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社畜が転生したら竜種の王になっていた  作者: 社畜大根
竜王奇譚
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終末を与ふ氷の使徒

凍てついた森…雪が全てを覆い尽くし、吹く風に寄って舞う粉雪が視界を遮る


風のなる音だけが周囲に響いている


「クリル…流石に厳しくなってきませんか?」


吹雪に当てられながらヴェンデルがそう問いかけた、竜車を引く竜は「適応の加護」なるもので守られているらしくこの吹雪でも心地良さそうに進んでいる


「少し寒いな…でもそろそろ中心に着くだろ?墳墓のある湖に」


ヨハネが眠る墳墓、それはエルフ達の間で「星降りの湖」と呼ばれる湖の底に存在する


強い魔素に遮られた墓場は幾星霜も昔から衰えることを知らない


「はい、もう少しです…しかし周囲の集落のエルフが全滅したのも納得が行きますね…幾ら高い身体能力や魔法技術も使う前に殺されたのでは意味がありません」


「ヴェンデル姉ちゃん大丈夫なのか?幾らスキル持ちでもきついんじゃないか?」


「無理はしませんよ、ね?クリル」


「ああ…命あっての物種だからな」


凍てついた森を進んでいると不意に開けた場所に出た…そこには水面が凍て付き、鏡の様に森を反射する高大な湖があった永月を眺めてきたその湖は他とは違う神々しさを讃えている


「ここか…リーデル、セレス、竜車を頼んだ」


「おう、無事に返ってこいよ」


「心配要りませんよ…貴方達はここで私とクリルが戻ってくるのを待っていてください」


そういうと2人は凍てついた湖面を歩き出した


〜〜〜


「そろそろか?」


「はい…下に気配を感じます」


「行くぞ…竜王の鋭爪!」


叫ぶと湖面の一部が見えない大きな爪に引っ掻かれた様に一気に抉れた、氷が無くなった事で下部の水がのぞかせている


「竜王の暴食!!」


水中に暗い霧がかかる…が手応えはない


「ダメか…!?」


「クリル…これは…この気配は…直上です!!」


クリルが直上を見上げる…そこにはいた、2匹の白い巨大な鯨を従えた白い天使…ヨハネを


ーーーーー終の使徒の石版の記述ーーーーー


天、清らかなる大地に人溢るる事嘆きたまいて三柱の使徒を遣わす


終の使徒ヨハネ、その従えし二柱の白鯨にて静海を裁き、氷界を築き終末を告げる者也


その白鯨の冷気は肉体を凍りつかせ、


その歌声は魂を凍りつかせ、


その翼は来たる魂の裁きを告げるもの也


ーーーーー堕翼の使徒の石版に続くーーーーー


ヨハネは周りを泳ぐ白鯨をけしかけるように一瞥した、すると2匹の白鯨は急降下しクリルとヴェンデルに向かいながら大口を開ける


「ッチ…竜王の顎!!」


突如として現れた鰐を思わせる口が白鯨に食い付く、しかし白鯨はその瞬間霧散し、また鯨の形に戻る


「!?…ならあの本体を狙うまで!!はぁぁあ!!!」


そういうとヴェンデルは自らにアザゼルの効果を掛け体重を限りなく落とすと舞う粉雪を足がかりにし、ヨハネに肉薄する…更に己の腰に提げた片手剣にアザゼルを掛け、闇を纏った強い引力を付与するとヨハネに斬りかかる


「光をも喰らう闇を受けろ…!!」


ヨハネを中心に黒紫の斬撃が炸裂する、しかし


「な…氷の盾!?馬鹿な…氷の盾程度に防げる斬撃ではないはず!?」


今度はヨハネがヴェンデルに肉薄し精製した氷の大剣を叩きつける、辛うじてその剣撃を受け止めるも力に押し負けクリルの真横に墜落する様に着地した


「この吹雪…これで属性が強化されてるのか」


「はい…あれを倒すにはこの天候を変える必要があります」


「時間はあるんだ…焦らないで行こうや…!!」

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