浦島太郎な竜王
「しっかし、アヌビスが軽くて助かったな、山道歩くのにあんまり重いと体力使うからな」
クリルは墳墓の中で目が覚めた、外殻を破壊し外に出てきたが意外にも墳墓は王城のすぐそばにあったらしく今は竜惚の迷林を進んでいる
数十分も歩くと王城の裏門が見えてきた
「あ〜…怠かった、帰ったら風呂だな風呂」
そう言って門番に声を掛ける
「よ、あたしだけど通してくれろ」
「…誰だ?」
何言ってんだこいつ
とでも言うような視線を門番から向けられる
「え?ここの主のクリルってもんだけど」
「…貴様…先代陛下を騙るか…!この不敬者めが!!」
そう言うと門番は槍を構えた
「それに、今の主人はアヴァン様である…確かに前王と比べ落ちる部分が多いが…主人は主人だ…!」
こいつの発言は大丈夫なやつか?
「まぁ良いけど…大人しく通した方がいいと思うぞ?」
「それは叶わぬ、そこの女共々失せるがよい」
「話通じ無さそうだしいいや…」(ボソッ
「貴様、今何かー」
クリルがメタトロンを行使し門番を気絶させる
「最初からそうすれば良かったか、さ〜て、私の後釜に会いに行ってみるか、ヴェンデル達は生きてるかな〜…」
〜〜〜
アヌビスは眠らせてるけど物置に置いて行くか、流石に何かあったら庇いながら戦えるか分からないしな
確か玉座の間は変わってなければこっちか…
…
…
…
「ふ〜…やっと着いた、無駄にデカいんだよな相変わらず…どれどれ、後釜はどんな感じか〜……ん…?」
扉の隙間から見えた物は執事…ヴェンデルとは別な執事とのやり取りから始まった
「陛下、これ以上民から税を絞るのは少々…」
「構わん、王竜あってこその竜だろう?そうだ、植民地からも搾取を始めるとしよう、竜域と同じ税を取れば単純に増える」
バカかこいつは
「………畏まりました、次に例の者達ですが…」
「あぁ、足取りは掴めたか?」
「は、首魁のヴェンデル、ウルズ、ミーミルを始めとした幹部筋が竜域に再集合していると…何かあるやもしれません、陛下に刃を向けようとしているのやも…」
「馬鹿馬鹿しい、所詮は高位竜、竜王たる我に敵うはずがあるまい、我が炎鬼龍の消炭にしてくれようじゃないか」
「流石陛下…流石の奴等も陛下の敵ではありませんね」
見てられん…
やるか、
バァン!
物凄い勢いで扉が開かれる
「誰だ貴様、王の御前でー」
「王は私だ」
「は?何を言う貴様…気でも狂ったか?」
「少なくともそこに座ってる奴よかまともだぞ?」
「…もういい下がれエレネ、そいつは俺が殺す」
「…は、」
「おい女、俺に舐めた口聞いた事、公開させてやる」
「はいはい、おら、来いよ」
「炎熱炎舞!!」
高密度の炎がクリルを包む…
かのように思われた
「おー、冬場良いかもなストーブがわりに」
「なっ!?」
「え…うそ…我が君の技を受けて…無傷!?」
「炎流操作で操れるからね〜、じゃあ次は私が行くぞ?“終末ノ氷界”」
玉座の間を猛吹雪が襲う
玉座を凍てつかせ、床を凍らせ、大気中の水分を氷に変える
吹雪が一段と濃くなったと思うと急に吹雪が止む…アヴァンが死した体で氷塊に閉じ込められていた
氷塊に閉じ込められたアヴァンの苦悶の表情が笑いを誘う
「ははは、なんだその間抜け面、笑っちまうじゃん」
「我が君…!!貴様ァ…!」
「まぁ落ち着けって、先代竜王にそこまで邪険にしてくれなくても良くない?」
「…は?先代は呪いを受けて崩御したはずじゃ…?」
「悪いんだけどそれどのくらい前?」
「400年ほど」
「あー…浦島太郎状態だな…まぁ良いや、墳墓を調べて貰ってもいい、気が済んだら先代竜王クリルが復活したと触れを出せ」
〜〜〜
ドカッと音を立てて玉座に座る
久しぶりだな〜
石の材質の筈なのに何故か座り心地良いんだよなこの椅子
コンコン
とドアを鳴らす者がいるな
あぁ、エレネか
「…陛下、貴方様が先代竜王、クリル王であらせられる事を確認いたしました、先程の非礼、如何様にも罰してくださいませ」
「いや構わないぞ、それより私が王だった時の家臣はどれ位残ってる?」
「大方、しかし高位竜の長…障竜、神竜、古竜の長がアヴァン王の時世に謀反を起こし野に降りました…」
「そうか…では下位竜の長に変動は無いんだな?」
「は、」
「ならば全員召集、私の名前を出せ」
「御意にございます」
パタン
ふぅー…こうやって接するのもなんだか久しぶりな気がするな
…ミーミル、ウルズ…それにヴェンデルまで…何故謀反を起こした…?
〜〜〜
「むぅ…スザク、何故に先代の王の名で召集をかけたと思う?」
「さぁな、ただ幾らあの方の名前を騙ったとてあの方には遠く及ぶまいな」
「違いないな…ゴウメイ、其方はどう思う?」
「先代陛下の復活ならばこれ程喜ばしい事はない、だが…まさかな」
「幾らあの方でも流石に…いや、まさか」
「はは…あの方であれば不可能でも無いと思えるのが不思議な所だの」
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