竜王という名の道化
まずいな…あれから2時間たったが…全く効いてないぞ…おいメタトロン、損害はどれくらいかわかるか?
《情報の不足…おそらく半分も与えられていない》
お前の策ってやつを聞いていいか?
《ハザードスキル《竜王の顎》を使用、対象を両断、その後ハザードスキル《竜王の悪食》を使用し、対象を吸収、以上》
え?何それ、ハザードスキル?
《ハザードスキル、竜王が召喚される際アナザースキルと共に継承されるスキル》
そんなのあったのか、知らんかった
《統計によると初代竜王以外歴代竜王でハザードスキルに気付いた者はいない》
影薄いなおい!!
《同意》
まぁいいや…ちょっと任せるからさ、やってみてよ
そう答えるとクリルの体の中の2つの意識のうち、片方が消えた
《御意》
メタトロンは活動を開始した、クリルの目は紅く光り、髪の色は紅から紫に変わった、見た目の変化はヴェンデルにも伝わったようだ
「え?クリル?大丈夫ですか?」
「肯定…対象の破壊を開始する」
「えっと…はい…?」
「竜王の顎」
クリルがそう言った瞬間、ペトロの下に大きな魔法陣が現れた、黒色で鼓動するその魔法陣は、通常の魔法陣とは違う言語で書かれている
「発動」
そう言葉を続けた、すると魔法陣の中から巨大な鰐の如き顎が飛び出し、ペトロに食らいついた…ペトロの体にヒビが入ったと思うと次の瞬間、下半身が噛み砕かれ上半身のみの無残な姿に変わり果てた
「竜王の悪食」
言葉を告げ終わると共に黒い霧がペトロを覆った、その霧が解けた時、ペトロは姿を消していた
「え…?え!?」
「演習終了…」
クリルがそう呟くと、目や髪の色が元に戻ったヴェンデルが驚くのを尻目に当の本人はと言うと
「あれ?ペトロは?」
「クリルが倒したんですよ!なんですかあの大きな顎!それにあの霧も!」
「あ…そっか、うん、倒したんだなそうかそうか」
「大丈夫ですか?…まさか向こうにスキルを出させずに勝てるとは…人種の魂を大量に集められる前だから勝てたのか…」
「お〜う…あれ…なんかスキル増えたな」
「え?どう言う?」
{会得
トラジティースキル:《始まり告げる聖鐘》
:《終末を告げる焔剣》
アイテム:《ペトロコア》終末の翼(火)
アイテム?まさか取り出せるとか?まさかな…
パサッ
え?なんか今軽い物が落ちる音が聞こえた気がする
「クリル…何か落ちました…ってえええええ!?」
「え?あ、え?これ?」
そこには炎を纏った一枚の羽が落ちていた、見るものを魅了するその羽は時々纏わせる炎の勢いを増しながら鼓動している
《ペトロコア、ペトロの本体とも言えるアイテム、そのアイテムが存在する限りペトロの消滅は不可能》
じゃあまだ終わってないの?
《肯定》
ペトロとの戦いを後にしたクリルとヴェンデルは墳墓へと戻る
「リーデル、セレス、そちらに異常はありませんか?」
「!…ねぇよ…」
「…お兄ちゃん…」
「ん〜…リーデル、なんで私とヴェンデルがお前達を連れて行かなかったかわかるか?」
「それは…俺達が弱いから…」
「違うね、うん、だよな?ヴェンデル」
「はい、あれを相手に大人数で向かうのは得策ではないですし竜車がいなくなっても困りますからね…適材適所ですよ」
「…」
「そんなむくれるなって、ちゃんと戻ってきたし、次からはお前らもできる限り前に出てもらうそ〜」
「わかったよ…」
「お〜、いい子いい子、お姉さん感心ですな〜、じゃあ行くか!」
「おう!」
「リーデルときたら…クリルに頭撫でられて照れてますよ、あんな怒ってたのに」
「…お兄ちゃん…嫌い…」
「え?ちょ!セレス!」
「冗談…」
「おしお前ら、ここから早くトンズラするぞ、兵士に見つかったら面倒臭いしな」
「クリルがいうとしっくり来ますね…」
「何か女盗賊って感じだよな」
「…リーダー格の…」
「酷!?え?私そんな!?」
「冗談ですよ、さて、行きましょう」
ヴェンデルの一言で一行は竜車に乗り込み、ソウリエへの旅を続けた
「そういやペトロが復活したってことは後の2体の復活はどうなんだ?」
「…実は…次よるソウリエがその2体目…ヨハネの墳墓がある場所です」
「はい!?嘘でしょ!?」
「お〜う…マジか…」
「いや…隠す気は無かったんですが…というかこんなに早くペトロが復活するとも思わず…」
「…期間はわかるのか?ヨハネの復活する残り時間は」
「ペトロが復活して4日後に復活するはずです…ソウリエまでは後2日もあれば着きますので間に合いはします」
「ほえー…じゃあ向こう着いたら少し確認したい事あるんだけど…いいかな?」
「?いいけどよ…なんだ?」
「ちょっとスキル試したくてね〜、」
「クリルはスキル持ちなのか!良いな〜!」
「そうか?よく分かんないが」
「まぁ持ってる人は少ないですからね…」
「ヴェンデル姉ちゃんは何か持ってるのか?」
「はい、私も持ってますよ」
「すげー!じゃあそこらの野良魔物程度には負けねぇな!」
「お〜う、旅の中では心配はいらないぞ〜」
「ですが注意はしてくださいね、何があるかわかりませんから」
「あいよ〜」