表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜が転生したら竜種の王になっていた  作者: 社畜大根
竜王奇譚
4/67

竜王、国を出る

観光から帰り、宴も終わった次の日の朝、朝一番でウラニシスは帰途に着いた、なんでも相当な反対を押し切って同盟を結んだらしく、その後始末が残っているらしい、それでもその日の昼頃には国内外へ向けて


「我らヘンゼル騎士公国は、竜の治める竜域と同盟を組んだ事を発表する」


というような声明を発するほどには説得出来たらしい、ウラニシスの手腕の凄さを物語っている


「じゃあ私達も旅に出直すか」


「は、畏まりまして御座います」


「っと、その前に一応上の方の奴らには伝えておかないとな〜」


「また止められるのでは?」


「そしたらまた隙をついて出るさ」


「流石で御座います、」


「じゃあここにゴウメイ達とウルズ達を呼んできてくれ」


「御意」


数分後、クリルの部屋にゴウメイ達下位竜の長達3名とウルズとミーミルが呼び寄せられた


「皆、もう察しがついてるかもしれないが私とヴェンデルは旅に出る、その間の最低限の指示を出しておこうとな」


「指示…で御座いますか?」


「ああ、まず、この前編成した部隊の部隊名だが、《竜》達は「牙槍」《霊竜》は「弓尾」《呪竜》は「捜翼」だ、どうだ?」


「異論はございません」


「わっちも、名案だと思いますなぁ」


「は、我も異論はございません」


「良かった、次に高位竜達に指令だ、帰って来るまで各自技を磨き、万が一に備えろ、私不在の際の他国への侵攻は許さない、いいな」


「「御意」」


「じゃあこれで終わりだ、解散していいぞ」


「「は、失礼します」」


「これで後腐れ無く行けるな、ヴェンデル」


「は、流石の采配かと…」


「旅の間宜しく頼むぞ」


「はい!我が君!」


「早速だがちょっとベランダこい」


「はい!なんなりと」ガシッ


「空の上で落ち合おう」ブォン


「またこれかぁぁあああああああああああああああ!!!」


「どれ私もっと」バサッ


〜〜〜


「我が君…これは心臓に悪いですよ…」


「そういうなって、毎回成功してるんだし、今回も大丈夫だっただろ」


「それに我が君…私自分で空飛べます…」


「え?マジ?それ早く言おうよ」


「いや…なんか言い出し辛くて…すみません…」


「…なんかごめん」


「…そ、そう言えばクリル、この森を直進すると街に出ます、確か…クリフシェルとか言う商業が盛んな街ですね」


「マジで?こんな竜域に近いのにか?」


「寧ろ竜域近くにあるから栄えているんですよ、国境警備兵などを相手にしたり、国の軍隊とも取引しますからね」


「なるほど〜、そのクリフシェルとか言う街はどこの国に位置してるんだ?」


「いえ、クリフシェルは無国籍で、ただのクリフシェルです、どの国にも属さないので獣人を始めとした多くの種族が集まり、自由な商業が出来ますが…後ろ盾が無いと言うことでもあるので立場は微妙です」


「…じゃあもしも竜域が後ろ盾になったら?」


「…面白い考えですね、連合軍に一泡吹かせられますよ」


「じゃあ少し立ち寄ってみるか、」


「クリル…人の悪い笑みを浮かべてますよ…」


「おっと、これは失礼、でもクリフシェルと仲良くしといて悪いことは無いだろ」


「ですね…でもそのためにはクリフシェルの上の方の人間に合わなくてはなりませんよ?」


「ちゃんと考えはある、任せとけって」


「では楽しみに待っていましょう、そろそろ入り口が見えて来ましたね、あれです」


ヴェンデルが指差した方には大きな門が設置されていた、赤をベースに彩られており、門の中に見える建物群と比べても、一際目立つ仕様になっている


「あれが大門です、この街クリフシェルを東西に分ける街道が通っています」


「なるへそ〜、あの行列を見ると検閲をやる役人も大変そうだな」


「1日の人の通行量が多いですからね、大変でしょう」


「まぁその検閲を無視するんだけどね」


「流石クリル、豪快ですね、でも飛んでも視認されますよ?」


理力の王(メタトロン)使って目眩しすれば良いだろ」


「…それも不味いですよ、竜種の使うスキルは発動時に濃い魔素を発生させます、竜にとっては大した事ありませんが…人間が触れれば人が魔獣化します、」


「…並ぶか〜」


「それしかなさそうですね」


「クリル…あれを見て下さい、ここは多くの種族が集まりますが…その悪い点があれです、」


「ん?」


ヴェンデルが指を刺した方を見ると二人の獣人の子供が、人間の男二人に石を投げられていた


「近寄んじゃねぇ!小汚い獣人が!」


「臭いが移るだろうが!」


「止めろ!俺に投げろ!妹には石を当てるな!」


「お兄ちゃん…私は大丈夫だから…お兄ちゃんは逃げて」


「見ろよ、獣人が妹を庇ってるぜ」


「ったく…見てらんねぇ、魔法で焼き殺すか」


「流石に殺しはまずいんじゃないか?」


「構わねぇよ、どうせこの街じゃ獣人なんて奴隷なんだ、気にするこたぁねぇ、」


「だな、派手にやっちまえよ」


検閲の行列に並ぶ人々は全員が見て見ぬ振りをしている、まるで獣人が死んでも大したことは無いと言うふうに


「世界二灯シ原初ノ炎、我ガ標的ヲ焼キ貫キ、ソノ血ヲ燃セ!ファストファイア!」


男が手から発した青い火の玉は、兄妹に吸い込まれるように直進し兄に当たる、筈だった


「見てられないな、みっともない」


クリルが兄妹を庇うように立ち塞がると、男の放った火球はクリルに当たり、霧散した


「クリル!怪我はありませんか!」


「ああ、大丈夫だ」


「てめぇ!何しやがんだ!折角そいつらを殺そうとしたのによ!」


「おい、よく見ろよこの女、中々なもんだぜ、そっちの黒髪の方も」


「…だな、悪くねぇ…おいお前ら、今謝れば痛いようにはしねぇ、寧ろ良い思いをさせてやる、だけどよぉ…逆らったら殺すぞ」


男は下卑た声でそう呟いた


「貴様ら…クリルに汚らしい目を向けるな!」


ヴェンデルが殺気を含めてそう言い放った、その異様なまでに強い殺意は相手にも伝わったらしく


「おい、行こうぜコイツイカれてやがる」


「だな、構ってる時間が勿体ねぇ」


そう言って、まるで逃げるように立ち去った


「大丈夫か?怪我は痛まないか?」


「大丈夫…ありがとう」


「そっちの妹ちゃんは?」


「大丈夫です…ありがとうございます」


「軽い痣が残りそうですが大事は無いです」


「…お姉さんは大丈夫なの?」


「ん?私か?」


「うん、火の球が体に当たったのに」


「ああ、あれはただの光の玉です、格好をつけるためにあんな嘘の詠唱してたんでしょう、本当は魔術なんか使えないのに…安物の生活魔術の魔導書あたりでしょう」


「魔導書?見るだけで魔術が使えるようになるのか?」


「はいクリル、最も生活魔術の魔導書なんで珍しくもなんとも無いんですけどね」


「俺達が獣人じゃなければ…」


「ん?どうした少年」


「俺達が獣人じゃなければ…俺や妹がこんな目に遭うことなんて無いのに…」


「…お前たちは家族は?」


「いません…お父さんとお母さんは奴隷として売られました、私達はそこから逃げてきて…」


「そうか…少年、名前は?」


「俺か?俺はリーデル、狼の獣人」


「妹ちゃんは?」


「セレスです、山猫の獣人です」


「リーデルにセレス、お前ら冒険者として私達と一緒に来ないか?」


「え?良いのかよ」


「勿論、な!ヴェンデル」


「ええ、クリルが良いのであれば」


「…でも…邪魔になりませんか?」


「気にすんなって、それに、私達が前に出て戦うからお前らにはその援護とかだな、頼めるか?」


「「勿論!」」


「ですがそのためには装備を整えなくては」


「ああ、私達の予備を貸せば良いだろ、」


「ですね、そうしましょう」


「俺達兄妹は夜になると滅茶苦茶強いんだぜ!期待しといてくれよ!」


「ん?それは獣人全体が夜強くなるんじゃなくてか?」


「ああ、何故だかしらねぇけどうちの家系は夜の戦闘じゃあ随一なんだよな」


「はい…魔法は使えませんが肉弾戦なら…」


両手を握りしめてフンスッ!と意気込むセレス…何この可愛い生き物


「お〜、じゃあ夜戦の時は頼りにしてるぞ」


「おう!」


「クリル、話があります少しこちらへ」


「ほいよ」


そう言ってヴェンデルはクリルを木陰に呼び寄せた


「クリル、あの兄妹の言っていることが本当なら、おそらくただの獣人じゃありません」


「ん?マジで?」


「ええ、文献に記述があります、夜戦に強い獣人、特に一族規模の大きさでそうだとある可能性が生まれます」


「可能性?」


「はい、夜の修羅と書いて夜修羅、夜戦に置いての最強の種族です、随分と前に姿を消したはずの一族ですが…まさか奴隷になっていたとは」


「ん〜、よくわかんないけど…凄い一族の可能性があるってことか…」


「ええ、この出会いは奇跡ですよ」


「…取り敢えず一旦戻ろう、そしてこれからの出方を決めようと思う、ここのお偉いさんにも会いたいしな」


「ですね…確実なのは…あそこに塔がありますよね?」


そう言ってヴェンデルは市街地の中心にある、豪奢な作りをした塔を指差した


「あそこの最上階に殴り込めばほぼ確実に会えます」


「今夜あたりやってみるか…サンキューな」


「いえ、礼には及びません、クリルの執事ですから」


「そういやそうだったな、忘れてた」


「執事を忘れるとは…一応今も執事服ですよ」


「そう気にすんなって、どれ、あいつらのところに戻るか」


ん?そういや執事服着てるのに違和感がまるで無いんだが…

〜〜〜


「お前ら、まずは腹ごしらえからだ、何か食いたい物とかあるか?」


「俺は特にないな」


「…クリルさんが良い物ならなんでも…」


「…どうする?ヴェンデル」


「適当に露店でも見て回りましょう」


「だな〜じゃあお前ら、行くぞ〜」


「はい!」


「おう!」


「こらリーデル!走らないでください!」


〜〜〜


「まさかあんな簡単に決まるとはな〜」


「ですが彼等らしいじゃないですか、串焼き肉なんて」


「ああ、特に野菜を挟まないのを選んだ辺りな」


「クリルさんありがとう!」


「ありがとうございます…」


「ん〜、一ついいか?」


「なんだ?」


「さん付けやめてくれないか、どうしても慣れない」


「え〜、でも恩人を呼び捨てになんか出来ねぇよ」


「…うん」


「いや、頼むから呼び捨てにしてくれ」


「クリルが気に病んでいるのは、さん付けだといつまでも距離が縮まらないのではないか、という点です」


「「?」」


「戦闘とはお互いに意思の疎通や行動の疎通が不可欠です、ですがそれを為し得るには上下関係ではなく、仲間という関係性で築き上げることが重要なのです、それに…」


「それに?」


「私もクリルも単純に仲良くなりたいだけです」


「なら…クリル!」


「…クリル…」


「そう!それで頼む!」


「私の事も呼び捨てでお願いします」


「ヴェンデル」


「…ヴェンデル」


「はい、これからはそれでお願いしますね」


「「はい!」」


時は移りその日の夜、クリル達は安宿を探しそこで一夜を明かすことにした、


「お疲れ〜、取り敢えず明日は朝早くにこの街を出るから、お前らの部屋にいってよく寝とけ〜」


「お疲れ様です」


「「お疲れ(でした)!」」


バタン


「行ったな」


「はい、」


「ちょっと行ってくる、あいつらが来たら適当にごまかしといてくれ」


「分かっています」


そういうと私は窓を開け、そこから虚空へと、夜の闇にとけるように飛び立った






さて、旅路はどうなることやら

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ