◯◯◯◯◯騒動(1)
「喜び勇んで出発したはいいものの…大事な物を忘れていた…あれがなければ…私は…何を生きがいに生きていくのだ…」
クリルが竜の手綱を握りながらそう呟いた、その顔は白く、どこか落ち着かない
「クリル…?最近少しおかしいですよ?どうかしましたか?」
「……………」
「お〜い、クリル〜、大丈夫か〜」
ヴェンデルとリーデルが声をかけるが反応がない、魂が抜けたようになっている
「クリル……大丈夫…?」
「……………」
「クリルまさか危ないお薬に手を出してないよな?」
「確かに…あれはそれと似た性質を持つ…」
「クリル!?重症化する前に治療を!…しかしどこでクリルがそんなものに手を…この間目を離した隙…いや、まさかエンリコがっ!?」
「おーいヴェンデルその根も葉もない誹謗中傷やめろー……足りないんだ…あれが…」
「…?」
「クリル?」
「タメイグォウとアブゥルァとオスゥからできる…」
「できる…?」
「白くてまったりとして…程よい酸味がクセになる…」
「クセになる?」
「マヨネーズが!」
「まよねーず?」
「that light!」
「どっどうしたクリル…急に怖いぞ」
「人が変わったみたいですよ」
「あの調味料は…」
「は?」
「世界を変える…!」
そう言うとクリルは大きく手を広げ、太陽を仰いだ、まるで天からの授かりものを受け取るかのように
「流石に大袈裟ですよ…世界を変える調味料なんて…」
大袈裟じゃない、大真面目だ…
私の生命線だぞ
「ああ…心配して損したぜ…そのマヨネーズ?ってやつ、自分で作ればいいんじゃねぇの?」
「それがな〜、料理得意じゃねぇのよな」
クリルはどこか悟り切った表情で朗らかにそう答えた、その笑顔には曇りがない
「…取り敢えず材料を教えてくれますか?」
「ん?材料?タメイグォ」
「あ、そう言うのいいんで早く」
「はい…卵と油、お酢です」
「ふむ…おあつらえ向きですね…これから通る集落はお酢が名産で、油は残量が結構量あります…後は…卵さえ何とかなれば作れますよ」
「マジか!ヴェンデル最強!マジ神!」
「…で…作り方は?」
「火は通さないで材料を少しずつ混ぜ合わせる感じだ…ったはず」
「簡単じゃないですか!」
「以前そう思って作ろうとして…酷い失敗して…」
「え?どう言う?」
「それっぽい何かはできたけど明らかに色合いがおかしいし何か変な匂いするし…おまけに滅茶苦茶生臭かった」
「最悪ですね…」
我ながら食う気になれなかったのはあれが初めてだったな
「おう…」
「とにかく!次に通る村!そこでお酢を調達するぞ!私の命のために!」
クリルが叫ぶ、これまでにない気合いのこもった叫びを