第93話 黄金龍対駄ペット
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我は突然の激痛で目が覚めた。
何が起きた? 何故我は意識を失っていた?
目覚めたばかりの意識は霧がかかったように曖昧だ。
だが、そんな我であっても目の前の存在が敵だと言う事は分かった。
白く矮小な姿をしたソレは、しかし明らかに敵だと我の本能が告げていた。
これは滅ぼさねばならない存在だと。
我に流れるドラゴンの血脈がそう強く叫ぶのだ。
思い出せない事などどうでもよい。
今はただ目の前の敵を滅ぼすのみ。
我はあらゆるものを切り裂く黄金の爪を白き敵に振り下ろした。
だが敵は弱々しい見た目に似合わぬ速度で我が爪を回避すると、そのままの勢いで我に突撃してきた。
愚かな、その様な矮躯で我に傷を与えられるとでも……ぐはっ!?
なんという事か、敵の突撃は我の予想以上の威力を以て我の強靭なる鱗の内側に強い衝撃を与えてきた。
「ギュッギュッギュッ!」
敵が不敵に嗤う。
くっ、相手の見た目に惑わされたか。
どうやらこの敵はその見た目からは想像もできない程の力を持っているらしい。
己が血脈の警告を軽んじた我が軽率であったか。
だが、二度の油断はせぬ!
我はドラゴンらしく戦うべく、空へと舞い上がる。
だが何故か片方の翼が傷む。
見れば我が翼が何者かに食いちぎられた痕があるではないか!
さてはあの敵の仕業か! 許さん!!
我は更なる怒りを抱くと、地上に向けて威力の低いブレスを吐き散らした。
王である我ならば、下級竜と違ってわざわざ力を溜めずともブレスを放つ事が可能だ。
必殺の一撃を放つのであれば多少の溜めは必要であるが、この程度のブレスなら呼吸をするも同然で放てる。
もっとも、その程度の威力であっても黄金たる我が放つブレスは下級竜などが放つものなどよりも余程強力なのであるが。
翼を持たぬ相手では到達できぬ高みより、回避不可能な範囲にブレスを放ち続ける。
矮小なモノには到底たどり着けぬ圧倒的な暴力を無造作に振るう。
これが王者にのみ許された戦い方よ。
ふふ、恨むなら翼を持たずに生まれた己の不幸を呪うがよい。
そして我に手傷を与えた褒美として、貴様には我が贄となる栄誉を授けよう。
もっとも、我がブレスで一掃された大地に肉片が僅かでも残っていればの話だがな。
ふはははははっ!!
「キュウゥゥッ!!」
だがなんという事だろう。
それは向かってきた。
ブレスの弾幕を突き抜けて、傷だらけの体で我に向かってきたのだ。
翼を持たぬ身で空を駆けながら。
「ギュウウウン!!」
虚を突かれた我の翼に敵が突撃し、再び激痛が走る。
二度も手傷を受けた驚きと痛みで我は無様にも地上へと落下してしまった。
「ギュフフッ」
そしてそんな我を敵が嘲笑う。
我を、上から、嘲笑ったのだ。
もう許さぬ!
その体肉片一つ残さぬと知れ!
遊びは終わりだ。
ここからがドラゴンの真の戦いよ!
我は全身に魔力を巡らし、目の前の敵を引き裂く事にのみ集中する。
これまでは縄張りであるこの地を破壊せぬ様力を抑えてきたが、もはやそのような事はどうでもよい。
ドラゴンの誇りを傷つけた事を後悔させてくれるわ!
全身に力が満ちた我は、己が肉体を普段とは比べ物にならない程の速度で動かせる。
そして即座に敵の背後に回り込むと、無防備な背中を両の爪で切り刻んだ。
敵の白い毛皮が鮮血に染まるが、我はもう油断はせぬ。
予想通り負傷を意に介さず反撃してきた敵の攻撃を我は前足で受け止める。
ズシリと巨岩を手にした様な衝撃だ。
だが来ると分かっていれば耐えられぬ攻撃ではない。
我はそのまま受け止めた敵を地面に叩きつける。
そしてそのまま体重をかけて地面に押しつぶす。
前足の裏に激痛が走る。
爪か牙か、反撃しているのだろう。
だが逃しはせぬ。
このまま押し潰し、磨り潰してくれるわ。
しかし不意に抵抗がなくなり痛みが薄れる。
直後我は背後にかすかな音を感知し、即座に横に跳ぶ。
我が居た場所を白い影が雷の如き速度で通り抜けた。
ふん、地面を潜って我の後ろに回り込んだか。
だが我の感覚を甘く見過ぎだ。
「ギュウウ!」
敵はその瞳を怒りに染め、我を殺すと目で語ってくる。
ふん、それはこちらも同じよ。
「ギュウウッ!!」
次の攻撃は真正面からの殴り合いであった。
互いの拳が互いの拳を弾き、拮抗し、叩き落し、叩き落される。
回避など不要、避ける暇があったら一撃を加えろ。
我らはただただ殴り合った。
ふ、ふふ……
自然と笑みが零れる。
「ぎゅっ、ぎゅぎゅ……」
見れば敵も同じく笑みを浮かべている。
……分かるぞ、その気持ち。
貴様も全力で戦えることが心地良いのだろう?
最強の存在である事を運命づけられたが故に、周りの全てが自分についてこれない事が退屈だったのであろう?
強者の傲慢と言われるだろう。
だが、我等は互いに求めて居たのかもしれない。
己が全てを賭けて戦う事の出来る好敵手の存在を。
……面白い!
数百年を生きた我がこの様に滾るとはな!
ならばこの戦い、心行くまで堪能しようぞ!!
そして永劫に続くかと思う程に殴打の応酬の末、刹那に生まれた攻撃の途切れを機に我等は互いに下がる。
くく、少しばかりはしゃぎ過ぎた様だ。
攻撃の応酬をしている時は夢中で気づかなかったが、我らの体は予想以上の傷を負っていた。
ううむ、これ以上戦いを続けるのは無理な様だな。
ならば、最後は最強の一撃を以て終わりとする。
見れば敵も同じ考えのようで、その小さき躯に膨大な魔力が練り上げられてゆく。
くくく、最後まで気が合うな。
我もまた、ただ一撃の為だけに魔力を練り上げる。
ドラゴンの最強の攻撃、それはもちろんブレスをおいて他にない。
先ほどの様な気の抜けたブレスの乱打などではなく、全身全霊を込めた最強の一撃だ。
互いの魔力が頂点まで高まり、後はただ解き放つ時を待つだけ。
ああ、どちらに転んでもこれで終わりか。
これ程の魔力の高まりとあっては、お互いにただでは済まない。
ぶつかり合った自分の攻撃が相手の攻撃に押し負ければ、その瞬間自らの放った魔力は相手の魔力に飲み込まれ、己が力で自らを滅ぼす事だろう。
だが……それも良かろう。
それが最高の戦いを提供してくれた素晴らしき敵への敬意と言うものだ!
ゆくぞ!
「ギュルオォォォォンッッッ!!」
我と敵の攻撃が同時に放たれる。
自分でも驚くほど練り上げられたブレスの威力に、我は勝利を確信する。
そして互いの攻撃が激突した。
その瞬間に感じる凄まじい抵抗。
おお、なんという圧力か!?
我がブレスに勝るとも劣らない威力!
だが我も負けぬ!
ぬぉぉぉぉぉっ!
「ギュオォォォォォッ!!」
互いに残った魔力を振り絞って攻撃を放ち続ける。
これで、最後だぁぁぁぁぁぁ!!
…………
そして、我は全ての力を使い切った。
全てを振り絞った。
もはや翼の先一つ動かぬ。
さぁ、後は結果に身を委ねるだけだ。
我は互いの放った最後の一撃を見つめる。
そしておかしな事に気づいた。
我の放ったブレスと敵の放った攻撃が丁度我等の中間で止まっていたのだ。
そして攻撃はそのまま中間で二つの魔力球となって静止した。
何だ? 何が起こっている?
我のブレスにはこのような現象など起きぬぞ?
これが敵の攻撃なのか?
だとすれば我の攻撃は完全に敵に取り込まれてしまったのか?
我は勝利を確信したであろう敵を見る。
「……ギュウン?」
あ、向こうも分かってない感じだ。
何コレ? といった感じで首をかしげている。
ではこれは一体……?
「まったく、危ないなぁ」
と、その時、二つの魔力球の間から声が聞こえて来た。
何故か怖気の走る声が。
「ギュッ!? ギュキューッ!?」
と、その声を聞いた敵が、突然驚きと慌てと恐怖を混ぜた様な叫び声をあげる。
何だ? 何か知っているのか?
「こんな攻撃がぶつかったら、この辺りがめちゃくちゃになっちゃうし、どっちかが大怪我しちゃうぞ。えい!」
気の抜けた声と共に、我等の魔力球が上空高くへと弾き飛ばされる。
え? 弾き飛ばされた? どうやって?
「ダブルインパルスブレイク!」
更にその後を小さな光の矢が追跡し、先行して飛びあがった魔力球を貫いたと思ったら、魔力球が音もなく霧散した。
……
えっ!? 霧散!?
何っ!? 何今の!?
我等の渾身の魔力が込められた魔力球がふっと消えたんだけど!?
我は何か知っているのなら教えろと敵に視線を戻すと、敵は先ほどまでの誇り高き姿が見る影もない程に怯え震えていた。
「キュ、キュゥ~」
消え入りそうな鳴き声を上げながら、我等の攻撃が突如止まった中間の空間を見つめる。
その眼差しに従って我も視線を動かすと、そこには一人の人間の姿があった。
「やれやれ、二人共ボロボロじゃないか。モフモフの遊び相手に良さそうと思ったけど、ドラゴンの素材は貴重なんだから、あんまり傷つけちゃだめだぞ。エリアハイヒール!!」
人間がおもむろに魔法を放つと、膨大な癒しの魔力が周囲を舞い踊る。
そして敵のみならず我の受けた傷も癒していった。
「よし、これできれいになったね」
人間はあっけらかんとした様子で笑っているが、そもそも人の天敵たるドラゴンである我を癒すなど愚の骨頂。
自分を殺そうとした敵を癒すなどもう一度襲い掛かって下さいという様なものだ。
我等ドラゴンが矮小な人間相手に心を許すなどありえる筈もない。
だというのに何故だろう?
我はその人間を見ると震えが止まらなかった。
ただの人間の子供に見えるその生き物が、とてつもなく恐ろしい存在に見えていたのだ。
そう、先程まみえた弱々しい人間共と同じなのに全く違う。
……ん? 人間?
…………っ!?
そこで我は思い出した、思い出してしまった。
我が縄張りに侵入してきた不届きな人間を駆逐しようとした時に聞こえてきたあの声を。
『というかお前、ちょっと眩しいぞっ‼』
その声を聞いた直後、我は凄まじい痛みと共に宙を舞って意識を失った事を。
つまりこの人間が我を……
「キュウンッ!!」
聞いた事もないような甲高い鳴き声に視線を戻すと、先程まで死闘を繰り広げていた敵が、腹を見せて全面降伏の姿勢をしながら媚びた声を上げていた。
あまつさえ漏らしている。
何だその情けない姿は!?
貴様それでも先ほどまで我と死闘を繰り広げていた好敵手か!?
とは思わなかった。
うん、世の中には絶対勝てない相手っているよね。
命を懸けて全力を振り絞った戦いがしたい?
それで死んでも本望?
いやないない。
そんなの本当の強者を見た事の無いヤツの言う事ですよ。
「ギュウン!」
だから我も敵に……いや友に倣って腹を見せて転がった。
我、敵じゃないですよ。
モフモフ_Σ(:3)∠)_「し、新年初服従!」
ゴールデンドラゴン(:3)∠)_「プルプル、ボク悪いドラゴンじゃないよ」
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