王竜としての在り方を
「ふぁ〜ぁあ…ミーミルにはそのままドラゴンゾンビ引き連れて首都を掌握してって伝えといて〜」
「御意」
「それと東部平原の兵士は拿捕して玉座の間まで連行して来て」
「我が君………いえ、御意」
「利用出来るものは利用したいからな」
〜〜〜
あのウルズとか言う者…只者では無かった…聞けば彼女は最高戦力では無いらしいでは無いか…この竜域はこのような怪物だらけなのか…!?
「御免、王竜アジ・ダ・ハーカ様が側近ヴェンデルと言う者だ、陛下が貴様らと面会を望んでおられる、王城へ」
「!?…あ、ぁあ、分かった、是非」
何だこの女性は!気配をまるで感じなかったぞ!!
「どうかしましたか?心ここにあらずと言った表情ですが」
「い、いや、気配を消すのがお上手ですな」
「我が君の側にお仕えする者としては当然です、如何なる場合でも配下の気配が我が君の為すことに影響を及ぼしてはいけませんので」
「そ、それもそうですな」
なんなんだ!!気配を消すとは言ってもここまで消すのは人間技じゃないぞ!!
「では転移魔術で控えの間まで飛びます、魔法陣の中へ」
「な…詠唱を…」
「低級な魔術は詠唱すらまだるっこしい…こんな事で驚かないでください」
「では…失礼する、私の配下は?」
「配下の皆様はお呼びでありませんので貴方だけです、では参りましょう」
そう告げると魔法陣が光りデミアスの視界が暗転する、
「ここ…は…おぉ…なんと…!!」
デミアスの眼前に広がっていたのは総黒曜石であしらわれた壁、床、シャンデリア、テーブル、椅子である、所々ブラックダイヤモンドがアクセントとなっている、それらを見たデミアスは一瞬それらに目を奪われるが次の瞬間、呼吸すら意識せずには行えない程の緊張に襲われた
なんだ…この…重く、苦しい、そのまま死を連想させる気配は…!!ウルズ殿やヴェンデル殿の比ではない!!
「カハッ!!」
「我が君の気配に当てられましたか…これだから人間は…気付け薬です、噛んで呑み込みなさい」
「こ、これは?」
「酔葡萄、一粒口に含んで呑み込めば強心作用が出ます」
「むぐ……ヒック!ヒック!」
「簡単に言うと酔っぱらうって事です」
「んな!?ヒック!」
「失礼致します、先程仰せになった者を連れて参りました、御目通りを願います」
「おー、いいぞー」
「は、失礼致します」
「へ?ヒック!ヒック!」
ヴェンデルが玉座の間の扉を開けると、やはり黒曜石であしらわれた広大な空間の奥に、一つの玉座があった、そこに座っているのは圧倒的な存在感を放つ黒いドレスを着た一人の女性、
「ヴェンデル、そいつ酔って無いか?」
「気付けの酔葡萄が効きすぎたようですね、ご容赦を」
「はぁ〜…しゃあないな、暴食」
デミアスを黒い霧が覆う、霧が解けると真っ青な顔をしたデミアスが座り込んでいた
「話にならなそうだからアルコール成分だけを食った、これで話し合いが出来るな?」
「…は、はい」
「単刀直入に言おう、私の配下になれ」
「…え?」
「貴様!口の利き方に気を付けよ!」
「まぁいいってヴェンデル、それよりどうよ、嫌か?」
「…拒否すればどうなりますか?」
「な…!貴様!!」
「落ち着けってヴェンデル、そうだな、君たちは敗戦国の残存兵って扱いだよね、その大部分はあの東部平原に残ってる」
「それが如何に」
「私直々に潰しに行こう、一切の救いの無い残酷にして呪われた死を与えるが為に」
「…」
「当然だろう?危険因子をわざわざ残しておく必要は無い、そうだな、敵討ちを考えられても面倒だ、いっその事こと元聖侯国の住民を皆殺しにするか?一切の例外無く女子供までだ」
淡々と無感情紡がれる言葉に対しデミアスの心情は大きく変化する
「この……悪魔…!!」
「好きに言えばいいさ、私は敵には容赦しない、敗国の兵になった時点で君たちのテーブルに並べられた選択肢は「無駄死に」か「服従」しか無い、つまり生きたければ、国を救いたければ「はい」か「YES」しか無いんだよ、私は優しいからなぁ、もう一度だけ聞こう、嫌か?」
「クソが…………」
「ど、う、だ?」
「従う…いや、従わせてください…!!」
頭を垂れる、圧倒的な力によって圧し折られた己を恥じながら頭を垂れる
「よく決心した…君たちは今この瞬間からこの私の庇護下にある」
「…は…??」
「竜域上層部には君たちを殺そうとする奴が居てな、生命と人権を保障するにはこの手が一番早いからな、すまんね」
「聡明なる我が君が本気であのような残虐を行使するとでも?」
「へ…」
「全部演技と言う事です、我が君は必要以上の血が流れる事を望んでおられない」
「さて、君の配下を呼んでこい、早速だが命令を下す、やってくれるか?」
「…はい!」
「じゃあヴェンデル、頼んだぞ」
「御意に御座います」