再びの出立
この世界は元を辿れば塵の様な物だったらしい
その塵が引かれ合い大きな塊となった…それが今私達の居る世界の始まり
集まった塵は聖の気を持つ塵と魔の気を持つ塵に別れ、聖の気を持つ塵は上へ、魔の気を持つ塵はそれぞれ下へ沈んで行った、それが天使や魔族と言われる者達の誕生である、そこから更に分派して原初の魔物や人、動物が生まれたらしい
だがしかし、生まれた世界はこの世界だけでは無かった
その塵と同じ形を持った“影の世界”が生まれたらしい、圧倒的に違うのはそこに棲む住人だ
魔族ともつかず、天使とも違う彼らは何を思ったのか表の世界の我々に対し入れ替わりの大戦を仕掛け続けている
この世界に開く5つの門、
初めに確認されたワコクの門は無事だが2番目のケメトの門は突破されたらしい、私が見たクトゥルーとか言うデカい奴の事かな
3番目と4番目はそれぞれ天界と魔界にあるらしい、まぁよっぽどのことがなければ大丈夫だそうだ
そして最後の門がここ、竜域の王城の地下にあるらしい、結界を使って封じているらしい
てかここにもあったのかよ!!
「竜域の門は竜王が護る務めです」
おいおい…そんなことアヌビス以外言ってなかったぞ
「ありがとうメタトロン、もう戻っていいぞ」
「御意…」
そう呟くとメタトロンは私の中に消えた、中々シュールな風景だったな
それから私はヴェンデルを伴ってリーデルを探しに竜惚の迷林に来た、道中メタトロンから聞いた話を聞かせると
「あぁ、私のスキルも似た様な事言ってましたね」
なんて言いやがった、え?なに、あいつのスキルってアザゼルじゃ無かったっけ?まぁそこら辺も追々分かるだろう
などと話していると
「おう、クリルじゃん、久しぶり」
背後から懐かしい声が聞こえた
相変わらずボサボサの銀髪だが大人の風格を漂わせるほどには成長している
こんな早く会えるとは僥倖だ
「リーデルか〜、久しぶり」
「おう、クリルが死んだ後母ちゃんとか親父からめっちゃ扱かれてな…そしたら獣王になってた」
あいつら…張り切ってどんな扱き方したんだ…
間違っても新兵の訓練には使えないな…
「リーデル、単刀直入に言います、私達と旅に出て頂けませんか?」
「あぁ、例の“影の世界”の話か?」
「…そうだ、今回はミーミルとウルズも一緒に来る、どうだ?」
ふぅ、と大きなため息を一つ吐くとこう語った
「断る理由がねぇよ、クリルがいるから今の俺がある、精一杯頑張らせてもらうぜ」
どうやらこれでメンバーは揃ったらしい
ーーー
翌朝、私達一行は竜域を出た、竜車に乗り国境を越えると以前見た街並みがほぼ変わらずに並んでいた
「お、ここら辺は変わらないんだな」
「アヴァンの命令で殆どの住民が殺された村です、残った住民が村を整備しているらしいですが…良く保存できてますね」
まるで時間が止まったかの様に数百年前の景色を作り出す村、中央で回る風車が奏でる錆びた金属の擦れる不気味な音だけが時代の経過を告げる
「あいつは暗愚という言葉が正しい暴君だった…スキルはウルズに負けるしな」
「え?そうなのか?」
おいおいおいおいおい…配下にスキル負ける竜王ってどんだけだよ
「そうよ、タイマンの喧嘩売ってきたからスキルだけでボッコボッコにしてやったわ」
「アヴァンのスキルは完全にウルズの下位互換ですしね…」
ウルズのスキルは破癒焔神と言って火だけでなくそれに関連して起こる事象を操れるという中々の強スキルらしく炎を操るだけの炎鬼龍では勝ち目はほぼほぼ無いらしい
「そういえばちゃんとウルズのスキルの名前聞くの初めてだな」
「えぇ、言ってないしね」
こいつ……どうしてくれようか
「はぁ…ウルズは変わってませんね…そういえばミーミルのスキルも中々ですよ」
ヴェンデルが御者をしながらも話を繋げる
「…精泉霧龍」
様々な効果を持つ霧を操る能力らしい
毒を孕む霧、癒しを与える霧、記憶を改竄する霧等、使い様によってはかなり凶悪なスキルだ
「えっと…一応俺も言っておくか…獣王、名前がそのまんますぎるな」
周囲の魂を取り込んで自分の力にしたりただでさえ凄まじい獣王の身体能力を更に高めるらしい、獣王威圧によって敵を洗脳状態にしたりと使い勝手は良さそうだ
こうして第2の旅は始まった、そろそろバカンス的な意味合いで旅をしたいんだけど…
ーーー
場所は変わる
ここはユニオン、すべてのギルドを統括する組織、そして私、ゲイルはそのトップで有り、竜王討伐大規模攻勢クエストを発布した張本人だ
先代竜王が余りに暴虐すぎたが為に討伐クエストを発布したが彼が崩御した今、その必要は無くなったと思ったがその考えは大きく違った
よりによって歴代最強と呼ばれていた先代竜王がまさかの復活、そのまま復位だ
既に多くの冒険者を送り出しているが全て消息を絶ってしまった
どう見ても失敗だが何かがあるはずだ、先ずはそれの整理からか
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