第95話 隠れ蓑と買取依頼
_:(´д`」∠):_「二度転生の重版分がアマゾンさんの在庫にも届いたみたいで一安心ですー」
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「りゅ、龍帝様ぁー! どちらに行かれたのですかぁー!?」
僕達を求めて町の人達、主にお年寄りの人達がウロウロと動き回っている。
「うーん、参ったなぁ」
僕は今まさに僕を呼んでいたお爺さんの横を通り過ぎながら独りごちる。
「何でこんな事になっちゃったんだろう」
「「「「何をいまさら」」」」
後ろを見るとリリエラさん達がジト目で僕を見ている。
「ゴールデンドラゴンなんかに乗ってきたらトラブルになるのは目に見えていたでしょうに」
「あはは、まさかあんなにスピードを出すとは思っていなかったもんで。やっぱり本職の竜騎士でないとドラゴンは上手く操れませんね」
竜騎士はドラゴンと契約を結ぶ事でドラゴンを手足の様に操るという。
だから契約を結んでいない僕じゃあそこまでドラゴンを上手く従える事は出来ないのは当然だ。
「そうじゃないから。問題はそこじゃないから」
あれ? 違うんですか?
「っていうか、私としてはこんな騒ぎになっている街中を堂々と歩いているのに誰にも気づかれないこの状況の方が気になるんだけど」
と、ミナさんが言う通り、僕達は騒ぎになっている街中を普通に歩いていた。
「さっきも言いましたけど、姿隠しの魔法を使っていますからね」
そう、僕達は今姿隠しの魔法で自分達の姿を隠していた。
ゴールデンドラゴンを見た人達は突然パニックに陥って僕達を龍帝と勘違いした。
そしてゾンビの大群もかくやと言った様子で群がってきたので、僕はゴールデンドラゴンに龍峰に帰るよう伝えると、飛行魔法で皆と共にその場から飛び去った。
そして町の外の人気のない場所まで避難した後で、姿隠しの魔法を使って町の中に戻って来たのだった。
ちなみにこの魔法は以前リリエラさんの故郷の人達を騙した詐欺師を追跡する時に利用した魔法だったりする。
「目の前に居るのに気づかれないなんて、とんでもない魔法ね」
「この魔法が心無い人間に悪用されたらと思うと、ぞっとしませんねぇ」
「まぁその心配はないでしょ。こんなデタラメな魔法、レクスくらいしか使えないから」
「いやいや、皆も練習したら使える様になるよ」
「無理だと思います……」
ノルブさんはそういうけど、皆無詠唱魔法にも慣れて来たし、こういう変則的な魔法にチャレンジしても良い頃だと思うんだよね。
「スゲェぜ兄貴。攻撃魔法だけじゃなく、こんな魔法まで使えるのかよ!」
「敵地で単独活動する事を考えると、こういう魔法も覚えておいた方が良いよ」
「うん、偵察の為にぜひ覚えたい」
ジャイロ君達は感心したり興奮したりと忙しいね。
「でもぶつからない様に気を付けてね。接触すると見つかっちゃうから」
「まぁそのくらいのリスクが無いとこんなデタラメ魔法信じられないわよね」
なんて事を話しながら僕達は無事宿へ戻る事に成功したのだった。
◆
そして翌日、僕達は興奮冷めやらぬ街の人達に見つからぬよう、姿隠しの魔法を使って冒険者ギルドへとやって来た。
目的はドラゴンの素材の買い取りだ。
「冒険者ギルドへようこそ」
外の喧騒なんて知らないとばかりに、受付嬢さんは落ち着いた様子で僕達を迎える。
さすが冒険者ギルドの職員、これだけ町が騒ぎになっても自分達は職務に集中って訳だね。
まぁ、たかがゴールデンドラゴンの子供に乗って来たくらいで騒ぐような職員も居ないだろうからね。
前世でもゴールデンドラゴンと契約した竜騎士が普通に馬車気分で町までやって来ていたもんなぁ。
「すみません、魔物素材の買い取りをお願いしたいんですけど」
「かしこまりました。それではそちらの査定台に買い取り希望の素材をお並べ下さい」
ああ、このあたりいつものやり取りって感じで落ち着くなぁ。
「ええと、ちょっと数が多いので解体場の方で査定をお願いしたいんですけど」
「まぁ、査定台に乗らない程だなんて随分と頑張られたんですね。解体場はあちらの扉の向こうにありますから、この木札を解体場の職員に渡して査定を頼んでください」
僕は受付嬢さんが差し出した年季の入った木札を受け取る。
よく見ると木札には番号が書かれている。
「ありがとうございます」
「うふふ、これからも頑張ってくださいね」
◆
扉を開けて解体場へと入ると、強い血の匂いが鼻を刺激する。
僕は近くに居た職員さんに木札を掲げながら査定を申し込む。
「すみません、魔物素材の査定をお願いします。ちょっと数が多くて申し訳ないんですが」
「ん? 見ない顔だな。新入りか?」
「ええ、この町は初めてです」
「ほう、初めてで解体場査定とはなかなか気合の入った連中じゃねぇか」
「何で解体場で査定を頼むと気合が入っている扱いになるんでしょう?」
「解体場を使うって事は、大物を狩ったか大量の獲物を狩って来たからよ。普通の冒険者はそんな大物を狩るなんてめったにないし、魔法の袋を持っていなかったら大量に獲物を狩るのも難しいわ。だから解体場を使う程の冒険者っていうのは、一種の目安になるのよ」
と、リリエラさんが教えてくれた。
「成程、さすがリリエラさんですね。情報通だ」
「いやいや、こんなのギルドで仕事をしていれば自然に身につく知識だから」
謙遜するなぁ。
「お前等の木札の番号は……7番か。7番ならそこの一角だな。壁に7って書いてあるだろ? 並べ終えたら中に戻って待ってろ。お前等は7番だから結構時間がかかるぞ。なんなら飯を食いに行っても良いかもな」
ああ成る程、木札の番号は受付番号だけじゃなく、素材を置く場所も兼ねているんだね。
そして解体を待っている間に待ち時間まで教えてくれるんだから親切な職員さんだね。
「じゃあ並べようか皆」
「「「「「はーい」」」」」
◆
「さて、次でひとまずは終わりだな」
今日は珍しく朝から解体場が混みあっていた。
おそらく例の祭りに参加する連中が最後の仕上げとして魔物相手に調整を行っていたからだろう。
「おかげでギルドに素材が集まるのは良いんだが、俺達解体師にしわ寄せが来るのはなんとかならねぇもんかねぇ」
どうせ運ばれるのはそこそこの強さの魔物程度。
本番の祭りがある以上、無理して怪我をしたくないのは分かるんだがなぁ。
「どうせならドラゴンでも狩ってこいってんだ」
そういえば、数日前に町にはぐれドラゴンが襲来したって話があったな。
まぁ俺達ゃ解体作業に手一杯で外の事なんざさっぱり気づかなかったが。
しかもその時襲ってきたドラゴンはたった一人の女冒険者に退治されたって話だが、本当なのかねぇ。
町の爺ぃ共が龍姫の再来だって興奮していたが。
「もし本当なら、ウチに解体依頼が来そうなものだがな」
こないって事は、ドラゴンを倒したって話も眉唾モンだろうな。
精々ワイバーンあたりだろう。
まぁワイバーンを単独で討伐しただけでも結構な実力者なのは間違いないんだが。
「なんてボヤいても始まらねぇか。さっさと残りの解体を終わらせて酒でも飲みに行くか」
そして俺は最後の解体依頼の場所へと向かう。
「確か7番だったな」
7番の広場を見ると、なにやらカラフルな山がそびえたっている。
「おうおう、随分と張り切って狩ったもんだ」
とはいえ、最後にこの量は気が滅入るねぇ。
「ええと……こいつはドラゴンか。それもブルードラゴンやレッドドラゴンまで居やがるなぁ。おいおい、あの黒いのはもしかしてブラックドラゴンか?」
見ればそこに積まれていたのはすべてがドラゴンだった。
まぁ中にはワイバーンの姿もあったが、こいつも普通の人間から見たらドラゴンみたいなもんだ。
あと山の麓になんか金色に輝く鱗のような形をした金塊も置かれている。
おいおい何だこりゃ?
「しかしドラゴンの山とはなぁ。どうせならドラゴンでも狩ってこいとは言ったがこの数は……」
とそこで俺は妙な違和感を感じた。
なんだ? 何がおかしいと思ったんだ?
確かに山盛りのドラゴンは面倒な仕事だが、多い日の仕事量を考えれば決して多すぎるって訳でもない。
まぁ体がでかいから大変なのは確かだが。
「普通にドラゴンの解体だよなぁ……ん? ドラゴン?」
俺はもう一度山を見る。
緑のドラゴン、青いドラゴン、赤いドラゴン、宝石みたいな鱗のドラゴン、黒いドラゴン……そして金色の鱗。
「ドラ……ゴン?」
そう、ようやく俺はそれに気づいた。
この7番の広場に置かれた魔物は、全てがドラゴンだったという事に。
「え? ちょっと待て。え? ドラゴン? これ、全部、本物の、ドラゴン?」
俺は更にもう一度7番の広場を見返す。
ドラゴンだ、全部ドラゴンだ。
疑いの余地なくドラゴンだ。
「ド、ドドド……」
見れば周囲の連中も仕事の手を止めてキョトーンとした顔でこっちを、正しくはドラゴンの山を眺めている。
ああ当然だ。
だって、これを見たら誰だって二度見する。いや三度見する。
あまりにも異常な光景過ぎて頭がそれを異常だと認識できなかったんだからな。
だから俺は、自分の頭にこれが現実だと教える為に、こう叫んだ。
「ドラゴンの山ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
そう、これは、ドラゴンの、山、だった。
解体師:(;゛゜'ω゜'):「ナ、ナニコレーッ!?」
モフモフ∑(:3)∠)_「すみません、次回更新は17日と言いましたが少しズレます。とりあえず今週中には更新します」
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