特別授業〜5日目 午後その3〜 ソルグル様の片思いかぁ
ソルグル様はいつまでも殿下のそばにいたい印象
殿下はそれをよしとしないから、断り方がちょっと冷た目だけど、あくまでもソルのことを思っての態度
ただしソルはそれでもめげない
4週して次のメニューに移るときには、ソルグルの防御魔法は壊れてしまっていた。他にも防御魔法が壊れた人たちは、見回っていた魔法騎士団の人たちにかけ直してもらっている。
最後のメニューは大きめの岩に自分が使える魔法の中で威力がある魔法をぶつけるというものだった。他の人の魔法を見ることで自分の魔法の威力がどれくらいか把握したり、新しい魔法のヒントにしたりするためだ。
「せっかく全学年が集まっていますので、ぜひ他の学年のグループと一緒になってみてください。2〜3グループで一つになるといいでしょう。」
「いくぞ」
『はい・・・?』
リュークさんが全体に話した途端にソルグル様がすぐに移動した。行き先はもちろんというか当然というか、殿下とアーク様のグループだった。もう1人初めて見る男性がおり、ソルグル様を見ると頭を下げた。学校指定のジャージを着ているので、もしかしたら平民かも知れない。
「殿下、一緒の班になってもよろしいですか?」
「授業の時くらい他のやつと交流をもて。今更俺たちと組んでも、新しい魔法なんてない。」
「・・・はい」
すげなく断られた。ソルグル様はちょっと俯いてしまって、ペタリと倒れた尻尾と犬耳が見えた気がした。
「レオン嬢」
『はい?』
振り返るとコーネル様がこちらに向かって歩いてくるところだった。右手を胸元に当てて一礼すると、軽く手をあげて返される。
「よければ俺たちの班と組まないか?」
『コーネル様の班と?私は構いませんが・・・ソルグル様、セト、よろしいですか?』
「あ、当たり前だ。」
「もちろんだよ。コーネル様の魔法が見られるなんて、むしろこちらからお願いします。」
激しく同意だったので、よろしくお願いしますと頭を下げた。
殿下に一礼してセトたちと一緒にコーネル様の後についていくと、トルマリン様と初めてみる男性が待っていた。
「一年生?お前が声かけるなんて珍しい。・・・確かそっちの2人は殿下の側近様だな。」
「ああ。」
「ソルグル様とセノレット様はわかるが、そちらの女性は?」
「レオン嬢だ。全属性で以前の魔物討伐で一緒だった。2人は紹介しなくてもわかるな。レオン嬢、ドレイク・ルノアールだ。」
互いの顔を見合わせるように紹介されたので、右手を胸元に当てて頭を下げ自己紹介を済ませる。
ソルグル様の名前を呼んでいるということは、知り合いなのだろう。
自己紹介さえ済ませたらそれ以上の無駄話は不要なので、他の生徒からしっかり距離をとって魔法を使う場所を決める。魔法をぶつけるための岩はエルリック様が出してくれた。軽く拳をぶつけて強度を確認し、5mほど離れたところに並ぶ。
「俺たちから魔法を使うか。トルマリン。」
「はい」
先輩方から魔法を見せてくれるとのことなので、少し離れて魔法を使うトルマリン様を見る。トルマリン様は一度深呼吸すると両手を岩に向けた。
「アイスブレイド・ロン!」
トルマリン様の手の前に魔力が集まり、少しだけ周囲の温度が下がる。出てきたのは氷で象られた狼だった。氷狼は地面をかけるように動いて、岩にぶつかるとヒビを入れそのまま弾ける。ただ周囲にとび散ることはなく、そのまま氷の柱になって固まった。
「高位魔法だ!すごい」
氷も動物の形を作るのも、それを体から離して自由に操るのも、間違いなく上級者の代物だ。セトと2人して思わずトルマリン様に拍手を送る。気恥ずかしそうなトルマリン様が両手を下ろすと、それと同時に氷も消えた。
「トルマリンは水と火属性だ。火魔法も今のと同じような魔法を使うぞ。」
「得意なのは水魔法ですけどね。」
「・・・炎を使えるんですか?」
「はい」
ソルグル様が興味を示した。普段の授業で見た感じソルグル様は炎が使えるようになるまで、もう少しというところなので、実際に使える人が目の前に現れて嬉しいのだろう。
「次は俺か。」
トルマリン様と場所を入れ替わって、今度はルノワール様が的の前に立つと右手を上にあげた。
「加減しろよ」
「わぁってるよ」
ルノワール様が意識を集中すると、空気がピリついた。思わず感知魔法を展開すると、岩の上に彼の魔力が集まっている。
「雷来」
発生したのは小さな落雷だった。岩に落ちた雷で、ヒビが入っていた岩が音を立てて崩れる。これで手加減しているということは、多分この人も雷の高位魔法を使える。・・・この班優秀すぎんか?
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