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社畜が転生したら竜種の王になっていた  作者: 社畜大根
竜王降臨 動き出す世界
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同盟成立

クリル達二人が旅立って、半日以上経過した朝、誰もヴェンデルを見かけないことや、クリルが部屋から出てこないことを不審に思ったゴウメイ達がクリルの部屋にご機嫌伺いしに来たことで、旅立ちが発覚した、中にはクリルとヴェンデルの代わりに1枚の手紙が置いてあり



    「ちょっと旅に出るわ、死ぬまでには戻る」



「何考えてんだあの新米竜王!!!」


「ゴウメイ!よしなはれ、みっともない、我が君の意志じゃ!」


「しかし・・・同胞たちにはどう伝えたものか・・・」


「・・・昨夜の部隊編成の下知をいただいてから妙にソワソワしてたからな・・・」


「わっちらでなだめるしかなかろう・・・高位竜の方々は自由すぎるからになぁ・・・」


「いや・・・まだそんなに遠くには行っていないはずだ!探せ!探し出すのだ!!!王竜陛下が御降臨2日で失踪など面目が立たんぞ!!!」


我が君の考えることも分かる…この世界に来て詳しい情勢も知りたいと思うのは至極当然…

しかし間が悪すぎやしないか!?


「自由で悪かったわねぇ」


「!ウルズ殿、どうか召されたか?」

「いえ、王竜陛下不在の今、何をすべきかわかってるかしら?」


「なにを・・・すべきか・・・でありんすか」


「王の帰還を待ちましょう、いずれ帰っても来てくれるでしょう、その時のために、各自準備を怠らないことが重要ではなくて?」

「一生モノの不覚でありんす・・・」


「ああ、このゴウメイ、ウルズ殿を初めて尊敬している」


いやはや、最早脱帽物だな、高位竜随一の腑抜けとまで称されるウルズ殿に諭されるなど…

我等もまだまだであるようだ


「誰が腑抜けよ!まったくもう・・・あら?」


何か飛んでくるわね…え?我が君にヴェンデルちゃん?え?え?え?


「いやぁああぁぁあああああああああああ!!!!」


ベランダの柵に激突する直前でもう片方の物体、すなわちクリルに空中で拾い上げられるー


「そんなに声をあげるなって、2回目だろ?」


「2回やそこらじゃなれませんよ!我が君!」


一同は驚愕の余り声も出せずにかたまっていると、クリルが


「よ、お前ら、隣のヘンゼルとかいう国と同盟結んだから、もう向こうの国には手出しするなよ」


「「「はぁ」」」


「それともうちょっとでヘンゼルの国王だか何だかが着くから、歓迎してやってくれ」


「「「はぁ!?」」」


「いやさ、昨日抜け出してからの事なんだけど」


〜〜〜


「結構歩いたな~、今どこらへんだろうな」


「大まかではありますが今歩いている竜惚の迷林はもう少しで超えられるかと、そうすれば隣国との国境も間近です」


「うん?迷林?」


「はい、竜以外の種族が入るとなぜか迷うんですよね」


「何それ怖い」


「まぁでもクリルはすでに竜ですから」


「竜だけがわかる特殊な物体でも出てるのかねぇ」


何にしろ不思議な話だな、て言うかガチで迷わないか心配なんだが


などと話していると、不意に何か大きなものが羽ばたく音が響いた


「クリル、何かが来ます」


「ああ、なんか大所帯ぽいな」


「私が落としますか?」


「いやぁ、こっちに向かってきてけどもそもそも敵ってわけでもなさそうだし、様子見でいいでしょ」


自ら火の粉をばら撒く必要は無いし、何も無い限りは静観がベストだよな

なんて思っていた時期は私にもありました


「飛蜥蜴・・・騎士か、囲まれましたね」


「騎士?」


「ええ、それに飛蜥蜴の兜に国章が入ってますね、あれは隣国ヘンゼルの国章ですね」


「・・・そいつらは侵攻には参加しているのか?」


「いえ、中立的な立場を守り、触らず、触られず、の関係でしたね」


「それが何故今頃・・・」


「昨日の8万人が消えたことか・・・あるいは・・・」


「私の存在が知られたか、だな」


ならば私を潰しにでも来たと考えるのが自然なのか?


すると、一人の男が飛蜥蜴から降りて、クリル達に向かって歩いてきた


「どうした娘ら、こんな竜や魔物以外住み着かぬ森に、山菜取りでもしていて迷ったか?」


「どなたか存じませんが・・・どういった御用で?」


「貴様!陛下に向かってなんという口のきき方を!!」


クリルの物言いに激昂した初老の騎士を、陛下と呼ばれた男は手で制した


「よせユニル、大人気ない、第一、身分を名乗らなかったこちらに非がある、我は騎士国家ヘンゼルが王、ウラニシスだ、もう大丈夫だ、これから竜域に向かうがその後で森の外で家の近くでおろしてやる、どうだ?一緒に来ないか?」


こいつ…完全に私達が誰か理解していないな?

ならば此方から仕掛けてみるのも面白そうではあるな


「竜域へはなんの御用で?」


「貴様!陛下がそんな大事なことを平民の娘如きに話すと思っているのか!!」


おーう…落ち着けヴェンデル、深呼吸だ、深呼吸で冷静になれ


「良いユニル……あまり多くは話せぬが…竜域と条約を結びたくてな」


「条約…?」


「あぁ、争いたくないからな」


「ふーん…分かった、なら今から王城に戻るか?」


「ですね…しかしこの様な者らを信用しても大丈夫なのですか?」


「まぁ大丈夫だろ、王様はまともっぽいし」


「貴様ぁ…!!!どれだけ王を侮辱すれば気が済むのだ!!」


「まさか…その口ぶりだとまるで…いや、そんな馬鹿な」


「竜族を統べる王、通称竜王のクリルさんでーす」


「奴を囲め!陛下をお守りしろ!剣を抜け!」


 初老の騎士の一声で騎士達がウラニシスとクリル達を阻む壁のように立ち塞がる


あらまぁ、見た目は落ち着いたナイスミドルなんだが…まぁ忠臣の部類なのか?


「貴様ら…我が君を愚弄しておられるのか?」


こっちの忠臣が爆発しそうな件について


「何がだ…おいユニル、この陣を解け、一国の王に対しあまりに無礼だ!」


「惑わされてはなりませぬ陛下!この者は見た目を誤魔化しているようですが人外の存在!我々を謀る事など造作もないのですぞ!」


「お前らは…うちの国とは戦争はしたくなかったみたいだが…喧嘩を売りに来たのか?」


ヤバイな、こいつ主人の前でよくそんな事言えるな、段々と腹が立って来た


クリルからかつて無い程の殺気が放たれる、濃厚で質の高い殺気はヴェンデルにも届き、その顔を驚愕に歪めさせた


「わざわざ国王自ら喧嘩を売りにくるとはご苦労なこった、こんな少数貧弱な騎士達を護衛にか?」


「違うクリル殿!我々は竜域と同盟を組みに来たのだ、騎士が一人無礼な事をしてしまった…この通りだ、どうか許して欲しい」


「陛下!私は陛下の為を思ってー」


その言葉は続かなかった、ウラニシスが首を跳ねた、地面に鮮血が彩られる…断面から流れる血はストロベリーソースのように流れ、大地を汚す


「私はどうやら家臣を見る目がないらしい、一国の主、自らの主と同等の立場を持つ人間に払うべき最低限度の礼儀も持ち合わせていなかったとは…クリル殿、どうかこの者の血を持って、その器の大きい所を示していただけないだろうか、」


本気か?この国王は自ら作らなくても良い貸しを作ろうとしてるぞ…貸し借りを作るのもなんだしなー、ここはスルーか、


「気にするな、私のように良い部下に恵まれる方が珍しいからな、同盟の内容はどうする」


「…感謝する…では内容はこうではどうだろうか、互いの国への不可侵条約の締結、災害、や侵攻を受けた時等、有事の際の救援、技術や文化、商業に関する情報の共有等だ」


「…まぁ良いんじゃないか?だが一つ足りないな」


「?」


「軍事面での情報の共有だ、これは譲れない」


「…流石竜種の王、聡いな、敢えて我々が抜いた内容を入れてくるとは、先程の詫びもある、喜んで…とは言えないが、受け入れよう、」


私が王に成り立てだから出し抜こうとしたのか?でもそうは行かない


「じゃあ成立で良いか?」


「ああ、では血誠はどこであげる」


「血誠?」


「我が君、血誠とは重大な約束事を交わす際の取り決めで御座います、両者の血を混ぜ、さらに呪いを掛け、約束事の死守を誓います」


「誓いを破ると?」


「死にます」


「え?」


「死にます」


約束を破ったら死ぬ、この枷をつける事で同盟や協定を盤石な物にしているのか…確かに死んでまで他国に侵攻したのであれば意味がないしな、そこまでして初めて抑止力となる訳か


「…まぁ良いか、では血誠は私の居城で上げるのはどうだ?」


「了解した…しかし初めてだろうな」


「何がだ?」


「人の身でありながら王竜の居城に生きたまま立ち入ったのは」


え?今さり気なく変なこと言わなかった?生きたまま王城に入るのってアンタが初めてなのか?


ーーー


「ここが王城か…しかし…見事な作りだな」


ウラニシスは城に降り立つや開口一番でそう呟いた、黒曜石をふんだんに使用してあるであろうその外壁は吸い込まれるような美しさの漆黒であり禍々しくもどこか惹かれてしまう、


まぁ無理もない、私も初めて内装を見た時正直驚いたしな、総黒曜石なんて異質だけど美しいよな


「おー、やっと来たか」


「これはクリル殿、王竜自ら出迎えて下さるとは、とんだ御足労を」


「社交辞令はいいさ、さっさと終わらせよう」


「はっはっは、ではそう致しましょう、場所はどちらで」


「ここで良いだろ」


「ふむ…了解した、では早速始めましょう、レシア、小刀を持ってこい!」


ウラニシスがそう声を張ると、レシアと呼ばれた女性が装飾の無い素朴な小刀を持ってきた、ウラニシスはそれを受け取るとおもむろに指先を切った、指先からはたらたらと血が流れやがて腕を伝わって地面の染みとなる、


「ヴェンデル、こっちも小刀を持ってきてくれ」


「こちらに御座います、陛下」


クリルが小刀を受け取るとウラニシスのように指先を切り、血を地面に伝わらせた

すると、今度は両国から術者が呼ばれ、相手側の国の王に跪き、呪いをかける


「ウラニシス王、では、始めさせて頂きます」


竜域からはヴェンデルが


「クリル王、始めさせて頂きます」


ヴェンデルとレシアが交代で詠唱を始める


「ヘンゼルガ王ウラニシス、血誠ヲ結ブニ禍根ノ無イ事ヲ誓ウカ」


「誓おう」


「竜域ガ王クリル、血誠ヲ誓ウソノ心ニ嘘偽リハ無イカ」


「勿論」


血誓なんて言ってたからどんな物か気になってたけど、法定手続きの書状に似てるな…こいつのおかげで期末決算がどれだけ大変だったか…ゆるさんぞぉおおおおお


「「ソノ血ヲ持ッテ意ヲ表シ、ソノ契約ヲ永月ノ誓イトシ、永代二渡リ守リ抜ク事ヲ誓ウカ」」


((あれ?なんか我が君(クリル殿)怒ってる気が…))


「「ああ」」


「魂ニ楔ヲ掛ケ、血誓ノ秘宝ヲ持ツテ破ルルコトノナキ誓約ト成ス」


「以下略」


「ココニ血誠ノ成立ヲーえ?」


周囲にいた騎士達がざわめく


「ヴェンデル…お前儀式魔法くらい省略するなよ…それに最後なんだし…」


「はい?私めは何か…あ…やっちゃった」


魔法の詠唱破棄なんて考えるだけで高等テクだろうに…しかも反応を見るに無自覚だぞ?それを「やっちゃった」なんて軽そうに


「なんと…詠唱無しで魔法を行使できるのか!?」


「貴女…何者?」


「ヴェンデル…お前…」


「もっ申し訳ありません我が君、つい癖で」


「えっと…レシアさんだっけ?ちゃんと血誠は成立してる?」


「はっはい!完璧に結ばれてます!」


「というわけだ、大目に見てやってくれ、この後は宴を予定してある、是非楽しんでくれ」


「しかし、長居しては迷惑にならないか?」


「気にしない、どうせ暫くは侵攻も来ないし、それに騎士達やそのデカイ蜥蜴も休憩が必要だろ?まだ昼だけど夜遅くまで騒ごう」


色々話も聞きたいしな


「…では、お世話になるとしよう、皆の者!ここはクリル王の厄介になろう、今日は夜営、明日明朝出立だ!」


「「は!」」


「え…もう人数分城の中に部屋を用意しちゃったんだけど…」


「いえ、そこまで世話になるわけにはいかない、ここで私と共に野宿してもらうさ、」


「そうか…じゃあ後で何か酒でも差し入れしようか」


「…感謝する」


「お、酒は好きか?」


「嗜む程度には」


「本当か〜?」


「ああ、」


「喜べ、酒ならたんまりある」


「有り難く頂戴しよう」


「じゃあ付いてきな」


〜〜〜


「取り敢えずここの大広間で宴を開くが…折角竜域に来たんだ、案内役も付けるから観光でもしてけよ」


「いいのか?」


「ああ、でも危険だからこの敬章を付けてな、王竜の客分、てことになる」


「ではお言葉に甘えさせてもらう、クリル殿も1度ヘンゼルへ来て下され、観光案内してさしあげましょう」


ほう…中々興味深いな…そのうち立ち寄ってみるとするか


「じゃあヴェンデル、ゴウメイを呼んできてくれ、客分の観光案内だって伝えてくれ」


「御意に御座ります」


そう言うとヴェンデルは文字通り姿を消した


「消えた…クリル殿、一つお聞きしてもよろしいか?」


「ん?何かな」


「先程の無詠唱魔法と言い今の瞬間移動といいヴェンデルとやらは一体何者なのだ?」


「…絶対にこの情報を漏らさないって誓えるか?」


「…ああ、約束しよう」


「お前らが知っている竜種は私以外下位竜なんだよ、お前たちが知らない高位竜という存在がある、高位竜は下位竜よりも強い、数が少ないけどな、それがあのヴェンデルだ、他にも」


クリルが一息つくと、今度は大越で


「そこで聞いてるんだろウルズ!出てこい!」


ウルズを呼んだ、すると壁の中から姿を現した


「我が君、さすがでございますね、でも何故?」


「何となく直感だな、まぁこんな感じでいる訳よ、種類も多くないけど、確かに居る」


こいつ…又忍び込んでやがった…お仕置きしておかないと駄目か?


「なんと…このような者達が最初から戦場に居れば戦線はここまで後退していなかったのでは?」


「まぁ私が召喚される前の事だしな、詳しくは知らん」


「…この様な者達が居れば安心ですな」


「?」


「我々が今回同盟を結ぶ事は大きな賭けだったのだ、決して大きくは無い国が時代を生き残る為には常に決断を迫られる、勝ち馬に乗るしか無い、だが先日クリル殿の復活を知った時、竜域側につこうと考えたが…それは正解だったらしい、これから、宜しく頼みますぞ」


「おう、こっちも宜しくな〜」


なるほどな、大きく無い国が存続し続けるには常に勝ち組に乗る必要がある、私や高位竜の存在を聞いて安堵した訳か


「我が君、ゴウメイ達の準備が整いましてございます」


「じゃあ楽しんできてくれ、私はここで宴会の準備の指揮でもして待ってるさ」


「辱い、では騎士諸君、今日は私に対しては無礼講だ!呼び捨てでいいぞ、」


ウラニシスの一向は意気揚々と大広間を出て、外へと歩き出した


その夜、私たちは盛大な宴を開いた、竜達も人間と酒を酌み交わすのは初めての様子だったが酒が進むにつれて打ち解けていった


「ゴウメイ殿、いつぞやの戦場でお会いした事がある気がするのだが…」


「あぁ…我もそう思っていた、もしや“天災”の時のあの人種か?」


「おお!あの時は死ぬかと思いましたぞ!実にお強かった!」


こいつら…戦場で会ったことがあるのか…よく分からんが仲がいいのであれば止める必要なさそうか


「あれ?お前酒は飲まないのか?」


「は、私はあくまで我が君の執事でありますゆえ」


おう、こう言うところ真面目なのは素直に好感度高い、向こうの高位竜もそんな風だとよかったんだけど…


「ワインが足りないわよー!」


ウルズ…あいつって奴は…


「な、なんかあそこだけ空気が酒盛りだな」


「あれ?…あそこにいるのはミーミル…酒瓶を手に何を…」


「うー…ひっく…」


「誰だ幼女に酒呑ませたのは!!!」


ま、まぁきっと酒に対する耐性は多少あるだろう…それになんやかんだで竜達もヘンゼルの騎士達とも打ち解けているようだからまだ良しとするか、しかしウルズ、あいつは呑めればなんでも良いんじゃないかと思う


夜の帳は降りたばかりだ、さて、私も一杯やるか!


その日結ばれた同盟は私とウラニシスの連名で発表された名称にして“相互共生同盟”なんか違和感が無くもないが悪くはないだろう


さぁ、竜域の一歩が歩まれた…!

再編完了〜

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