”天賦の才”と”才能”があるんです
”才能”って表現について、できることなら後々言及したいと思ってる今日この頃
唯一の救いは魔力量が国への報告義務がないところだ。個人情報の一部で魔法師団及び第一騎士団に入る時か、犯罪者にならない限りは秘匿されるらしい。もちろん王族相手でも例外ではなく、リュークさんも秘密にしてくれるとのこと。
『国が、管理するものではないんですね。』
「以前は国が管理する時期もありましたが、属性はともかく魔力量自体は本人の努力でどうにかできるものではありませんから。それが差別や迫害の理由にならないように、2代前の国王の時代に廃止されました。情報の取り違いや誇張しての報告なども多発していましたからね。」
2代前の国王が優秀すぎる。
それまで世の中は貴族びいきな風潮が強く、教会がグルになって多めに申告したり、貴族なのにわずかな魔力量を持たないことで問題が起きることがあったことは、レオンでも容易に予想がついた。
「あくまでの本人が自分の力量を把握するためのものですから、あまり気負う必要はありませんよ。訓練の参考にしてください。」
『はい。ありがとうございました。』
「それからよほどのことが無い限り、魔力量については他人に伝えないように心がけてください。相手が貴族であろうと王族であろうと、黙秘することは国の法律で許可されていますから。黙秘することで不当な扱いを受けるようであれば、私に伝えてください。必ず対処します。」
『わかりました。』
魔力を持つことで平民であるレオンが意に沿わない扱いを防ぐためだろう。リュークさんの言葉をありがたく受け取り、しっかり頷いた。
全属性であること自体は多少珍しくはあるが、いないわけではないので、器用貧乏にならないように気をつけてくださいと言われた。
部屋から出ると3人できた道を戻り、中庭にある鍛錬場まで戻ってきた。
「お、おい!」
「やばい!ふせろ!!」
大声が聞こえてそちらを見ると火球同時がぶつかり、異様に膨らみ出していた。力が同等だと基本は相殺するが、あれは片方が大きくて小さい方の火球を飲み込もうとしている。下手に水をかけても被害が大きくなるだけだろう。
「まずい」
「レオンちゃん、ふせっ・・・え!?」
リュークさんがとっさに魔力障壁を展開して守ろうとしてくれるが、それを飛び越えて今にも爆発しそうな火球に近づく。下手に囲うと爆発した場合に衝撃が外に漏れるので、爆発の中心になりそうなところに右手を突っ込む。ちょっと外野がうるさいが無視して魔力を流し込み、そのまま爆発を相殺させた。火球は中心からほぐれていき、弾けることなく霧散した。
『ふぅ、よくできました〜』
自画自賛しながら火球の中に突っ込んでいた右手をぶらつかせる。
「レオンさん!!なんてことを・・・怪我は?」
『ぅわっ・・・平気ですよ。ちゃんと魔力障壁展開しましたし。』
ぶらつかせていた右の掌を見せれば、リュークさんはほっとしたように息を吐いた。
「今のは、一体何を・・・?」
『何って、普通に魔力ぶつけただけです。』
あ〜余計なことしたっぽい
リュークさんはともかく、周りの兵士達は信じられないものを見るような目でレオンを見ている。
そんな目で見ているけど、お前らだろこれ爆発させそうになったの。
『あ〜と・・・ごめんなさい』
何か言おうかとも思ったがうまい言葉が見つからず、諦めて頭を下げた。そう言えば人に謝るのも5年ぶりだ。
リュークさんは惚けている兵士達に何か指導をして、レオンを連れて場所を移した。
「まさか爆発寸前の魔法に飛び込むなんて思わなかったよ。怪我してないかい?」
アークさんが延々こっちを見てくる。怪我をしていないと言ってもいまいち信用してもらえてない。
移動した部屋はリュークさんの執務室のようだった。本棚にはたくさんの本が置いてあり、机には書類が積まれている。
2人にさっきのことを説明して欲しいと頼まれ、なんとか言葉を探してさっきのことを説明する。たどたどしい説明になったが、リュークさんもかなり頭が良かったので言葉を補ってくれたので理解してくれた。
「あの森に住んで、魔物も狩った事があるとは聞いていましたが・・・」
レオンがやったことは理論上は可能だが、実践するとなると相当な技術が必要なのだそうだ。レオンからしたら放出された魔力を相殺するのは、魔物を狩る上であって損はない技術くらいの認識なので、いまいちその凄さが理解できなかった。
「レオンさん、魔法学院を受験しませんか?入学は成人を待たなければいけませんが、あなたなら絶対に合格できるはずです。あなたの才能は、磨くべきです。」
才能ねぇ
身元の保証人にはリュークさんがなってくれるそうで、書類の手続きも手伝うからと、こちらが驚くくらい説得してくる。
確かに魔法学院への入学はレオンにとってもメリットはある。生活費は一切かからないし、人とも関われる。ずっと1人でやってきた魔法訓練も、1人で学ぶことのできない一般常識も社会常識も、学校で学べる勉強も、魔法学院に入る事ができれば学べる。魔法学院を卒業しても国に使える義務はないし、ずっと1人で生きていくにしても4年間の学校生活は絶対に無駄にならない。
考えれば考えるほど魅力的な誘いに感じて、返事を言葉にするよりも先に頷いていた。
そこからはトントン拍子で話が進み、来年の夏に魔法学院を受験することになった。魔法試験はなんとかなる自信はあったが、筆記試験に関しては自信がないので殿下からもらったお金で参考書の類を買って行くことにした。
アークさんも来年からの魔法学院の入学が決まっているそうで、筆記試験に出た問題のことや参考書のアドバイスもしてもらった。
魔法学院にはアークさんの他にグレンハルト殿下も通うそうで、側近であるソルグル様とセトもレオンと同じタイミングで受験するらしい。
2人には丁寧にお礼を伝え、今後リュークさんとはこまめに連絡を取ることになった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。