社畜竜王
社畜OLが異世界転移した先では!?
どこにでもあるような至って普通なブラック企業、その1つに佐藤食品という会社があった、もやしをメインに作り、地区競走では揺るがぬ一位を保っていたが内情は黒く
「おい火取!お前この報告書なんだよおい!お前舐めてんのか?この仕事舐めてんのかおい!」
「…大変申し訳ありませんでした…」
「ったくよ!女だからって特別扱いされると思ったら大間違いだからな!?」
うっせぇよハゲ、どーせまた奥さんと喧嘩したんだろ!
「とにかく、この報告書を上に見せられる段階に仕上げるまで、お前は今日は残りだ!」
「…了解です」
〜〜〜
「お、5時、定時だな、俺は上がるが…帰ろうなんて思うなよ」
「…はい」
この就職難の中、理系の学部出たおかげで拾ってもらえたのはいいけれど…事務仕事、それに思いっきりブラックな奴…もっと面白い事ないかなぁ
「お疲れ様でした〜、火取さんも頑張ってください!」
うっせぇぞ太鼓持ち、一生上司にゴマ擦って摩擦熱で着火して燃えっちまえ
「はぁ〜、又残業かよ…今週4時間しか寝てねぇぞおい…こう言うことはやっちゃいけないんだけど…誰もみてないし良いよな…?」
確か食堂の冷蔵庫に…
「あったぞ…エサヒィ!スゥプゥジュラァイィ!!!」
〜〜〜
「やっと終わった…11時半…これから帰って…晩飯は抜きか…せめて風呂には入りたいな」
こんな時でも次の日の身嗜みのために飯より風呂を優先するって…女って大変だよな本当、良い出会いなんてあるわけねぇのに
あれから1時間程電車に揺られ、火取は帰宅した…人のいない家に火取の「只今」と言う声が響く、コートをリビングの角に脱ぎ捨て、シャツを放り投げながら考える
せめて出迎えてくれる存在が欲しいよな…ペットは忙しすぎてダメだけど…旦那は…もっと駄目だ、そもそもアテがない…考えるだけ無駄か、風呂入ろ風呂、お湯炊きのスイッチ押して…
〜〜〜
「やばい…起き上がれない…体が…動かない、沈むの…止められない」
どれくらいの時間が経っただろう…風呂が沸き、火取は湯船に入りその中で力尽きた…頭では起き上がろうとしている…だがそれが出来ない程体が疲労していた、
ガボッ 口に水が入ってくる、起きなければ…そう焦る気持ちとは裏腹に体が言う事を聞かず起き上がれない、
段々と薄れて逝く意識の中、今際の際に火取が思ったものは愛する人でも無く、友でもなく、ましてや家族ですらなかった…それは
明日の資料提出…出鱈目な資料を出してやった……赤っ恥掻きやがれ豚親父
…
……
………
…………何時間が経っただろう、火取の薄れていた意識が戻り、目を開けた
ん?家の天井あんなに高かったか?それになんか洞窟っぽいし…ってか寒!なんかお湯も薬草臭いし!え?何これ骨?骨なんか湯船に入れたっけ…?てかどこよここは
「目覚め為されたぞ!さぁ、祝え!我等が主人、我等が仕えし王竜の復活を!!侍従長はお召物を!!!メイド達は天幕を引け!!!」
何言ってんだこいつ…頭おかしいカルト宗教にでも捕まったか…さて、選択肢は、
1、逃げる
2、逃げる
3、逃げる
よし、ここは4の逃げる、だ…でも全裸だしな〜、いやだな〜、サイズ小さくはないけど威張れる大きさでもないしな〜、ん?なんか最後竜って言った気が…
「おっと、我が君よ、これはこれは失礼しました、私めはヴェンデル、王の盾にして剣、声にして力、その意向を指し示し、具現化する存在でございます」
囲むように立てられた即席の天幕、その中に一人の女性が立っていた、黒を基調にし、所々金色の刺繍がアクセントとなっている執事服を着たいかにも優秀そうな、美しく凛々しい女性が立っていた、どこから見ても万民が思い浮かべる竜ではない、ただ一箇所、長い黒のロングヘアから覗かせる漆黒の双角を除いて
「えっと…ヴェンデルさん…?あんたなに言ってるんだ…?」
「王に名前を呼んで頂けるとは…何たる光栄!、はっ!失礼致しました、混乱為されるのも無理はありません、我が君は召喚されたばかりでございますので」
「召喚?」
「はい、我等が竜族の王、132代目アジ.ダ.ハーカ様として、別世界からその御霊を召喚致しました、我等竜種は先代アジ.ダ.ハーカ様の御崩御以降、かねてより竜種を隷属化しようと目論んでいた人種からの侵攻を受け、不可侵領域近くまでの侵攻を許してしまいました、そこで、竜種の絶対的な存在、王竜陛下の復活を行い、貴方様の御霊をお呼び寄せした次第で御座います」
「普通竜って人間より強いだろ」
「はい、しかし、絶対的な存在、王竜が存在して初めて魔物を統べる王…世界最強種である竜種が竜種足り得るのです、」
火取「そんなもんかねぇ」
「竜種はその有り余る力の多くを同種での小競り合いに使ってしまいますからね…人種のような連携行動は不向きなのですよ」
「ほえ〜、でさ、一つ質問なんだけど竜種っていう割にお前人に近い姿してるよな」
「さすが我が君、良い点にお気付きになられました、高位の竜種《王竜》《古竜》《瘴竜》《神龍》の4種は人の姿を取り、中には[アナザースキル]を持ち得る存在も存在致します、私めは《瘴竜》で御座いますので人の姿を取ることが出来ます、」
「高位竜ねぇ…因みにヴェンデルさんは[アナザースキル]って何か持ってる?」
「は、私めは重力子の王を所持しております」
「へ〜、なんか凄そうじゃん、私は何持ってるか分かる?」
「我が君、それは他者が知る事は出来ません、ですが我が君は知ることができます、」
「へ?」
「頭の中を静かに、凪いでいる状態に為さってください、その名状が出てくる筈です」
「凪いだ状態ね…そう簡単に出てくる筈ないかな」
理の王
「うわ、なんかうかんだ」
「失礼ながら名状をお聞きしても宜しいでしょうか?」
「ああ、なんか理の王て」
「…恐れながら申し上げます、未だ聞いたことのないスキルで御座います、」
「謎か〜、まぁ面白そうではあるな」
「流石は我が君、度胸がお有りで」
「…で、もう1つ聞くがまず私は何をした方がいい?」
「は、前線にて戦闘中の同胞たちに王の復活を知らしめる凱旋に出て頂きたいのです、出来ればそこでスキルもお披露目して頂ければ、と」
「凱旋は良いとして…スキルのお披露目はどうすりゃいいんだ?」
「戦場でドカンと1発、大きいのをお願い致します、」
「うぃー」
「さて、早速ですがまず参りましょう侍従長!!我が君に相応しいお召物を!!」
「は、筆頭執事様」
「では、お召物を身につけられましたらお呼びくださいませ、僭越ながら私めが案内役を務めさせていただきます…」
あー…私まだ全裸だったの忘れてた…
ーーー
さて、我が君、こちらに御座います、」
ヴェンデルに誘われ私は戦場を見下ろせる小高い丘に来た
「すごいな〜、そこかしこで火柱とか上がってるけどあれもスキル?」
「いえ、あれは魔法で御座いますね、竜種には効きが悪いので目眩し程度です」
「魔法なんてもんもあるのか〜、で、スキルを使えばば良いんだよな」
「はい、ではまず手始めとして私めの重力子の王を発動させてご覧に入れます」
ヴェンデルの体の四方に立体的な魔法陣が展開される、蒼黒い文字列で構成された1つ1つの魔法陣は、まるで生きているかの如く脈動している
うわ…なんか圧を感じるな
「散れ」
一段と低い声でそう呟くと敵陣地にヴェンデルの体の周りに展開している魔法陣と同様の魔法陣が展開される、違う点は圧倒的に大きい点だろうか
すごいな…見てるだけで威力が伝わる…ゾクゾクとするこの気配…先頭に関して素人の私でさえわかる、間違いないこの人は…強い
「え?今の何やった?」
「重力のかかる強さ、方向の2つを変動させました、加圧を数倍にし、下方からも圧をかけ木っ端微塵で御座います」
「すげ〜、でもそんなスキルがあるなら私要らなくない?」
「いえ、そのような事は決して御座いません、我が君の御力は私めなどとは圧倒的に違う次元であられるはずです」
「効果不明だけどね〜」
「ささ、どうぞ、1発派手に」
「いやいやいやいや、どうすりゃええの?」
「…難しい質問で御座いますね、まるで呼吸の仕方を聞かれてるようなもので御座います
、どうかご容赦を、」
「呼吸ねぇ〜、」
理力の王…理を読み、操る力…?うわぁ…咄嗟の応用が出来ねぇ…面倒くさ…いや、定義や常識を理と仮定して…うん、良いね
「と〜う」
魔法陣は出ない、失敗したか等と考えていると気付く、自らの背後に先程ヴェンデルが出現させた魔法陣より数回り大きい、金色の魔法陣を展開させていた
「へ…?」
「うわー、なんかすごいの出た」
「わ、我が君は何をお考えに…?」
「いやー、敵さんを生かして捕らえたいけど雑魚(私基準)はいらないよな〜、とか考えたらこうなった」
「全滅させる気で御座いますか…流石我が君、豪快で御座います」
「え?」
「今世でのアジ.ダ.ハーカ様は世界最高戦力の一角で御座います故」
おいおい…そう言う事は初めに言えよ
そうこう言っている間に魔法陣が発動した、光の奔流が流れ込む、
惨禍…それでもその全てを表す事は出来ない、神々しい光からもたらされる死の災い
それは竜達を避け、人にのみ降り注ぐ、均等に、平等に…いずれ来る死の先取りのように
「マジで全滅かよ…」
「流石我が君…わざと強い部類を残しておいた筈ですが…それほどまでに…!!」
地面は抉れ、一部は硝子化し、圧倒的熱量が発せられた事を示す
{会得
:火槍
:水槍
:風槍
:竹槍
:火刃
:水刃
:風刃
{統合、昇華
:火、操流
:水、操流
:風、操流
{入手、魂(人種)×40000
{スキル統合
(会得)竹槍と(入手)魂(人種)×1000を使用 スキル統合《猛攻の弱者》
「なんかさっきから頭の中で統合とか入手とか言ってるんだけど」
「それこそが我が君の王竜と言われる強さの秘訣で御座います、屠った者の力を強奪し、統合、昇華する、王竜のみが持つ力で御座います」
「へ〜、なるほどね〜、じゃあこれで戻って良い?」
「はい、下の下位竜達にも王の復活とその力を確と認識した筈で御座います」
「じゃあ行くか〜…!?」
「御…誰だ!!」
ヴェンデルがそう叫ぶと同時に火取の目の前に2人の女性が現れる、片方は白いワンピースを着た、真紅の目とショートの銀髪に映える黒い双角が特徴的な、冷たい氷のような印象を受ける少女、もう片方は黒いドレスを着飾り、紅いロングヘアが特徴的な所謂美女…しかし酔っ払いのようで酒瓶を手にしている
「あまり驚かさないで下さい、ミーミルにウルズ、」
「…」
「悪いわね〜、新しい王竜がどんなだか気になっちゃって」
ミーミルと呼ばれた銀髪の少女は沈黙を、ウルズと言われた美女は軽口を持って答えた、
「ウルズ!我が君と呼べ!そして酒を慎め!」
なんだこいつら、ヴェンデルの話し方から考えられるのは部下…か?
「はいはい、ヴェンデルちゃんそんな怒ってるとシワが出来るわよ、我が君、お初にお目に掛かるウルズと申すもので御座います、一応古竜の長を勤めさせて貰ってるわ何かあったら私めを頼って下さいな」
「…ミーミル、神竜の長…です」
「宜しく〜、取り敢えず敬語やめて貰って良いかな?なんか話し難い」
「では失礼致します、あんた、こっちの世界に来たばっかなのに全く動じてないのね」
「ウルズ!」
「良いよヴェンデル、それにこっちも呼び捨て、渾名、タメ口使うし、えっと、何故こっちの世界に動じて無いかって?こっちくる過程で1回死んでるんだし別に怖いものはないな」
言えねぇ…敬語嫌いなんて口が裂けても言えねぇ
「一番重要な事を聞くわ…?」
…なんだ…意外にまともな奴なのかも知れないな
「お酒は好き?」
「大好き」
そこかよ!!
「良い主人を持ったね、じゃ、私はこれで、今度一緒に一杯やりましょう?」
そう言うとウルズと名乗った美女は消えた、それに続きミーミルの方も消える
「なんかクセがありそうだね」
「申し訳ありません、後ほどみっちりと指導致しますゆえ」
「大丈夫だって、気にしない気にしない!てかさっさと戻ろう、なんか初めて魔法使った反動かわからないけど怠くなってきた」
「御意」
〜〜〜城に戻る〜〜〜
「さて、次は何をすれば良い?」
「城下への凱旋で御座います、準備も整って御座います」
「やんなきゃだめ?」
「はい」
「うぃー、あ、それと」
「は?」
「敬語は良いから、」
堅苦しいのは苦手だしな
「それは命令で御座いますか?」
「うん、そう」
「それが我が君の意思ならば」
「んじゃ行くか〜」
「ええ、とっとと終わらせましょう」
「めっさ変わった!」
「お気になさらず」
王城中庭に降りると禍々しくも豪奢なばしゃg馬車が用意されていた
「なんか滅茶苦茶豪華じゃん」
「我が君が乗るのですから当然です…私も側に控えております故、ご心配なさらず」
「お、おう」
「このドレス露出激しいな」
「気にしたら負けです、さて、門が開きます、顔を引き締めて、凛々しく、そう、もっと悪どい顔に」
「お前遊んでるだろ!」
ちょっと怒ったぞ、少し揶揄ってやるか
「お前って笑うと可愛いよな、私が女なのが残念」
「な!?我が君!執事を揶揄うものではありませんよ!」
顔から湯気が立ち込めるように顔を赤くするとそう言ってヴェンデルは火取につかみかかる
「お返しだよ!おい!手ぇ離せ!ドレス破けるだろ!最初の礼儀正しいヴェンデルはどこ行った!」」
ビリッ、という音とともにドレスの前部分が派手に破ける、それと同時に門が開き切り、大衆の目に新き王竜の姿が映し出される、当然ドレスの性質上下着などは着用しておらず結果的に身体の前部分を曝け出す事となり
「きゃああああああああああああああああああ!」
「嘘だぁあああああああ!我が君の乳が!大衆の目に!」
ヴェンデルが叫ぶと同時に火取の風操流によって門は再び閉ざされた
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