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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
Sランクパーティ編

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第85話 蠢き、迎え撃つ者達

_:(´д`」∠):_「金曜日に更新できた……だと!?」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 小僧の魔法で地下水脈の通路を拡張して進んで来た儂等は、地底湖のほとりへと出た。

 キメラを作った本人という事もあって儂も同行する事になってしまったが、水場は体が腐りそうでイヤじゃのう。


「ライトボール」


 灯りの魔法を複数展開して周囲を照らすと、儂達がやって来た通路だけでなく、地底湖の天井や壁など他の場所からも水が流れ込んでいるのが見てとれる。

 どうやらこの周辺を流れる地下水は、一度この地底湖に集まるような構造になっているみたいじゃな。


「結構広いですね……それに深……ってきゃっ!?」


 と、周囲を見回していたフォカと呼ばれていた女が悲鳴をあげる。


「どうした聖……なっ!?」


 そしてフォカに問いかけようとした大男、リソウだったか? も驚きの声を上げる。


 それもその筈、魔法の灯りに照らされた地底湖の中には大量のキメラが泳いでいたからじゃ。

 その姿は細長く蛇に似ており、そしてドラゴンの様でも魚の様でもあった。

 そしてなにより、儂はこのキメラの姿に非常に見覚えがあったのじゃ。


「これが全部……キメラなのか!?」


 ロディとかいった軽薄な男が思わず後ずさる。

 まぁこれだけの広さの地底湖にびっしりとキメラが泳いでいたら驚くのも無理はない。

 単純にキモいしの。


 じゃがこのキメラ達、皆同じ形をしておるのう。

 複数の水棲キメラが流されてやって来たという訳でも無いようじゃ。

 となるとその理由はやはり……


「見ろよ! 地底湖の底! 魔物の骨が山積みだ!」


 誰かの声にキメラ達の更に下を見れば、地底湖の底が一面骨で敷き詰められている事に気づいた。

 透明度が高くて水深は良く分からぬが、それでもこれだけの広さの湖に骨が敷き詰められておるのじゃから相当の量じゃな。


 そしてこれだけ騒いて居れば、当然キメラ達も儂らに気づくというもの。

 キメラ達が一斉にこちらを向いて水面に上がって来る。


「皆下がれ! 中に引きずり込まれるぞ!」


 さすがに戦い慣れているだけあって、彼は困惑から立ち直って後ろに下がり、キメラ達を引き寄せて地上を戦場とする。

 幾人かの魔法使いと弓使いが先頭のキメラに遠間から攻撃を放つ。

 じゃがキメラの鱗に阻まれ、大したダメージにはなっていない様じゃな。

 まぁ、あのキメラ達が儂の予想している通りの存在なら、その程度の攻撃で倒せる筈が無いのは当然じゃが。


「インパルススピア!」


「フリーズガイザー!!」


 約二名ほど通用している攻撃もあるが、まぁそれでも手が足りないのは間違いない。

 そうしてキメラ達は、岸に上陸する。


 体の大きさに比べると小さい手足で器用に走る者、体を蛇の様にくねらせてはいよるものなど移動の方法はさまざまじゃが、総じて言えるのは皆速いという事じゃ。

 それにしても実際に動いている姿をみると参考になるのう。


 そして瞬く間に先頭の者達との距離を詰めると、白兵戦が開始された。


「せやぁぁっ!」


「この野郎!」


 幾人もの戦士達がキメラに攻撃を加えるが、ナマクラな武器では鱗を割るどころか武器の方が欠けてしまう有様じゃ。


「うわっ!? 俺の剣が!」


「畜生! 買い替えたばかりなのに!」


 そりゃご愁傷様じゃのう。


「ガンエイ殿、援護を!」


 リソウが儂に援護を求めて来る。

 まぁ協力せんとそこの小僧が怖いからのう。


「仕方ないのう、エリアエンチャントアームズ」


 儂は周囲に居た戦士達の武器に魔法の力を授ける。

 すると先ほどまではその鱗に欠片も歯がたたなかった戦士達の攻撃が通る様になり、キメラ達を鱗ごと切り裂いていった。

 ああもったいない。


「はっはー! こりゃ凄いぜ!」


「ああ、キメラがまるでバターみたいだ!」


 まぁ儂の魔法のお陰じゃな。


「こっちにも援護をくれ!」


「こっちもだ!」


「年寄りをそう急かすでない」


「せぇい!」


 そして幾人かの戦士達は、儂の援護を受けずに自前の魔法や仲間の魔法でキメラ達を討伐しておった。

 あの魔人が作り出したキメラと戦ったリソウ、ロディの二人の戦士は仲間の援護もあるが自力でキメラ達と渡り合っておる。

 ふむ、まぁまぁやるのう。


「たぁ!」


 そんな中、一人の娘が獅子奮迅の闘いを繰り広げておった。

 身体強化魔法で自身の肉体を強化し、氷の魔法を応用して高速で動き回りながらキメラ達をその手の槍でまとめて貫いておる。

 貫かれたキメラは、傷口から凍り付いて氷像と化し、引き抜く動作で真っ二つに割れる。


 うむ、あの娘は他の者達と比べて頭一つ、いや三つくらい上の実力じゃな。


「マッハスラッシャー!」


 そして、一人の非常識な小僧が湖の上を走りながら水中のキメラ達を斬撃の衝撃波で切り裂いておった。


「いやちょっと待って、あの小僧なにしとるんじゃ!?」


 あれ魔法で浮いておるわけじゃないぞ。

 身体強化魔法は使っておるが、普通に水面を走っておるぞ!?

 その証拠にあの小僧が走った後の水面が衝撃で吹き飛んでおる。

 あとあの小僧が水面を切り裂くと、明らかに数十mは湖の水が切り裂かれ真っ二つになっておるんじゃが。

 まるで地底湖の水があの小僧の攻撃から逃げているのではないかと錯覚しそうになるほど湖が大きく切り裂かれ、湖底の骨が勢いよくはじけ飛び地底湖の空に骨の雨が降り注いだ。


「ちょっとレクスさん! あんまり派手にやり過ぎないで!」


「あ、すみませんリリエラさん!」


 キメラと戦っていた娘に湖上の小僧が謝罪する。

 うむ、もっと言ってやれ! 

 

 真面目で普通の戦士達の頑張りと一部の非常識な小僧の活躍もあり、キメラとの戦いはやや優勢な状況で膠着していた。

 とはいえキメラの数は多い。

 こちらが優勢であっても、どうしても数で押されてしまう。


「神よ、傷つきし者に癒しの祝福を」


 フォカ達僧侶が負傷した者達を下がらせ治癒魔法による治療を行う。

 負傷した戦士達は治癒のお陰で戦線に戻れるが、次第に負傷者の数が増えてきたのう。

 更に負傷した際に血を失う影響で、何度も治療を受けた戦士達の動きが悪くなっておるわ。


「これはマズいのう」


 このままでは物量に押し切られてしまうぞ。


「このままだと押し切られる! 元来た道に下がって敵の攻撃を減らすぞ!」


 同じ事を考えたのかリソウが指示を出す。

 儂等が通って来た通路は決して広くはない。

 小僧の魔法で穴を広げはしたが、地底湖のある大空洞で周囲を囲まれるよりはよほどマシというものじゃ。


 戦士達は即座に後方へと下がっていき、通って来た道へと戻る。

 キメラ達も儂らを逃すまいと陸と水路の二つの道から追撃してくる。

 うむ、囲まれるのも厄介じゃが、この狭い道で水路から攻撃されるのも厄介じゃぞ?


「クレイクラフト!」


 即座に魔法使いが周囲の水路を土魔法で埋める。

 上流からくる地下水脈の勢いで長くは持たんじゃろうが、それでも一時的な足場が出来上がった事で戦士達が戦いやすくなった。

 今の魔法使い達もなかなかやるのう。


「ところでレクスさんが湖の上で戦い続けているけれど大丈夫なの!?」


 フォカの言葉に気づいて地底湖を見れば、確かに小僧はいまだ湖上で戦っておるではないか。

 キメラの数が多くてこちらに合流し損ねたか。


「レクスさんの事は気にしないで! あの人なら一人の方がよっぽど強いから!」


 戦士の娘があんまりな事を言うが、割とその通りな気がするので儂は黙っておく事にした。

 みればリソウ達も何か言いたそうじゃったが、同じ事を思ったのか言葉を飲み込んでおった。

 薄情なのか信頼しているのか難しいところじゃのう。


「どのみちこれでは援護に向かう事も出来ん。まずは目の前の敵に専念だ!」


「「「「おうっ!」」」」


 リソウの現実的な発言に戦士達が気合を入れて返事をする。

 先ほどは地底湖の中にビッシリと潜んでいたキメラ達に気押されておったが、戦いが始まって肝が据わったのか、態勢を整えてからの彼等の闘いはなかなかの物じゃった。


「ふんっ!」


 戦士がキメラを攻撃し、振り下ろした隙を狙ってきたキメラの攻撃を盾を持った戦士が庇う。


「すまん、助かった!」


「おう、感謝しろよ!」


 そして自らを囮としてキメラの注意を引く戦士に、注意が散漫になったキメラを後ろから攻撃する魔法使い。


「こっちだキメラやろう!」


「ロックバイト!!」


 更に戦場が狭くなったことで、前に出れない者は後方で待機して呼吸を整えたり体力を回復させる。

 魔力が尽きた魔法使いは待機していた者と交代してマナポーションを飲む事で、魔法による援護を途切れさせないようにしていた。

 全員で戦えなくなったことで、休息と回復の余裕が出来た訳じゃな。

 儂は前線で戦う戦士ではないが、この連携の巧みさはなかなか見事じゃわい。


 まだまだキメラの数は多いが、このままなら十分耐える事が出来るかのう?


「アクアバーンッ!!」


 向こうで戦っておる小僧が実質挟み撃ちみたいな感じでキメラの数を減らしておるし、まぁ何とかなりそうじゃな。


「ただ、問題はこの後じゃな……」


 その時、儂の心配を裏付ける様に地底湖の中央に大きな水柱が上がる。

 そして盛り上がった水柱は地底湖の天井近くまで立ち上った。


「な、なんだ!?」


 儂等だけでなくキメラ達もまた地底湖の方角を見つめ、戦いが一瞬止まる。


「やはり生きておったか」


 盛り上がった水柱の中から現れたそれに儂は語りかける。


「な、何だあのデカイのは……」


 戦士達が驚きに声を震わせる。

「キメラの……親?」


「その通りじゃ」


 戦士の言葉に儂は肯定の声をかける。


 儂の声に反応したのか、地底湖という玉座から現れたソレが儂に視線を向ける。

 生みの親である儂を認識しておるようじゃな。


 それにしても大きくなったのう。

 その姿は、まさに王と呼ぶに相応しい威容じゃ。


「あれこそが儂の最高傑作、白き災厄の欠片を宿す為に最高の素材とあらゆる知識と経験を詰め込んで作り上げた至高のキメラ」


「その名も……」


「バスタァァァァスラァァァァァッシュッッッ!!」


 真っ二つに叩き切られた。


「せめて名前を呼ばせてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼」

ガンエイ( ノД`)「また戦う前に切られた……」


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すごい、容赦なさすぎる笑
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