開花
しかしその響めきは次の瞬間凪いだ
「ほう、貴様は体術を主として戦うのか、」
先程まで一方的に殴られていたウィエウスが消えその3m程後ろからもう一人のウィエウスが現れた
「んだテメェ…」
「我が分身を相手に頑張ってくれたようだな、分身とは言え我の実力の10分の1はある、褒めてやろう」
「あ?もう一回潰すだけだろうが!!」
リーデルが消え、現れた瞬間
「見せすぎだ」
ウィエウスはリーデルの後ろに立っていた
「な!?」
「1秒間に50以上の踏み込みによる高速移動…これも獣人…それも高位の存在のなし得る技か…だが未熟、現にこうして我に模倣されるのだからな」
「畜生がぁ!!」
リーデルが再び消えようとするが
「遅い」
一瞬にして距離を詰めたウィエウスがリーデルの鳩尾に手刀を打ち込む
「!?」
間一髪リーデルが体を捻りそれを避けると反動を活かしてウィエウスに回し蹴りを喰らわせる
「避けるまでもない」
ウィエウスは避けなかった、その一撃の威力は既に知っている、分身を相手にさせて学んだ筈だ…鱗が全ての衝撃を無にする、そう信じていたが
次の瞬間、ウィエウスが膝を突いた
「馬鹿な…この威力……」
「あ?変わってねぇぞ?」
〜〜〜〜〜
「ほほう…リーデルの奴…やっぱり力を隠してたな…さて、あとは打ち合わせ通りにウィエウスがもう一つの力を覚醒させてくれればいいが」
「なるほど…そう言う訳でしたか…このヴェンデル、至らぬ所ばかりです」
「いや〜…私もミーミルに言われなければ知らなかったしな」
「…しかし…リーデルが本当にスキルを?」
「らしいな…ん?なんかリーデルの目付きが変わってないか?」
「……確かに…まるで本物の獣のようですね…」
〜〜〜〜〜
(どうするか…手加減をしようにもこの小童…なかなかに強いな…我が君…少々骨が折れる命令であるな)
「たぁああああああ!!」
(又蹴りか…この一撃…毎回起動が変わる……才能の塊……流石は其方の子か…)
「はあ!!」
(この瞬間移動も……まるで其方を思い出すな…………ガルニエ…)
「はぁ…はぁ…お前から攻撃はこねぇのかよ…!!」
(………我が子を殴る、か…この霊竜の長の腕力で本気の一撃を出せば腕は無くなるだろうな…ならば腕力ではない…我の技で行こう…)
「……此ノ地二眠リシ祖霊ガ御霊ヨ我ガ命二従イ顕現セヨ…リボーンアンデット!!」
ウィエウスの詠唱の終了と共に黒い粒子を纏う魔法陣がウィエウスとリーデルの間に壁のように現れ、発動した、黒塗りの円から溢れるのは死霊、竜種の死霊だ、現れた死霊はリーデルに向かい突進する
「反魂の魔法かよ……こんなの」
(負けた……反魂の魔法なんて使えるのかよ………あの野郎…どっかで見覚えがある気もするが…気のせいか……)
「なんて言うかよ!クソが!!」
{会得 :スキル
野獣の咆哮
(ほほう…土壇場で手に入れたか……中々な器だ)
「この力……そうか…そう言うことか」
何を察したのかリーデルは左手を添え、右手を構えると
「野獣の咆哮!!」
リーデルの右手の爪が鋭く伸び、稲妻を纏う、次の瞬間その右手を閉じた
閉じた爪の軌跡をなぞるように稲妻を纏った、破霊の掻きむしりが発動し、竜種の祖霊を穿つ