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喫茶店でリュークさんとお茶を

こんなイケメンと喫茶店に行くのってハードル高いですよね。まあ私の人生では微塵も可能性はありませんが。

「今日は2人とは会いませんでした?」


『はい、見かけなかったです。』


「まあ入学したら会うこともあるでしょう。あの2人も優秀ですからきっと同じクラスになると思いますよ。」


『顔見知りがいるのは心強いなぁ』


ソルグルは貴族としてのプライドが強くて、身元が怪しいレオンのことを警戒して好ましく思っていない。だがセトは子爵ではあるが、あまりレオンに悪い印象は抱いていないらしく気さくに話してくれる。まあどちらも殿下の側近としてプライドを持って働いているみたいだし、何かされているわけではないので特に気にしてはいない。


「魔法試験では何の魔法を使ったんですか?」


『このくらいの球体の中に、こういう輪っかを何十個も入れ込んだやつです。』


右手に中が空洞の球体を作り、左手に直径が同じくらいの同じく真ん中が空いた輪を作って見せる。


「・・・威力が出るものなんですか?」


『出ますよ。こっちの輪っかを高速度で回転させているので、ぶつかるとえぐれるんです。一応魔法をぶつける的だけじゃなくて、後ろの岩まで威力は届きましたし。』


右手の球体は消して左手に浮かべた輪っかを回転させれば、リュークさんは感心したように頷いた。我ながら語彙力のない説明だが、それで理解するあたりこの人も頭がいい。



『今日はご馳走様でした。』


自分が誘ったからと今日の食事代はリュークさんが出してくれた。店を出てからお礼を言えば、リュークさんは気にしなくていいと笑ってくれる。


『・・・リュークさんは、どうしてここまで気にかけてくださるんですか?』


今日の食事のことはもちろん、学院を受験するための手続きやその勉強までこまめに連絡をしてくれた。あの森であったとき確かに色々と手助けはしたけれど、レオンから見たリュークはそこまで熱心に人のことを気にかけるタイプには見えない。


「そうですね・・・貴女の才能に惚れたから、でしょうか」


『??』


言葉の真意が掴めずに首を傾げると、リュークさんは優しい顔で笑う。


「私がハーフエルフであることは以前話しましたね。」


『はい』


人間と寿命が異なるリュークさんは若々しい見た目をしているが既に150歳オーバーだ。それでもハーフエルフの中では若い方らしい。


「私はこの国の2代前の国王に恩があり、もう100年近く魔法師団に所属してこの国に仕えてきました。その中でたくさんの魔法使いと出会い、また自分自身も力を磨いてきました。」


リュークさんはこの国を良い方向に変えた国王陛下のもとで、同じく国の改善のために尽力してきた。その甲斐あってこの国では身分に関係なく、魔法の才能があるものが存分にその力を伸ばす環境が出来上がってきた。

リュークさん自身も努力を怠らず着実に実力を伸ばし、役職にこそついていないものの魔法師団の中でも信頼を築き上げ、この国でもトップクラスの実力をつけた。人間に比べれば多い魔力量を持ち、長く生きたことで知識も技術も身につけた。だからこそ自分の魔法師としての限界が見えたらしい。


「慣れとは恐ろしいもので、100年も同じ環境に身を置くと自分の力を見失ってしまいそうになるんです。」


国や王族を守るために実力を磨き、魔法師団員として団員の指導にも取り組んできた。ただ経験値も重要になってくる戦闘において、魔法師として純粋な実力で彼に追いつく人はそうそう現れない。二代前の第一騎士団長はリュークにとって良きライバルとなったが、そもそもの寿命が違う。その友人はリュークよりも早く衰えていき、まだ余力を残していたはずなのに後任を育てるとさっさと隠居してしまったらしい。

リュークさんの気持ちはレオンにも痛いほど分かった。リュークさんからしたら短い期間かもしれないが、レオンもこの6年間ずっと1人で力を磨いてきた。慣れ親しんだ環境で教わったものを衰えさせないように鍛錬を続けてきたが、その鍛錬が正しいのか、自覚がないだけで教えを無駄にしてしまっているのではないか、その孤独感と不安と戦い続けてきた。


「そんな時に貴女と出会ったんですよ。あの爆発を魔力だけで押さえ込んだことは、私の中で衝撃的な出来事でした。」


あの時も説明されたが人の手を離れた魔法が暴走すれば、その対処はかなり難しい。それをまだ成人していない子供のレオンがあっさりとやってのけたことは、リュークだけでなくあの場にいる全員がとんでもない衝撃を受けた。


リュ「これは手放せないと思いましたよ。あの時は“才能“という言葉を使いましたが、今の貴女の実力は紛れもなく努力の賜物なのでしょう。途中まで人に習っていたとは言え、5年間自分1人であれだけ魔法を磨き上げた貴女なら、正しく学べばまだまだ力を伸ばすと確信できましたからね。同じく魔法を学び、かつ教える立場にいるものとしては放って置けなかったんです。」


『・・・買い被りすぎですよ。』


なんだか照れ臭くてそんな返事をすれば、リュークさんはとんでもないと首をふった。


「本心ですよ。欲を言えば私自身が貴女に魔法を教えたいですが、貴女のこの先の人生を考えれば学院に入る方が色々とためになりますからね。私も一応立場があるので、今のところは保護者の地位に収まることにします。」


ちょっと後半言っている意味が分からないが、レオンのことを考えてくれていることは理解できた。


『ご期待に添えるように、頑張ります。』


「気負うことはありませんよ。何か困った事があればいつでも言ってくださいね。」


『はい、ありがとうございます。』


リュークさんは仕事があるので見送りこそできなかったが、レオンが家に戻るとすぐに手紙をくれ、入学までこまめに連絡をとった。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

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