港湾国家セイレーナ
私達は竜域を出たあと、ワコクへと渡る船に乗る為に港湾国家セイレーナまで足を伸ばしていた
「我が君、ここセイレーナでワコクへと渡る船を確保します、手分けして探しましょうか」
「うぃー、じゃあ1時間後にここ集合でいいか?」
「良いわよ」
「問題ないぜ」
「…(コク)」
「御意にございます」
「じゃあそれまで各自で聞き込みだー」
〜〜〜1時間後〜〜〜
「じゃあそれぞれで結果報告といこうか、まず私だがダメだった」
「我が君もダメでしたか…」
「ん?ヴェンデルもダメだったのか?」
「はい…え、とその…見つかるには見つかったのですが…」
「ならそれで良くないか?」
「…奴隷船でして、何があるかもわかりませんので」
流石に奴隷にジョブチェンジはしたくないしな…
「あー…なるほど…ミーミルはどうだった?」
「…(フルフル)」
「ダメだったか…リーデルは?」
「ダメだ…この時期ワコクには台風が来てるらしくてな…どこも船は出さないらしい」
「そういう原因もあるか…しっかし…参ったな」
「我が君〜?」
「全滅ですね…さて、どうしたものですかね」
「船を仕入れて自分達で行くのはー」
「我が君ー」
「それは少しリスクが高いぞ…しっかしそれ以外に案が無いな…」
「我が君!!」
「おっ…どうしたウルズ、そんなに大きな声を上げて」
「私の結果報告がまだ済んで無いんだけれど」
「どうせダメだったんだろ?私含めて全滅だし」
「見つけたわよ、ワコクへと行く船を」
「ほらな?ダメだったー…って、え?」
「ウルズ、本当ですか?」
「本当よ、酒場で利き酒大会?みたいなのがあってー、それの優勝商品で“好きな場所へ無料で渡航できる権利”がもらえたのよ!」
うわぁ…都合よすぎ…だけどまぁ結果オーライか?
「我が君…ウルズの悪癖がやっと役に立ちましたよ…!」
「あぁ…感慨深いな!!」
「ちょっと!ヴェンデルちゃん!!それに我が君も!」
「まぁ…悪癖ではあるよな」
「リーデルちゃんまで!!もうっ…怒ったわよ!ぷんすこ!」
「まぁまぁそう気を悪くすんなって、で?いつ頃にその船は出るんだ?」
「明日らしいわー、荷物の詰め込みとかもあるし、まぁ早い方なんじゃ無い?」
ふむ…1日開く訳か…
「なら皆で観光でもしないか?ずっと緊張したままでも辛いだろ」
「ラヴクラフトの断罪が目的ですが、我が君がそう仰るのであればやぶさかではないですね」
「…(コクコク)」
「ひゃっはぁー!今日は呑むわよー!」
「お前…もう十分呑んでるだろ」
「何か言った?リーデルちゃん」
「い、いや何も」
「じゃあ皆は好きに見てきて良いぞー」
「……」
「……」
今のウルズ怖ぁぁあああ!!
(ウルズは本気では怒らせない方が良いですね)
(あぁ、普段とのギャップが酷いな…ラファエルより怖いかもな…ってあれ?そういえば天使勢はどうしたんだ?王城でも見なかったし)
(天使の皆さんは一度ラファエルとウリエルの作った“ヴァルハラ”と呼ばれる地に赴いているとの事で、なんでも封じてある神獣を再封印するとかで、つい5年ほど前に、10年の休暇なのであと5年すれば又)
(10年の休暇…ブラック企業勤めしてた前世じゃ考えられんよなぁ…じゃねぇや、ゴタゴタ終わったら手伝いにいって見たいもんだけど、どうかな)
(場所は分かっているのでなんとかなるかと)
(じゃあゴタゴタ終わったら行くか)
(御意にございます)
と、内緒話をしていたヴェンデリとクリルの耳にある会話が飛び込んでくる
「なぁおい…海底遺跡から西の聖女に関する書物が出てきたって本気かよ」
「らしいな?さっきお偉いさんの一人が慌てて走ってったぞ」
西の聖女
数々の伝承に姿を表す、有史以前より知られる存在
その書物が発見されたらしい
「状態を保存して引き上げるためにまだ遺跡の中にあるらしい、まぁ、水中だから人魚や魚人以外誰も盗みには行けないだろうよ」
ーーー
「聞いたか?ヴェンデル」
「はい、西の聖女に関する新書が見つかったみたいですね」
「なぁ、単刀直入に聞くが気にならないか?」
「え…?我が君…ダメですからね?」
「え?まだ何も言ってないじゃん」
「大体察せますよ…水中にある書物ですよ?そう容易には取りに行けないですし」
「メタトロンは基本的に息してないからメタトロンと私を分離してメタトロンを向かわせる」
「え?分離なんて出来るんですか…?」
「おう、出来るみたいだな…出てこい、メタトロン」
クリルがそう告げた瞬間宙から声が聞こえた
「顕現」
と
「お、今回は光らないんだな」
「…周囲の注目を引くと予想」
「うんうん、感心ですな〜…それで本題なんだけど」
〜〜〜
「問題ありません、近海に沈む遺跡より文書を回収…可能です」
「おー!やってくれるか〜、あ…場所どこだろ…」
「問題ありません、海底の地形を基に数カ所をマーク、2時間有れば探索は可能かと」
「頼もしいなー、よろしく頼むよー」
「では、失礼します」
そう言うとメタトロンは文字通り姿を消した
「我が君…」
「ん?どうしたヴェンデル」
「私は…いえ、なんでもありません…」
「?そうか」
この時クリルは気付けなかった
ヴェンデルの思った所を
それはいずれ大きな障害となって立ちはだかる事になるだろう