グラス
お気に入りのグラスに
売ってるやつじゃない
冷凍庫でできた氷をいれて
水道水を注ぐ
ほんのすこしのカルキの匂い
眠れない夜のおまじない
一瞬想い出す笑顔
まんまるの目が首をかしげる
白い白い服
あの頃もそう、変わらない
眠らないためのおまじない
ほんのすこしのカルキの匂い
煙草の乾杯の前のおまじない
部屋の窓から見たきれいな月を
ひとり見ていた
あなたは大切な人と
見るだろう
一番じゃなくていい
唯一じゃなくていい
いつか忘れられても
ブカブカのガーデで
歩く姿を覚えていて
カラン、音がした、氷が溶けた
私は何もなかったように
グラスを洗って
砂嵐のTVをつけて
少しだけ泣いた
おきに入れのグラスで祝杯を