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第94話 皇の帰還

_:(´д`」∠):_「遅くなりましたが、新年二話目の更新です」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「よし、これで角も整ったぞ!」


 モフモフとゴールデンドラゴンのじゃれ合いを止めた後、僕はゴールデンドラゴンの角と鱗を削って整えていた。


「グルルルゥ……」


 生え放題伸び放題だった角と鱗が整って、ゴールデンドラゴン自身もさっぱりした感じだ。


「なんか悲しそうな鳴き声ね……」


 え? そんなことないと思うけど?

 前世でも竜騎士達が角や鱗の手入れをした時と同じような声を上げているし。


「キュウッ」


 見ればゴールデンドラゴンの足元でモフモフがさっぱりしたな、といった感じで前足をポンポンと軽く叩いている。


「ゴールデンドラゴンの光は体表の角や鱗に含まれる発光物質と自身の魔力が反応して起こるんです。だからこうやって手入れをすれば発光は抑えられるんですよ」


さっきまでは本当にピカピカと眩しくてたまらなかったもんなぁ。

 でも手入れをした事で、今のゴールデンドラゴンの体は適度な発光に抑えられている。

 やっぱ手入れは大事だよね。

 毛並みならぬ鱗並みって感じかな。 


「本来ならゴールデンドラゴンの体の手入れは親が教えるものなんですけど、このゴールデンドラゴンは角も鱗も伸び放題で、親に手入れの仕方を教わった様子もないんですよね」


「じゃあこのゴールデンドラゴン、親が居ないのかしら?」


「事故か他の魔物との縄張り争いに負けたか、理由は分かりませんがおそらくそうだと思いますよ」


「そっか……」


 心なしか、ほっとした様子のリリエラさん達。

 

「でもある意味では運が良かったかもしれませんね。ゴールデンドラゴンの素材はなかなか優秀な素材になりますから手入れをしていなかったおかげで結構な量の鱗が手に入りましたよ」


 前世だと一部の地域じゃあ素材竜を殺す事は禁止されていて、殺さずに倒した後で素材を削り取ったら逃がすっていう狩猟ルールが制定されてたらしく、冒険者さん達が狩りに来ても綺麗にトリミングされた素材竜ばかりで骨折り損だったと聞いた事もある。


 おかげで当時の冒険者さん達は少しでも多く鱗を削りつつ綺麗な見た目を維持する為に、トリマーの技術を磨くのに切磋琢磨していたらしいんだよね。


 そう考えると現代はドラゴンの個体数も回復したみたいで、狩るのが楽だなー。


「神話に出て来るドラゴンなのに単なる便利素材扱いかー」


 実際素材竜って呼ばれてましたから。


「それもレクスらしい。あと削り取った鱗がキラキラでとっても綺麗。まるで金の塊」


 メグリさんにとってゴールデンドラゴンの鱗は素材というよりも宝石みたいな扱いなんだね。


「実際、ゴールデンドラゴンの鱗は金で出来ていますからね」


「「「「「金!?」」」」」


 金と聞いて、皆が目を丸くする。


「厳密にはただの金じゃなく、ミスリルの様な魔法的な触媒になる魔法金といった物質なんですけどね」


「つまり凄い金!」


「あはは、そんな感じです」


 ◆


 ゴールデンドラゴンを降したからか他のドラゴン達が襲ってこなくなったので、僕達はこれまで倒したドラゴンを魔法の袋に詰める作業に没頭した。


「これで最後だね」


 最後のドラゴンの死骸を魔法の袋に納めた頃には太陽も随分と傾いていた。


「さて、そろそろ暗くなってきたし帰るとするかな」


「そうね。もう一生分ドラゴンと戦ったわ」


 リリエラさんが心底疲れたと溜息を吐く。


「ああ、俺達本当に竜殺しになったんだよなぁ……」


 リリエラさんの言葉に、ジャイロ君が今だ興奮冷めやらぬ様子で呟く。


「しかも兄貴は伝説のゴールデンドラゴンを舎弟にしちまうし、ほんっとうに兄貴は凄ぇぜ!」


 いやいや、そんな大層な相手じゃないよ。

 所詮はゴールデンドラゴンの子供だしね。


「それにしても、信じられない位ドラゴンの素材も集まったわね」


 魔法の袋を呆れた様な表情で眺めながら、ミナさんがそんな事を呟く。


「お宝が沢山! ぜったい凄いお金になる!」


 確かにメグリさんの言う通り、何故かこの時代ではグリーンドラゴンの素材ですら金貨数千枚もの大金で取引される。

 おかげで僕も家を買えるくらいの大金持ちになっちゃったんだよね。


 やっぱり前世で構想が練られていたドラゴンの狩猟制限が実行されたからなんだろうな。

 もしかして、皆がドラゴンをヤバイヤバイって言うのも、国が狩猟制限のための広めた方便だったりするのかもね。


「それじゃあ帰ろうか」


「グルルルルォォ……」


 僕達が帰ろうしたその時、ゴールデンドラゴンがうなり声をあげた。

そして僕の前に来ると頭をペタンと地面に付けたんだ。


「グォゥ」


「もしかして、町まで送ってくれるの?」


「グルゥ」


 どうやらそうらしい。

 もしかしたら、鱗の手入れをしてもらってサッパリしたお礼なのかもしれないね。


「そうだなぁ、僕は大して疲れていないけど、皆はもう疲労困憊って感じだし折角だから乗せて貰おうかな」


「「「「「え”っっっ!?」」」」」


「いやいやいやいや! それはマズイと思うわレクスさん!!」


「そ、そうよレクス! ドラゴンに乗るとか危ないわよ!」


「大丈夫ですよ二人共。馬車みたいなもんですから」


「いやいや、馬車違う。絶対違う。危険度が段違いに違う……」


 馬車が苦手なのか、メグリさんが脂汗を浮かべながら首をブンブンと横に振る。

 あっ、ドラゴンは空を飛んでいるから、万が一落ちたら大変って言いたいのかな?

 

「大丈夫ですよメグリさん。いざとなれば皆飛行魔法が使えるじゃないですか」 


「ち、違う、そ、そういう意味じゃ……」


「うぉー! 伝説のゴールデンドラゴンを馬車代わりにするなんて! さすが兄貴っ!!」


「アンタは黙ってなさい馬鹿!」


「おぼぉっ!?」


 うわ、興奮して声を上げたジャイロ君の脇腹に、ミナさんの鋭い肘撃ちが叩き込まれた。

 魔法使いなのに良い動きしてるなぁ。

 ミナさん格闘戦もイケるかもしれないね。


「だからね、えーっと……そう! ドラゴンよ! ドラゴンが町にやってきたら皆パニックになるわ!」 


「そ、そうですよ。つい先日もドラゴンが襲ってきたばかりなんですから、そこにドラゴンのボスであるゴールデンドラゴンがやってきたら……ええと、ほら子供がビックリして怪我をするかもしれないじゃないですか!」


 成る程、さすがノルブさんだ。

 いくらゴールデンドラゴンの子供が大した事がなくても、小さい子はそんな事分からないもんね。

 大きな生き物が突然目の前に現れたら慌てて逃げ出そうとして転んでしまうかもしれない。

 小さい子が怪我しない様にという心使い、さすがは冒険者になってまで多くの人を助けようとする僧侶だけの事はあるね!


「分かりました」


「分かってくれましたか……」


「じゃあ町の近くで下ろして貰いましょうか」


「「「「分かってなぁーいっっっっ!!」」」」


「ほらほら、皆早く乗って。もうモフモフは乗っていますよ」

 見れば既にモフモフはゴールデンドラゴンの頭の上に乗って準備OKだ。


「いやほら、私達飛行魔法使えるし……」


「駄目ですよ。皆はまだ夜の空を飛んだ経験はないじゃないですか」


 そう、夜の空を飛ぶのは危険なんだ。


「夜の空は暗いから、飛行能力を持った魔物や背の高い木、それに山の峰なんかにぶつかる危険があるんです」


「そうなの?」


「はい。だから夜間飛行は専門の訓練を積んで慣れた人間でないと危ないんですよ。何より暗い夜空は地面と空の区別が付きにくいですから、調子に乗ってスピードを出していたらうっかり地面に激突するなんて危険もあるんです」


 それが原因で前世では暴走飛行魔法集団、通称暴空団がよく地面に激突して医者に運ばれていったなぁ。


「ここから徒歩で町まで戻るのはキツイぜ兄貴」


 ジャイロ君が遥か彼方に見える町を見て嫌そうに呟く。


「確かにドラゴンとの連戦の後に徒歩で帰るのは辛いかも……」


 ドラゴンに乗るのが嫌そうなメグリさんも、帰りの道のりを見て呻く。


「だからゴールデンドラゴンに町の近くまで運んでもらった方が良いですよ」


「「う~~~~~~~ん」」


 リリエラさんとミナさんが眉間にシワを寄せて唸る。


「ええと皆さん、ここは間を取って町からある程度離れた場所で下ろして貰うのはどうでしょうか?」


 とそこでノルブさんが折衷案を出す。


「ま、まぁそれなら……」


「私達が乗っていたと分からない距離ならアリ……かな?」


 リリエラさんと皆さんが何とか納得した事で、ようやく僕達はゴールデンドラゴンに乗って帰る事になった。


 ◆


すっかり暗くなった夜空を、光り輝くゴールデンドラゴンが駆ける。


「うぉー! すげー! 滅茶苦茶速ぇーっ!」


「キュウキュウ!」


 ジャイロ君が興奮した様子で叫ぶと、ゴールデンドラゴンの頭の上に居るモフモフも上機嫌で鳴き声をあげる。


「グルォォウ!」


 ゴールデンドラゴンも自分の翼を褒められて上機嫌に鳴き声を上げる。

 そしてバッサバッサと翼を羽ばたかせて速度を更にあげた。


「うぉ!? まだ速くなるのかよ!?」


 更にスピードが上がった事で、ジャイロ君が驚きの声をあげる。


「キュキュウ!?」


「グルル」


 モフモフが驚きの声を上げると、ゴールデンドラゴンはニヤリと笑って更にスピードを上げる。


「ねぇ、こんなにスピードを出して大丈夫なの? 夜に飛ぶのは危ないんでしょ?」


「ああ、大丈夫ですよ。ゴールデンドラゴンは自身が発光して周囲を照らすから、夜空を飛ぶには便利なんですよ」


 灯りいらずのゴールデンドラゴンってね。


「伝説のドラゴンを松明みたいに言われても……」


 まぁ実際、前世でもレッドドラゴンの様な灯りを自前で用意できるドラゴンは夜間の乗り物として重宝されていたんだよね。


「ところでそろそろ町も近くなってきたし、このあたりで降ろしてもらった方が良いんじゃない?」


 と、リリエラさんが心配そうに言ってきたので、僕はゴールデンドラゴンに着陸の指示を出す。


「この辺で下ろしてくれるかい?」


「グルォォォ!」


 ゴールデンドラゴンが分かったと返事の雄叫びを上げると、その体が地面に近づいてゆく。

 そして地面に4本の足が接触したのだけれど、ゴールデンドラゴンの体は止まることなく地面を削りながら前へと滑っていく。


「ちょっ、これ大丈夫なの!? なんか滑ってるんだけど!?」


 うん、これは調子に乗ってスピードを出し過ぎたのが原因だね。


「というか町! 町にぶつかる!!」


 ミナさんが慌てた様子で前方の町を指さして叫ぶ。

 確かに、このままだと町を守る防壁にぶつかってしまうね。


「大丈夫ですよ、チェインエアリアルクッション!!」


 僕は前方に大きな空気のクッションを縦に複数生み出すと、ゴールデンドラゴンをそこに突っ込ませた。

 空気のクッションに飛び込んだ事でゴールデンドラゴンの速度が大きく落ちる。

 けれどこの巨体を止める程の力はなく、ゴールデンドラゴンはすぐに空気のクッションを突き抜けてしまう。

 しかしゴールデンドラゴンの体はすぐに次のクッションにぶつかる。

 こうして連続して適度な抵抗の空気のクッションにぶつかる事で、背中に乗っている僕達が吹き飛ばされる事無く段階的にゴールデンドラゴンは速度を落としていった。

 そしてゴールデンドラゴンは、無事町の入口手前でその巨体を止める事に成功したのだった。


「うん、丁度いい位置で止まったね」


 ゴールデンドラゴンが体を伏せて僕達が降りやすい姿勢をとる。


「送ってくれてありがとう」


 そう言って頭を撫でてやると、ゴールデンドラゴンが嬉しそうに唸り声を上げる。


「グルォォウ」


「じゃあ宿に戻りましょうか」


 名残惜しそうなゴールデンドラゴンから離れ、町へと向き直る。

 そして門から見える町の中には、何故か時が止まったかのように動きを止めている町の人達の姿があった。


「あれ? どうしたんですか皆さん?」


 町の人達だけじゃない、門の外で護衛をしている衛兵さん達まで固まっていた。

 何コレ? まるでバジリスクの石化の邪眼でも喰らったみたいな固まりっぷりだ。


「あのー、どうしたんですか衛兵さん?」


「……」


 けれど衛兵さん達はこちらの質問に全く答えない。

 まさか本当に何者かの攻撃に遭ったのか!?

 僕達が町を離れている間に大変な事が起きたのかもしれない!


「……ゴ」


 ん? 今声が聞こえたような?


「ゴ、ゴゴゴゴ……」


 あ、門の奥にいるお爺さんが喋った。


 良かった、何者かの攻撃を受けて動けなくなったわけじゃないみたいだ。

 でもだとしたら町の人達はなんで動かないんだろう?


「ゴール……デン……ゴールデン、ドラゴンじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「「「「「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」」


 お爺さんの言葉に続くように、町の人達が一斉に叫び声を上げる。


「あー、やっぱりこうなったかー」


「これは言い訳が大変ですねぇ」


 何故か後ろでリリエラさん達がしみじみと呟いている。


「皆ものすごい興奮っぷりだけど、金になる素材龍がやってきたから喜んでいるのかな?」


 素材竜は一匹いればひと財産だからなぁ。


「「「「いや違うからっ!!」」」」


 え? 違うの?


「りゅ、龍帝様じゃ! 龍帝様が遂に蘇られたのじゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「「「「「「え? 何ソレ?」」」」」」


 お爺さんが発した突然の言葉に思わず僕達は声をそろえてしまう。

 えーと、何? どういう事? 何で龍帝の名前が出てくるの?

ゴールデンドラゴン(:3)∠)_「わ、我悪くないよね!? 無罪だよね!?」

モフモフ「やっちまったなぁ黄金の。まぁ我が良い土下座の仕方を教えてやる故に、頑張れ」


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[良い点] やっちまったなぁ(笑)
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