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第87話 すべて終わって

_:(´д`」∠):_「とってもお待たせしましたー!」

_:(´д`」∠):_「あ、12月は更新ペースを上げるつもりですー」

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いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

_:(´д`」∠):_「ご、誤字報告機能しゅごい……」



「では緊急会議を始めるとしよう」 


 王都の城の一室には、多くの貴族および騎士それに神殿の偉いさんの姿まであった。

 彼等はいずれも要職に就く有力貴族達ばかりだ。


 そしてこの中で平民は、王都の冒険者ギルドを統べる長であるこの俺、ウルズただ一人なのだから堪らないぜ。


 この会議は、元鉱山である禁止領域の奥にある遺跡で起きた驚天動地の出来事を国に報告した事で急遽開催されたものだ。

 まぁ報告書の中身は真面目に読んだら冗談みたいにヤバい内容ばかりだからなぁ。


「ギルド長、説明を聞こうか」


 そう告げたのは、恐れ多くも国王陛下その人だ。

 本来なら家臣である大臣が会議の進行を務めるものだが、今回は緊急会議なので堅い事は無しだそうだ。


まぁ派閥に関係なく有力貴族達をこれだけ集めているんだから、あまり格式ばった内容だと揉めるからだろうな。

だがそんな陛下の計らいのお陰で、平民である俺が会議の場で発言する事も許可されているのだから悪いことばかりでもない。


「全ては禁止領域から高ランクの魔物が大量出現した事に端を発します……」


 そして俺は、今回の事件の顛末を貴族達の前で報告する。


 ◆


 報告を終えると、予想通り会議室は騒然となった。


「魔人だと!? あれはおとぎ話の存在だったのではないのか!?」


「その先行して調査をしたというSランクの冒険者達というのは何者だ!? キメラと言えば大型のモノになれば騎士団が一軍団必要になる様な相手だぞ? それをたった数人で倒したというのは本当か? どんな作戦で討伐したのだ? 聞けば魔人を討伐したのもその冒険者達なのだろう!?」


「待て待てバハムートだと!? Sランクの魔獣がなぜ洞窟などに居るのだ!?」


「いやそれよりも問題は古代のキメラ製造設備が使用可能な状態で存在していた事だ! これがあれば我が国が無尽蔵のキメラ軍団を手にすることが出来るぞ!」


 うーん、本来の議題は魔物の大量出現の解決報告だったんだがなぁ。

 とはいえ、今回の発見はどれをとっても冒険者ギルドだけで対処出来るような内容じゃない。

 それこそ国に報告の義務が発生するレベルの懸案事項だったからなぁ。


「ええい冒険者やバハムートなどどうでもよい。むしろ問題は魔人の方だろう。本当にそれは魔人だったのか? 本物の魔人だったとして単体でどれ程の実力なのだ? 今回の事件によって我々がこの時代で初めて魔人と遭遇した事になるのだ。他国に知られる前に魔人の情報を先んじて集めねば」


 と、お貴族様の一人が俺に対して質問してくる。

 まぁ、伝説だと思われていた人類の天敵が実在したとなれば、国防上かなりの重要案件になるからな。


「ノルマン男爵、卿は内大海の魔物調査の報告を聞いていないのか? 件の事件でも魔人の存在が確認されたとの報告があっただろう?」


「い、いや、話には聞いたが、海軍のでっち上げたデタラメだと思っていたのでな……」


 内大海に現れた巨大な魔物の討伐事件と、それを端にした魔人と巨大魔獣事件は俺も掴んでいる情報だ。

 海辺の国を悩ませた巨大な魔物が内大海にまで影響を及ぼし、その原因となった存在があの魔人だったという大事件だ。


 幸いにも同行していた高ランク冒険者達の協力で、その魔人が本格的に暴れだす前に捕らえる事に成功したのは幸いだったと言える。

 そして魔人の身柄は海辺の国と共同で管理する事になる……筈だった。


 だがその魔人を輸送中、突如現れた伝説の魔物バハムートによって、輸送していた船ごとどこかに連れ去られるという、惨憺たる結果に終わった訳だが。


 それゆえ、魔人を直接見る事の無かった貴族達からすれば、捕らえた魔人の存在そのものが疑わしいものに思えるのも無理はない話だった。


 もっとも、その一緒に連れ去られた船が、後日空飛ぶ船などと言う非常識な存在へと生まれ変わって王都に戻ってきた事で状況は一変した。


 何しろ王都の上空を船が飛びながら横切って行ったんだからな。

 王都は貴族から平民まで上を下への大騒ぎだ。

 船の所属を知らなかった貴族様達から、あの空飛ぶ船を調査しろとかいう無茶な依頼がギルドに来たくらいだ。


 そんな事件があった事で、魔人の存在もデタラメと一蹴できなくなったと思ったんだが、領地や屋敷に籠って現物を見ていなかった連中には実感がわかなかったと見える。


 そして図らずも、この光景が貴族達の情報収集能力の差を浮き彫りにする形となった。

 この会議で情報収集で後れを取った事がバレてしまったノルマン男爵を始めとした貴族達はこれから大変だな。


「落ち着くのだ皆の者」


 会議の場が混沌としてきた事で陛下が声を上げ場を鎮める。

 さすが国王陛下の言葉だ、雛鳥の様に囀っていた貴族達が綺麗に口を噤んだ。


「まず議題のきっかけとなった魔物の大量出現問題は解決された訳だな、ギルド長よ?」


「はい、その通りでございます。我がギルドに所属するSランク冒険者達の活躍によって、危険なキメラと凶悪な魔物の多くが討伐されました。先日お納めしたキメラの素材を見て頂ければ、我がギルドの精鋭の力をご理解いただけたことかと」


「うむ、あのキメラ達の死骸は余も確認したぞ。よもや数十メートルを超えるキメラを少人数で討伐する事が出来るとは、さすがはSランクの冒険者達であるな」


 報告の信ぴょう性を増す為にあえて解体せずに運び込んだ巨大なキメラ、確か試作キメラとかいう名前だったか、アレを見た事で陛下は俺の報告を偽りなしと判断してくれた。


「騎士団長よ、数十メートルのキメラとなれば騎士団ではどれ程の脅威と判断する?」


「はっ、一般的なキメラですと体長はおおよそ3~6メートル。キメラは複数の生物の能力を持つ非常に厄介な生物の為、最低でも三個小隊が必要になります。冒険者ギルドの格付けに合わせるならBランクといったところです。ですが特殊能力を持った特別な個体ですと危険度が跳ね上がる為、部隊数を7小隊に増やし、更に魔法使いおよび僧侶も動員してAランクとなるでしょう。10メートルを越える個体はただ大きいだけで脅威度が跳ね上がります。こちらもやはりAランクに相当します。必要とされる戦力は大きさに比例して更に増やす必要が出ます」


 と、ここで騎士団長が一拍を入れる。


「ただ、数十メートルのキメラとなるとそれ以上の脅威でしょう。過去に例のないサイズですし、報告を見る限り魔法に等しい特殊な能力をもった個体です。間違いなくSランクの魔物と同等かそれ以上、騎士団を総出撃させ、宮廷魔導師と教会の僧侶を総動員してようやく相手になるレベルかと……」


 騎士団長の発言を聞き、場内の空気が凍りつく。


「つまり、上位のドラゴンに並ぶ脅威という訳だな」


「その通りです」


 陛下の発言に再び場内がざわめきに包まれる。


「ドラゴンだと……!?」


「古代人はそれ程の存在を人為的に生み出す事が出来たのか!?」


「皆の者、恐れる必要はない。ギルド長よ、魔人および遺跡で生み出されたキメラは、Sランク冒険者達によってすべて討伐されたという事で相違ないな?」


「いえ、魔人は討伐されましたが、キメラにつきましては洞窟をすべて調べない事には断言はできません」


「うむ、では残った魔物とキメラの討伐には騎士団も参加させるとしよう。しかるに遺跡から得られる物を全て回収した後には鉱山と繋がる穴を封鎖し、将来的には鉱山を再開するものとする」


 成程、高レベルの魔物が出現する原因だった遺跡の魔物とキメラを討伐した以上、鉱山を危険領域として廃棄するメリットはなくなるからな。

 これは妥当な考えだろう。


 まぁ実際には国営鉱山再開を理由に冒険者達を入れなくして、遺跡を国が独占するつもりなのだろう。

 それに関してはギルドにも遺跡発見の利益が与えられるだろうから、問題はない。

 今後の問題が起きた時の為の交渉カードにもなるからな。

 何より、ギルドがキメラを開発する技術を独占したところで面倒なことになるだけだ。

 下手に国に勘ぐられるくらいなら、素直に国に明け渡して対価や権利を貰うのが賢い大人のやりかたってもんだ。


「だがさすがはSランクの冒険者達だ。聞けば彼らは遺跡で発見した強力なマジックアイテムや、古代の知識から蘇らせたロストマジックを操るのであろう? 此度の事件では運よくそれらの力を使いこなす猛者が集まったおかげで、未曽有の危機を乗り越える事が出来た訳だ。まったく、よくぞそれ程の猛者達を集めてくれたものだ。ギルド長よ褒めて遣わす」 


「ははっ、有りがたきお言葉にございます」


 まぁ本当にヤバいのはその中の一人だけなんだけどな。

 どうせ言っても信じてくれないだろうから黙っておこう。

 正直あのボウズの活躍は聞けば聞くほど自分の耳と正気を信じられなくなるからな。


「しかし古代人と魔人双方を退けた、白き災厄なる魔獣の存在も気になる所であるな。件のキメラ開発施設を活用できるようになれば、我ら人族の未来の為に大いに役立つことであろう」


「ええ、その通りですな。Sランク冒険者が苦戦するほどのキメラを生み出せるとなれば、他国に対して我が国の軍事的優位は計り知れません」


 と、先ほどノルマン男爵を論破していた貴族の一人がすり寄る様に同意する。

 そのキメラ達をあっさり倒しまくったSランクが居るからあんまり調子にのんなよー。


「うむ。しかし遺跡で研究を続けていたアンデッドだったか、その者が姿を消したのは気になるのう」


 まぁそこは俺も気になるが、それを知ったのはすべてが終わって報告を受けた後だからなぁ。


「なに、所詮はアンデッドが一体のみです。もし我が国に反旗を翻したのであれば、僧侶達による除霊の魔法で強制的に浄化してしまえばよいだけの事ですよ」


 と、騎士団と司祭が笑いながら胸を張るが、その前にアンデッドが生み出すであろう新たなキメラの事は考えていないのだろうか?


「それに白き災厄なる魔獣は古代の伝承にすら存在しておりませぬ。あまり真剣に受け止める必要もないのでは? しかもその魔獣を倒すために作られたキメラすらも冒険者共に倒されたと言うではないですか。我等王都騎士団はこの国が出来てから長きにわたって鍛え上げて来た騎士達の集まりです。その魔獣がどれほど強くとも所詮はたかが一頭の魔獣です。我等が万全の準備で当たれば恐るるに足りませんとも」


「そうですぞ陛下。そもそも魔人なぞ伝説上の存在。実在していたとは言え、その者達が本当に伝説に語られる程の強さを持っているとは限りませぬ。こちらもたかだか冒険者数人が束になって勝てた程度の相手というではないですか。その様な相手なら我等騎士団に倒せぬ道理がございませぬ」


 騎士団の連中がここぞとばかりに冒険者達をこき下ろして自分達の有用性を語り始める。

 つーかお前等な、ご自慢の騎士団がクソ重い鎧と槍を振り回して洞窟の中で戦えるつもりかよ!

 お前等の強さは数と馬と魔法の援護があってこそ成り立つもんだろうが!

 冒険者の強さをお前達の強さと同じ物差しで考えるんじゃねぇよ!


 とはいえ、ギルドの長である俺が騎士団を否定する発言を口にするのは色々とマズイ。

 ここは我慢あるのみだ。

 伝えるべき事は伝えたし、あとはこの退屈で面倒な会議をどう無難に過ごすかに集中するとしよう。


 こうして全ての問題が解決したと安心しきっていた俺達だったが、数日後、遺跡内部のキメラ開発施設とその資料が、ごっそり姿を消したと聞いて大騒ぎになる事を、まだ知らなかったのだった。


 ◆


「ただいまー」


「おかえり兄貴!」


「あ、おかえりー」


 仕事を終えて家に帰ってきた僕達を、ジャイロ君達が出迎えてくれる。


「なぁなぁ兄貴、Sランクの指名依頼ってどんな内容だったんだ?」


 帰ってきて早々、ジャイロ君が土産話をせがんでくる。


「ほらほら、仕事帰りで疲れているんだからせめて椅子にくらい座らせなさいよ」


「今お茶入れてきますね」


 ミナさんが窘めて、ノルブさんがお茶を用意してくれる。

 あー、家に帰って来たって感じがするなぁ。


「で、どんな冒険をしてきた訳?」


 と思ったらミナさん達も椅子に腰かけて話を聞く気満々だ。

 あー、これはお茶菓子代わりに僕達の冒険を聞くつもりだね。


「はいはい」


 そうして僕は、ジャイロ君達にどんな冒険をしてきたのかを語り始めた。


 ◆


「……って訳で、最下層の試作キメラを倒した後は、数日かけて洞窟内の魔物やキメラを退治してたんだ。で、めぼしい魔物も見つからなくなった事で、無事依頼達成となった訳さ。そしてこれが報酬の金貨1500枚と山分けした魔物の素材、それに遺跡の資料室に残されていた歴史の本だよ」


 途中で何度かのお茶休憩をはさみながら、僕は今回の冒険を語り終え、テーブルの上に報酬の金貨と山分けした魔物の素材で一番見栄えの良い素材、そして最後に資料室で見つけた一冊の歴史の本を置いた。


「「「「……っ」」」」


 けれど何故か僕達の冒険を聞き終えたジャイロ君達は感想を口にすることなく無言だった。

 あれ、もしかしてつまらなかったかな?

 まぁ特別凄い冒険って感じでもなかったからね。


「……す、すごいじゃない。それじゃあレクス達は古代文明時代の研究資料やキメラを作る技術を手に入れたって事なんでしょう?」


 と思ってたら、ミナさんが頬を紅潮させて興奮した様子で声を上げる。


「それって凄いの?」


 と、興奮するミナさんとは対照的に、技術的な面に疎いメグリさんが首を傾げる。

 むしろメグリさんはテーブルに置かれた魔物素材の方に視線が釘付けだ。


「そりゃあそうよ! キメラの製造技術よ! キメラってのは古代文明の技術によって複数の動物の要素を掛け合わせて生み出された生命なんだけど、その技術は現代には残っていないのよ! だからその知識が手に入ったって言うのは、ものすごい事なのよ!」


 あれ? 今の時代ってキメラの製作技術が失われてたの?

 そういえば前世で良く見かけたペットキメラを王都では見かけなかったなぁ。


「……良く分かんない」


「……まぁとにかく、今は失われたすごい技術なのよ」


「へぇ……」


 技術的な話には興味なさそうなメグリさんの様子にミナさんが溜息を吐いてそれだけ伝える。


「あーでも、後で報告があったんだけど、僕達が鉱山を出て王都に戻ってくる最中に遺跡内の主要な資料や装置は忽然と姿を消しちゃったらしいんだよ」


「ええ!? 何よそれ!? 盗まれたの!? 誰に!?」


 せっかく手に入れた技術が消えたと聞いてミナさんが驚愕に目を見開く。


「多分ガンエイさんが新しいキメラを作る為に持ち去ったんじゃないかな? もともとあの遺跡はあの人が管理していたわけだし、僕達に遺跡の場所を知られちゃったから邪魔をされない様に別の場所で研究を続けようとして持ち去ったんだろうね」


 まぁ研究者あるあるだ。


「そ、そんなぁ~」


 どうやらミナさんはキメラ開発の知識に興味津々みたいだ。

 今度僕の知っているキメラの技術を教えてあげようかな?


「まぁそんな訳で僕達の成果といえば、魔物とキメラの素材、それに資料室で手に入れたいくつかの資料だけって訳さ」


「も、勿体ない~……」


 まぁでも、僕達の本来の目的は魔物の異常出現の理由を解明解決する事だから、目的は十分に果たしていたから良いんだけどね。


「……」


「あれ? どうしたんですかジャイロ君?」


 と、ずっと無言だったジャイロくんにノルブさんが話しかける。

 そう言えばジャイロ君が叫ばないのは珍しいなぁ。


「……く」


「「「「「く?」」」」」


「悔しいぜっ!」


 ええ? いきなり何!?


「何が悔しいのよ?」


突然悔しがり出したジャイロ君に、ミナさんがなげやりな感じで質問する。

キメラの知識が手に入らなかった事で興味を失くしてしまったみたいだ。


「だってよぉ、兄貴達はそんなすげぇ冒険したのに、俺達は一緒に戦えなかったんだぜ! 悔しいじゃねぇか!」


 ああ、ジャイロ君は僕達と一緒に冒険できなかったのが残念だったのか。


「しょうがないでしょ。私達は冒険者になって間もないのよ?」


「寧ろレクスのお陰で普通の冒険者よりもずっと早くランクが上がってる」


「そうですね、ついこの間冒険者になった僕達が、もう一人前であるDランクを超えているんですからね。寧ろ凄い事ですよ」


 と、皆がジャイロ君を慰めている。

 うんうん、こういう時理解のある仲間が居ると良いよね。


「けどよぉ、それでもやっぱりよぅ、そんなすげぇ冒険に参加出来なかったってのは男として悔しいじゃねぇか」


「我が儘言ってるんじゃないわよ」


 それでも納得できず悔しがるジャイロ君をミナさんが呆れた眼差しで見つめる。


「でも、その気持ちは分かるわ」


 と、言ったのはリリエラさんだった。


「おお、分かってくれるかリリエラの姉さっ痛ぇっ!」


 リリエラさんの同意を得て、我が意を得たりと立ち上がったジャイロ君の足をミナさんが蹴って黙らせる。

 うん、こういう時は慣れた間柄は羨ましくないね。


「どういう意味なの?」


「レクスさんと一緒に今回の依頼を受けたけれど、キメラ達との戦いでは正直力不足を痛感したわ……自分ではかなり強くなったつもりだったんだけどね」


「うーん、そんな事はないと思いますよ」


 と、僕は口を挟む。

 実際リリエラさんは良く頑張っていたと思う。


「でも現にキメラとの戦いじゃ目の前の敵を相手にするだけで精一杯だったわ。レクスさんの手助けなんてとてもとても。これじゃあいつまで経ってもレクスさんに恩返しなんて出来ないわ」


 そういえばリリエラさんが僕の仲間になった理由は恩返しのためだっけ。

本当に真面目な人だなぁ。


「でも、冒険者の実力は腕っぷしだけじゃあないですよ。大剣士ライガードの冒険でも言っていたでしょう? 戦わずして勝つ者こそ無敵、知恵を以って冒険を制する事もまた強さの形だって」


 これは僕の好きな大剣士ライガードの冒険の一節、敵無しの極意の話に出て来たセリフだ。

 ライガード達がある洞窟を冒険していた時、剣も弓も通用しなかった敵を偶然知り合った賢者が知恵で退けるというお話で、そこからライガードは力が全てではなく、知恵や話し合いで争いを解決するのも大切だと学んだんだ。


 前世や前々世でひたすら戦いの技術の開発や力づくの討伐を続けてきた僕は、力だけに頼らないこの話はお気に入りだったりする。


「冒険者の本分は冒険。僕達が戦うのはあくまでも依頼を達成する為の手段の一つであって、戦いでの解決は騎士や傭兵達の本分ですよ」


 僕の言葉にノルブさんやメグリさんがうんうんと頷く。


「そうね、戦わずに解決できるならそれに越した事は無いわ。そういう意味では戦わないで事を収める技術という考え方も納得できるわね」


 と、ミナさんも僕の言葉を肯定してくれた。


「けどよぉ、やっぱり強くなった方が良いと思うぜ。勝たないと解決できない問題もあるだろー?」


 けどやっぱりジャイロ君とリリエラさんは自分の力不足が不服みたいだ。

 ふーむ、まぁ二人の言いたい事も分からなくはないんだよね。

 確かに今後そういう可能性も出てくるかもしれないからなぁ。

 となると、次の目的地は……


「だったら、次の冒険は修行を兼ねた力試しが出来る場所に行く?」


「「行くっ‼」」


 ジャイロ君とリリエラさんの声が綺麗にハモる。


「おっけー、それじゃあ次はドラゴン相手に修行しようか」


「おお、ドラゴンか! そりゃあ腕が鳴る……ぜ?」


「ええ、ドラゴンが修行相手なら、相手にとって不足……は?」


 と、そこでリリエラさんが言葉を止め、皆がこちらを見つめて来る。


「「「「「……え?」」」」」


「うん、次の目的地は、ドラゴン達の聖地、竜騎士の国ドラゴニアだ!」


 うん、やっぱり修行相手と言ったらドラゴンがぴったりだよね!


「あそこならドラゴンがわんさかいるから、修行相手には事欠かないよ!」


「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」


 うんうん、皆出発前から気合入ってるね。

ギルド長_:(´д`」∠):_「せ、責任問題……」

リリ/ドラ_:(´д`」∠):_「地獄の特訓再び……」

モフモフ_∑(:3」∠)_「喜べ、貴様等が求めた地獄だ」

モフモフ_∑(:3」∠)_「あっ、次回から新章だぞ。次の犠牲者はドラゴン(複数系)だ」


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