讃歌
「えっと…リーデル?セレス?」
「何?竜王さん」
「……」
「これには事情がだな…」
「そんなことはわかってるよ…だから、俺とセレスに隠し事は無しで頼むぜ?クリル」
「…ああ、わかったよ」
「…行きましょう、今ウルズ達が足止めしていますが時間が来れば城下に出るでしょう…」
「ああ…ここに呼んだのは私だからな」
〜〜〜
「ったくもう!折角程良く酔って気分良かったのに〜!!」
「吐くほど呑んで程良い…か?」
「どうでもいいでしょ!そこは!私の魔法でデカイ風穴開けてやるわよ!!」
「ウルズ殿は炎の魔法を使役していたか…普段あんなでも実力があるから長なんだよなぁ」
ウルズは両手を前に突き出すと詠唱を始める、真紅の魔法陣がウルズの周囲に展開する、ウルズの瞳が1段と紅くなり、深みを増していく、下から風に吹き上げられているかのようにその長い髪が踊る
「世界二芽生シ原初ノ滅ビニシテ創世ノ爆炎ヨ、ソノ理ヲ現シ呪言ヲ食ミ、大地ヲ食ミ、空ヲ食ミ、我ガ仇敵ヲ食メ」
「!?この魔法!?馬鹿か!?王城で使うnー」
「大焔神槍…グングニル!!!」
空中に現れた一本の神槍、その槍は焔を纏い、空間を歪める程の熱量を発している
自らの危機を察したのかヨハネは2匹の白鯨を盾にするかのように並べ、自らの氷の翅で体を覆い、その上で氷の盾を幾数にも展開した
「食らいなさい!!!」
神槍がヨハネに向かって突撃する、圧倒的質量と圧倒的熱を帯びた槍は白鯨を貫き、翅を穿ち盾をかち割り、ヨハネに風穴を開け、そのまま突き進み城壁を破壊し、玉座の間に激震と風穴を与え、黒曜石でできた石畳の床に大穴を開け、地面に突き刺さりやっと止まった…周囲には衝撃で砂埃が舞う
「あちゃー…やっちゃったわね」
「ウルズ殿!!!敵が与えた損害より味方が与えた損害の方が大きいなど言語道断ですぞ!!
「大丈夫大丈夫〜、取り敢えずヨハネは倒したんだしさ〜…私も久々にこの魔法使って疲れたわ〜」
ゴウメイとウルズがやりとりをしていると砂埃が落ち着いで来た、ウルズとゴウメイは敵の消滅を信じ切っていた、あの威力と熱量を受けて立ち上がる者など一人しかいない、そう信じ切っていた…だが
「…………」
翅をもがれ、胴体に風穴が開き薄いピンクの瑞々しい果実のような内蔵をぶち撒けながらも宙に浮かぶヨハネが居た、
「嘘…だろう…ウルズ殿のあの一撃を受けて…立ち上がる者は…」
「な!?……こっちはもう魔素を操るのも怠くなって来たって言うのに…!!」
ウルズとゴウメイが動揺し、立ち空くしていると、ヨハネが口を開く、薄桃色の唇から溢れたのは
“…天に座す我らが主よ…子らに祝福を…氷の揺り籠と焔の鐘を…”
歌、独特な韻音を持つその歌は聴く者に安らぎを与える…まるで母の子守唄を聴くような…そのような安らぎを…だが強すぎる安らぎはもう一つの感情をも生む、死を受け入れ、待ち望む感情を