砂の国の追憶
セルケト討伐から数週間が経った、セトの言葉を裏付けるように人々は回復し、徐々に感染者を減らしていった
「どうやらセトの言っていた言葉は本当らしいな…」
「巫女様、少し宜しいでしょうか?」
「ん、なんだ?」
「書物庫よりいくつか巻物が消えているのですが…お心覚えはございませんか?」
「いや…知らんな、なんの巻物だ?」
「は、ホルスについて記された物ですが…ホルスの神殿の在り方を記した巻物と冥界の歪についての巻物です」
「ホルスの神殿に冥界の歪…?分からんな…」
「そうですか…ホルスについての巻物は内容が解読不能にてさして問題では有りませんが…冥界の歪は少々問題が」
「ふむ…冥界と現世について言及されている書物だな…現世と近い歪の場所も記されている禁書相当の代物だが…」
「は…如何なされますか?」
「私も少し探してみるとしよう、少しラーに会ってくる」
〜〜〜
「と、言うことがあってな…ラー、お前の所でも似たような話はないか?」
「いえ…私の神殿では…あ、そういえばミイラが数体行方不明になってましたね」
「それは結構大きな気がするが…まぁいい、それが聞けて助かった…次にイシスの所へ行かないか?少し嫌な予感がしてな…」
「えぇ、わかりました…私も一緒に参りましょう」
〜〜〜
「私の神殿で無くなっちゃったもの?ん〜………あ、香油だ」
「香油…?」
「うん、ファラオのミイラにしか使えない香油が無くなってたんだよ〜、今探してるんだけど中々見つからなくて」
「確か成分が特殊だったんだよな」
「うん、あんまり深くはいえないんだけどアメミットの牙が入ってるらしくて」
「神話のか?」
「うん…前に冥界の門が開いた時にこっちの世界に来ちゃったみたいで、それを倒したみたい」
「……少し気になるな…」
「関連性を調べた方が良さそうですね…」
「うん、問題を起こしてファラオを困らせる訳にも行かないしね!」
〜数日後〜
「神官達、呪いによると後2日で冥界の門が開くらしい、気を付けて行動を」
いよいよ目前に迫ったある日、2人の巫女はイシスから呼び出された
「なんだ…?イシス、急に「わかった」なんて言って」
「えぇ…貴方の頭が弱いのは私もアヌビスももうわかってますよ」
「そっちじゃなーい!ていうかバカじゃないもん!」
「はいはい、で、何がわかったんだ?」
「うん…それがね、昨日偶々ある巻物を見たんだ」
「巻物…?何が書かれてあったんだ?」
「冥界の門が開く時にしか使えない魔術なんだけど…準備物が尋常じゃないんだ」
「どういうことですか…?」
「アメミットの牙、ホルスの心の臓、ミイラ、セルケトの毒、この4つが必要なんだ」
「セルケトの毒…?死後の裁きを意味するアメミットの牙…復活と再生を意味するホルスの心の臓…死そのものであるミイラ…死をもたらすセルケトの毒……分からないな」
「アヌビス…ここまで来て分からないんですか…?これは冥界反転の魔術に必要な素材ですね…」
「冥界反転…!?だ、だがしかし…そんな魔術誰が…?」
「アヌビスちゃん…神殿にある物資を全て把握でき、強い魔素を持って、尚且つ素材集めを疑われずに行える人物は一人しかいないよ」
「まさか…セトか?」
「正解ですね…でも神官長を探すのは苦労しますよ」
「…いや、探す必要はない、ここから一番近い冥界の歪を見張る…来た所を拘束すればいいさ」
「なるほど…でも別な場所を狙っていたら…?」
「その時はもう手遅れだ、ここ以外で近い所は大陸を1つ超えた国“ワコク”か“竜域"にあるからな」
「そうでしたね…ワコクは鎖国してますし竜域は“盟約”によって門を“彼ら”が守っていますしね」
「冥界反転の魔術は冥界の門が開く時じゃないと使えない…後2日、セトを探してそれまでに見つからなければ待ち伏せだな」
「現世と冥界を入れ替える魔術だっけ?その冥界反転って」
「そうだな…禁忌と言われる魔術だがその分被害は計り知れない…」
ミヲ…ソ…ヲ…
なんだ…これは王家の谷で感じた…?
ソノミォオオオオオオオオオ!!
なんなんだ!!この身がどうした!!!歴代のファラオ達とあろうものが高々巫女の体を欲すると言うのか!?馬鹿馬鹿しい!!
「……」
「アヌビス?」
「……」
「アヌビスちゃん?」
「…」
「アヌビス!!」
「ん…?またぼーっとしていたか?」
「全く…少々弛みすぎです」
「すまないラー…少しおかしくてな」
「まぁ、今日はもう夜だし帰って休もう?無駄に話し合ってても体力を消耗するだけだし」
「イシスの言う通りですね…私は失礼します」
「あぁ…すまない私も帰る」
「うん、また何かあったらきてね」
〜〜〜
紅い…血のように赤い砂漠
遠くに連なるのはピラミッドか…?
砂嵐が巻き上がりよく見えないがそうなのだろう
おかしい、今日は随分と太陽が大きい気がする、光り輝きながら回るそれは神々しくもありどこか不気味だな
あぁ…喉が渇いた、ここから動いて早く神殿に戻らないと
…
……
………
動けない、おかしい足が持ち上がらない
枯れたファゴニカでも足に絡み付いているのか?
いや、違う手だ、たくさんの手が私の足を掴んでいるのか
あぁ、なるほど、これは歴代のファラオ達か
ソノミヲ…ソノミヲ…
またこの言葉か、どうしろとか指示がないから何を言いたいのかよくわからないが
ん…?後ろを見ていなかった、強い風を感じる、ここは小高い丘の上か?
穴、黒い虚無といえる穴がアヌビスの後ろには存在した、その穴は段々と大きくなり紅い砂や風景を飲み込む
おい、離せ、このままだと吸い込まれるだろう
そんな想いとは裏腹にファラオ達はアヌビスを話してはくれない
砂が頬に当たり、背中には暗く寒い気配が近づいてくる
あぁ…間に合わないー
「夢か……」
吸い込まれた瞬間、アヌビスは起きた
方で息をし、汗でぐっしょりと濡れた毛布は重く、アヌビスから体温を奪って行く
大きくため息を吐くと自室から出る、今日も一日、祈って食べて寝るだけの単調な生活、あぁ、退屈だ
そうだ、イシスとラーに会いに行こう、顔を合わせるのは去年セルケトを倒して以来か
アヌビスは一日の簡単な計画を立てているとふ、と違和感を覚える
だがその違和感を何かと決定付けるものは無い
神殿から出る
暑い、今日は随分と日照りが強い日だな
紅い砂漠が普段よりも濃い
遠くに見えるのはピラミッドか
まるで今日見た夢のようだな、砂嵐は起き、太陽も禍々しい
もしこの作品で面白い!話の続きが気になる!アヌビス今どうなってんだ!
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