明かされる終末 鳴動する世界
「我が君…!我が君!!」
クリルが呪いを受けて数日
あれからクリルは眠りに着いた
ヴェンデルの目の前に安らかな寝息を立てているクリルは急激に衰弱している
「神官長…我が君の御容体は…?」
神官長と呼ばれた女性の神龍は首を横に振る、それは状態が芳しくないことを表している
「外傷はありません…完全に呪いを喰らっている状態かと…」
「祓えませんか?」
「厳しいです…手がかりとなるセトの像は霧散してしまったために…」
「そうですか…ありがとうございます、もうお下がりに…」
「はい…失礼します」
「筆頭執事様、例の女の尋問に当たった者からの報告が参りました」
「分かりました…行きましょう」
ーーー
「筆頭執事様、御足労頂いて誠に恐縮です」
「構いません、早速本題に入りましょう…報告とは」
「は、アリアと申す人種がほざくにはあのセトの像はとあるカルト宗教から渡された、と」
カルト宗教…今回のことの顛末と今一結び付かない気もするがそう言う物なのだろうか
「カルト宗教…ですか」
「はい、今回の一件はそのカルト宗教に金で雇われたアリアとカインによって引き起こされたものだと」
「他の2人は知らなかったと…」
「はい…呪術の発動に必要な条件が“呪術を知らない生贄2名”と言う条件だったらしく」
「金で仲間を殺すか…下衆が…!」
ヴェンデルが侮蔑を込めて呟く、冷たい殺意の篭った言葉は周囲を冷え上がらせる
「そのアリアとか言う人種は殺さないで置いてください…良いですね?」
「は…畏まりました」
「…因みに、そのカルト宗教の名前は?」
「確か…カオスゲートと」
「聞いたことないですね…まぁ留意しておきますか」
それから4日間クリルは生きた
ある者は泣き
ある者は唯々己が無力を噛みしめ
ある者はその死を受け入れなかった
その葬儀はしきたりに沿って盛大に執り行われた、国外への流出は免れないが仕方のない事だろう
「あぁあああああああぁぁああぁぁぁああぁぁああああ!!!」
木霊するヴェンデルの叫び
仕えるべき主人を失い、救うことのできなかった後悔と自責がその身を襲う
何が悪かった?
私があの者達を連れて来ることに賛同してしまったからだ
何故我が君は亡くなられた?
私が及ばなかったからだ
「力が…欲しい…!!」
星の如く全てを見通し
水のように全てを呑み込む
火のように全てを終わらせる
「アザゼルよ…応えろぉおおおおおおおおおおお!!」
ドッ……
ドッ……
ドッ……
ヴェンデルの願いに呼応しスキルが変形を始めた瞬間だった
クリルのメタトロンの様に、意思を持つスキルへと
“汝、何故に我を求む”
追憶を喰い、糧とし、力とするために
“汝、我に何を遣す”
その力を存分に奮ってやろう、貴様単体ではなし得ない世界を見せてやろう
“汝、力を欲すか”
無論
“我が力…其方と共に…重力子の王は居ない…だが我が共に歩もう、我が名は黒星の反逆者、あらゆる力を従える者”
上等だ…共に行こう、我が君を救う“方法”を手に入れるために
“迷宮か”
そうだ、知っているのか?
“あれは神世の時代、来たる最終局面を乗り越える“英雄”を生み出すために3世界の神と、一人の魔王が作った物だ”
3世界の神と魔王…?
“ケメトのオシリス、天界のエホバ、ワコクのアマテラスそして魔界のソロモンだ、迷宮は創造主が死ぬと消える…迷宮が一つも減っていないと言うことは4名はまだ生きている証拠か”
そんなはずは無い、我が君がソロモンを殺した筈だ
“恐らくそれは本体では無い…ソロモンが容易くやられるはずが無い”
まぁそんなことは良い、お前と私は迷宮を攻略出来るのか?
“余裕だ、我が姉も居れば無傷での踏破も夢では無かっただろうがな”
姉?
“あぁ…肉体を失い今はスキルとなっているが…名前は
メタトロン
だ”
メタトロン…我が君のスキルか
“そうなのか…?ならばその者の蘇生を急がねばな…姉の魂の依代がなくなる前に”
そうなのか…では行こう…私と共に覇道を示せ
“上等だ”
ヴェンデルは消えた
新しい力を手にし迷宮へと乗り込んだ
ーーー
ん…どこだ?ここ
クリルは砂漠に立っていた
血のように紅い砂漠
連なるピラミッド、
砂嵐の舞う砂漠に立っていた
「どうすっかなー…あ、あそこに誰かいんじゃん、何処かだけでも聞かないとな…おーい!!」
クリルが見つけたのは神々しい身なりをした少女、常人ではあり得ぬ程の力をあふれさせ、あふれる力は闇を称えている
「ん…?其方は…この地の者ではないな?」
クリルの呼びかけに応えた少女はそう言った
「そうなんだよ…なんか目の前が暗転したと思ったらここにいてここは何処だ?」
「ここはケメト…のはずだ、まぁ多分違うがな…私はアヌビス、3つの神殿のうち夜の神殿の巫女だ」
「ほえー…なんか凄そうだな」
「凄くはない…力を持てず、人々のために祈る事しかできぬ弱い存在だ…」
「弱くはないと思うぞ?うん、」
「お前は随分と遠くから来たみたいだが…何処からだ?」
「えっと…竜域って知ってるか?あそこの王なんだけど」
「竜域…何故その王がここにいる!王は彼処を離れてはならない筈だ!!」
突然焦ったようにアヌビスが喋りだす
「え?なんで?」
「こんなことも知らないのか!!今代の竜王は!何代も入れ替わると伝わらない物なのか?これは」
「いや…わかんないんだけど」
「分かりやすく言おう…竜域は“最終局面”を起こさない為の蓋だ、あそこの王城の下に“太古の記憶”と“生命の泉”がある、その又更に下に“虚空”と呼ばれる異世界へと繋がる穴がある、その穴を封じているのは王城、有事の際に対処するのは王竜だ」
更にアヌビスは言葉を続けようとしたが男の声がそれを阻む、何処からかやってきた見知らぬダボダボのローブを着た男がそこに立っていた
「ベラベラと、アヌビスちゃんは随分とお喋りだね」
「…?誰だ貴様は…」
警戒をあらわにアヌビスが聞き返す
「僕の名前はラヴクラフト、この世界では魔術師と呼ばれる部類なのかな?」
「そうかではラヴクラフトは何をしにきた?」
「君に見せたいものがあるんだよ」
「…いきなり何を…?」
「これだよ」
そう言うとラヴクラフトは水晶の玉を取り出す
「これを除いてご覧…?」
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