわ。


 でもよく考えてみれば、私はハルお兄様の気持ちなんて知らなかったのかもしれない。

 私の我が儘を仕方がないと言いながら、きいてくれるハルお兄様。


 本当はどう思っていたの?

 今更、そんなことは訊けないわ。

 怖いのよ。

 本当のことを知るのが。




「カレン」


 夜中にハルお兄様がやってきた。

 もうすぐ日付けが変わりそうな時間。


「今夜って言ったのに、もう日付けが変わりそうよ。それで、どうしてこんな夜中なの?」

「理由を言う前に、カレンに訊きたいことがあるんだ」

「何?」

「もし、このまま二人で逃げようと言ったら、君は逃げてくれるかい?」

「うん!」


 私はすぐに返事をした。


「カレン、僕達が全てを捨てて、逃げるということは、幸せだけじゃないんだよ?」

「分かっているわ。お金も食べ物も、着るものさえもないのよね?」

「そうだよ。逃げるのだから、逃亡者になって、捕まれば命さえ奪われるかもしれないよ? 幸せと言えるほどの生活ができるかも分からないんだ」

「私は、ハルお兄様がいれば何でも我慢はできるわ」

「その僕が、君にヒドイことを言ったり、君を一人にしてしまっても後悔はしないかい?」


 後悔、、、。

 今はハルお兄様がそんなヒドイ人ではないと分かっているけど、もし不幸なことばかりで、ハルお兄様が変わってしまっては分からない。


 どんなに後悔しても戻ることはできない。

 この選択が一生を決めるの。

 私は不安になってハルお兄様を見つめる。


 ハルお兄様の顔には不安なんてない。

 どうして?

 一生が決まるのよ?


「ハルお兄様は不安じゃないの?」

「不安? 僕はカレンが幸せになるなら何でもするよ。だから不安なんてないんだ。カレンがどんな選択をしてもね」


 どうして私は不安になっているの?

 それはハルお兄様を信じていないからよ。

 幼い頃から見ているハルお兄様は、私を一度も傷つけたことはないわ。


 そんなの分かりきっているわ。

 悩む必要なんてないわ。

 だって私は、ハルお兄様とずっと一緒にいたいんだもの。


「私はハルお兄様と一緒に逃げるわ」

「そう。それなら今すぐ行くよ」

「えっ、でも何も準備なんてしていないわ」

「逃げるんだから、何も必要ないんだよ。僕達は全てを捨てるんだ。身分も家族もね」

「家族? 待って!」

「えっ、もしかして逃げるのをやめるの?」

「違うの」


 私は部屋の隅に置いてあるケージの小窓を開けた。


「リン、あなたも逃げなさい。自由なのよ」


 リスのリンをケージから出してあげたかった。

 私がいなくなれば、リンのお世話をしてくれる人はいないかもしれない。


 だから、リンも逃がしてあげたかった。

 それなのにリンは、私の腕を駆け上って肩に座った。


「リンも一緒に行くの?」


 リンは私の問い掛けに首をかしげて見てきた。

 これはリンの返事なんだ。

 私と一緒に行くってことなんだね。


「ハルお兄様、私をここから連れ出して」

「うん。さあ、おいで」


 ハルお兄様は私に手を差し出した。

 私はハルお兄様の手を握り、走り出す。

 逃げよう。

 幸せの為に。



「カレン、ハル君が迎えに来たわよ」

「は~い」


 私はお母さんに呼ばれて、見ていたスマホを切った。

 やっぱり、自分がヒロインのお話はハッピーエンドで楽しいわ。


 私はスマホで乙女ゲームをしていたの。

 今回の彼は王子様だったけれど、次は執事にしようかな?

 ヒロインの名前は、やっぱりカレンで決まりで、執事の名前は、ハル以外にないわ。


 そんなことを考えながら、部屋から出て階段を下りる。

 玄関には私の愛しい人が立っていた。


「ハルお兄ちゃん」

「カレン、おはよう」

「おっ、おはよう」


 ハルお兄ちゃんの笑顔が眩しいよ。

 今日も格好いいよ。


 ハルお兄ちゃんは私の幼馴染みなの。

 二つ年上で高校三年生だよ。

 私は入学したばかりだから、ハルお兄ちゃんが朝だけだけど、一緒に登校してくれるの。


 さっきの乙女ゲームの王子様のような軍服を着てくれないかな?

 絶対に似合うと思うんだよなぁ。


「カレン? どうしたの?」

「えっ、その、王子様の、、、」


 私は、想像したことをそのまま口にしようとしてやめた。

 乙女ゲームの彼役を、全部ハルお兄ちゃんにしているなんて言えないよ。


「王子様? カレンは、まだあのことを覚えているんだね?」


 ハルお兄ちゃんは苦笑いをしながら言った。

 ハルお兄ちゃんが言う王子様とは、小さな頃の約束のこと。


 ハルお兄ちゃんは、私が童話の王子様が好きだと言ったら、僕がカレンの王子様になってあげるよって言ってくれたの。


 私は嬉しかったけれど、大きくなったハルお兄ちゃんから、恥ずかしいから忘れてくれって言われたの。

 その時に私は気付いたの。


 ハルお兄ちゃんは、私のことをお姫様だとは思ってくれないんだってこと。

 私のことを、好きにはなってくれないんだってことを。


 だってハルお兄ちゃんは、私のお姉ちゃんが好きなのよ。

 今日も玄関で、チラチラとリビングの方を見ているもの。


 お姉ちゃんを探しているのよね?

 私なんて見えていないのよね?

 私は目の前にいるのに。


「お姉ちゃん、いってきます」


 ハルお兄ちゃんの為に、お姉ちゃんに声を掛けると、リビングから顔を出してお姉ちゃんが、いってらっしゃいって言ってくれた。


「王子様もいってらっしゃい」


 お姉ちゃんは、ハルお兄ちゃんを見て、ニコニコとしながら言った。

 ハルお兄ちゃんは恥ずかしそうにしていた。


 私には、忘れてほしいくらいに王子様って呼ばれたくはないのに、お姉ちゃんが呼ぶと否定はしないの?

 お姉ちゃんに王子様って呼ばれると嬉しいの?


「王子様、早く!」

「分かってるよ!」


 お姉ちゃんの言葉に促されるように、ハルお兄ちゃんは私の手を握って家を出た。

 そんなに速く歩くと、私ついていけないよ。


「きゃっ」


 私の足は、ハルお兄ちゃんの歩く速さについていけなくて、躓いた。

 そしてハルお兄ちゃんの背中に顔をぶつけた。


 いつもは私に合わせて歩いてくれるのに。

 そんなに私と一緒に学校へ行くのが嫌なの?

 私は、お姉ちゃんに会うための口実に使われているの?


「カレン、ごめん。あいつがしつこいからさ」

「いいの。お姉ちゃんに会えて良かったね」

「カレン?」

「私の頭の中には、たくさんの色んな王子様がいるから大丈夫だよ。お姉ちゃんに、私の一番大切な王子様をとられても」

「カレン、何を言っているの?」


 ハルお兄ちゃんが振り向こうとするから、私はハルお兄ちゃんの後ろの制服をギュッと掴んで、このままでと言った。


「大丈夫。私の頭の中には王子様がたくさんいるもの。王子様は私とハッピーエンドだもの」


 私は自分に言い聞かせるように呟いた。


「カレンは、まだ王子様が好きなんだね?」

「うん。でも、執事も戦士も魔法使いも大金持ちも平民も好きよ」

「カレン、何の話をしているんだよ?」

「誰でも王子様になれるんだよ」

「それなら僕もカレンの王子様になれるかな?」

「えっ」


 私は、ハルお兄ちゃんの背中に顔を埋めて隠していたけど、驚いてしまって顔を上げると、ハルお兄ちゃんは前を向いて、少し顔を赤くしていた。


「僕は、カレンの理想の王子様にはなれないから、僕を王子様だと思ってほしくはなかったんだ。カレンの理想の王子様像を壊したくはなかったからね」


 ハルお兄ちゃんは、私の王子様になってくれるの?


「それならお姉ちゃんに、王子様って呼ばれても否定しなかったのは何故なの?」

「あいつは、僕がカレンを好きなことを昔から知っていたんだよ。僕をからかう為に王子様って言うから、反応をしないようにしていたんだ」

「ハルお兄ちゃんが私を好き、、、」

「あっ、ごめん。カレンが僕に好かれるのが嫌ならそう言ってよ」


 私の王子様は、少し遠慮気味で、でも格好いいお兄ちゃんです。

 私は、そんな王子様が大好きです。


「私はハルお兄ちゃんが大好きよ」


 私はハルお兄ちゃんの背中に顔を埋めて言った。

 ハルお兄ちゃんは、僕もカレンが好きだよと言って、手をギュッと握ってくれた。



「カレン、さっきから沢山の王子様がいるって言ってるけど、どういう意味なの?」

「それは、これよ」


 私はスマホの画面をハルお兄ちゃんに見せた。

 ハルお兄ちゃんは画面を見ても、まだ分かっていないみたい。


「乙女ゲームだよ。私が主人公で、沢山いる彼の中から一人を選んで疑似恋愛をするのよ」

「疑似恋愛?」

「そうだよ。色んな彼がいるから、色んな愛の形があるの」

「色んな恋愛を経験できるんだね?」

「うん。ハッピーエンドの恋愛をね」

「それなら僕と一緒にそのゲームをしようよ」

「どうして?」

「だって、カレンとの恋愛をハッピーエンドにしたいからだよ」


 ハルお兄ちゃんは、私の為に乙女ゲームをしてくれるの?

 私との恋がハッピーエンドになるように?



 私はうんと返事をして、ハルお兄ちゃんの隣に並ぶ。

 ハルお兄ちゃんは優しい笑顔で私を見ていた。

 私達の手はずっと繋いだままで。

読んでいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

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