竜王復活の詔
「陛下、謁見の間に全員揃って御座います」
「おし、じゃあ行くか」
〜〜〜
「全く…王ときたら…過剰な徴税の次は偉大なる先王の真似事か?」
「おい…聞こえたらどうする…!」
…みっともない
「なぁゴウメイ、矢張り今代の王は王としては相応しくないと思わんか?」
「ぬぅ…否定はせぬ、だがいきなりどうした?」
「あの炎鬼龍とか言うスキルもウルズ殿の下位互換さながらではないか」
「おい…あれでも気にしておられるのだ…ウルズ殿に打ち負かされた事を」
謁見の間はザワ付いている
これもクリルが王であったときにはここまで騒がしくなることはなかった
ここまで王竜の威厳は落ちていると可視化しているようだ
「皆様、静粛に…陛下のお見えです、跪きなさい」
ザッ
一斉に片膝を突き跪く、だがそこには敬意は篭っていない
「おー、大分面子変わってるな、取り敢えず自己紹介から頼むわ」
「「 」」
「ん?」
「「先代!?」」
「あぁ、そうなるな」
「いやしかし…何故!?」
「んーっと…かくかくしかじかで」
〜〜〜
「ふむふむ…つまり我が君は死した後過去へ行きこれから起こりうる事象の始まりを見た…と?」
「あぁ、そうだ…なんとかしたいが…いかんせん人手が足りな過ぎるのと状況が分からない、簡単にでもいいから説明を頼む」
それからクリルは聞いた
アヴァンの過剰な徴税で民は飢え苦しんでいる事、
クリルの遠征した領土を植民地とし再侵攻した事
全ギルドを統制する“ユニオン”が“竜王討伐クエスト”を発令し全ての外交を遮断、一部外国とは交戦状態にある事
見かねた高位竜の一部はそれぞれの長…ヴェンデル達を立て離反、反政府組織として領土内でゲリラ戦を繰り広げている事
「…その反政府組織の名前は?」
「ドラウプニル、と」
「…取り敢えず私が復活、復位したと触れをだせ、アヴァンは私が屠ったっても付け加えて」
「「御意!!」」
ーーー
我が君の復活、どれだけ願い、なし得なかった事だろうか
ヴェンデル殿は迷宮へ向かったものの王の蘇生は叶わず、新しき王を立てたものの余りに愚か、それに見兼ねて複数の実力者を引き連れ離反…我が君の復活が知られたからにはこれも終わるだろう
「帰ったらガルニエの手料理で一杯やるとするか」
今日くらいは酒を嗜むのもいいだろう、何せ偉大なる王の復活が成されたのだから
ーーー
先代竜王の復位
この知らせは瞬く間に世界に響く
「ふん…打った剣が無駄にならなくて良かったわい…」
ある者はそれを吉とし
ある者は
「竜域めアヴァンより厄介な物を復活させたな…竜王討伐クエストはどうする…」
苦難し
またある者は
「ウルズ、ミーミル、このドラウプニルは解散です、クリルが復活しました…!!」
歓喜した
ーーーその夜ーーー
ドンドン
ドンドン
「あぁ…?折角人が寝てる時に…窓か?」
ドンドン
「今開ける、誰だー」
ガチャ
「我が君!!!!」
何かに強く抱きしめられる
随分と懐かしい声だ…
お前がいて、初めて竜王としていられる気がするよ
金木犀の香り
黒を基調とした上品な金の刺繍が入った執事服
落ち着いた適度に低めの声
黒曜石のように透き通る2本の角
「あぁ…ヴェンデル」
ーーー
我が君が復活した以上、ドラウプニルは最早必要無い
さぁ、解散だ、
できれば又我が君に支えたいが…
取り敢えずは顔を見に行こう、まずはそれからだ
………
結論として、私は再び陛下の執事として支えることとなれた
ウルズやミーミルもお咎め無し、
流石我が君、代用品のアヴァンとは格が違う
ーーー次の日ーーー
「さて、今日から本格的に復位した訳だが、真っ先にやることがある」
「は…?」
「まずは余分に取り立てた税の返還、そして次にユニオンへの交渉、出来なきゃ潰すだけだけど」
「…意図は理解できますが…税の返還は…?」
「どうせああ言う輩のことだ、どっかで溜め込んでるんだろう?」
「流石陛下、その通りで御座います」
「あの…我が君、一つ質問をよろしいでしょうか…?」
「ん?」
「何故エレナがここに?」
「…そういやなんでだろ」
「…陛下がヴェンデル殿を執事に据えましたが私への辞令は無いため執事が2人いると言う状態ですね…」
「あー…すまんすまん忘れてた、じゃあお前は……何がやりたい?」
「…私としては陛下のおそばでお仕えしたいのですが…」
「ん〜…ごめん、それは少し難しいな……じゃあ、一つ指令を出していいかな」
「…は、何なりと」
「諜報を行ってほしい、対象はユニオン、実力とこれからの行動を出来る限り詳細に、部下も多少好きに使っていいぞ」
「御意」
そう呟くとエレナは姿を消した
「うお…凄いな…ではヴェンデル、話の続きだが、あいつの溜め込んだ金額から全員同じ額になるように再分配だ、少し大変になるかもしれないが宜しく頼む」
「御意、直ぐに手配を」
「おう、頼りにしてるぞ」
「…あり難き御言葉」
周りの国の知り合いももう居ないだろう…だが、幸いにヘンゼルやクリフシェとの外交は変わってないらしい
「そこらへんはアヴァンも手を出し兼ねたようだな」
だが…そこじゃない
真にやるべき事はそこじゃないんだ
「ヴェンデル、指令を出す」
「は、是非に」
「これから私と3つの国を巡ってもらう…ワコク、天界、魔界だ」
「ふぁ!?」Σ(・□・;)
「ん?」(^ω^)
「い、いや…ワコクは理解できますが…後の2つは」
「まぁ、なんとかなるだろ、メンバーはどうする?」
「あのメンバーで行きましょう」
「あのメンバー?」
「えぇ、短期間ですが旅に出たでしょう」
「あぁ…!!いいなそれ!!」
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